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沈黙の都市  作者: トシユキ
第一章:「混沌」
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第3話「揺れる街」

ドン……!


 突如として、腹の底に響くような轟音が三宮の街を貫いた。


 「……え?」


 買い物袋を持ったまま、佐伯奈々(さえき なな) は足を止めた。

 同時に、大地が不気味に揺れる。


 ビルの窓ガラスがガタガタと音を立て、通行人たちが足を踏ん張る。

 観光客らしき女性が悲鳴を上げ、近くの商業ビルから人々が一斉に飛び出してきた。


 「地震……?」


 立っていることができず、奈々はその場に崩れるように座り込んだ。


 窓ガラスなどは割れていない。

 周囲を見渡し、安全を確認した奈々は、慌ててスマホを取り出した。

 画面には「圏外」の表示。

 テレビの速報も見当たらない。


 その時、彼女の視界に黒い煙が立ち昇る光景が飛び込んできた。


 「なに、あれ……」


 震える手で、もう一度スマホを操作する。

 しかし、ネットにも繋がらない。


 「おかしい……ニュースすら見れないなんて……」


 周囲の人々も次々とスマホを取り出しているが、誰もが不安そうに画面を見つめ、顔を上げるたびに互いに首を振る。


 すると、LINEの通知が一瞬だけ届いた。

 開くと、

 『すぐに避難しろ。』

 たったそれだけの短いメッセージ。

 送信者の名前は知らない人だった。

 誤送信か、あるいは一斉送信されたものなのか……。


 しかし、返信を打とうとしても、既読すらつかない。


 「どういうこと……?」


 恐怖がじわりと広がる。


 「すみません、大丈夫ですか?」


 奈々は近くに、自身と同じように座り込んでいる高齢の女性たちに声をかけた。

 買い物帰りなのか、彼女たちは不安そうに顔を見合わせている。


 「揺れがすごかったけど、大丈夫ですか?」

 「ええ、大丈夫……でも、一体何が……」


 誰もが不安を口にするが、何が起こっているのか分からない。

 誰も答えを持っていない。


 「避難したほうがいいかもしれません」


 奈々はそう言いかけたが、果たしてどこへ避難すればいいのか分からなかった。


 「私たち淡路から買い物に来ていて……どこに避難したらいいかしら」

 「私も姫路から来ていて……」


 再び視線を向けると、三宮の街の奥で黒煙が濛々と立ち昇っている。

 遠くの方から、微かにサイレンの音が聞こえる。

 だが、いつもの災害時とは何かが違う気がした。


 「……何も繋がらない」


 この場から動くべきか、それすら分からない。

 不安だけが、静かに広がっていく。

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