第2話「崩壊の現場」
「こっちは意識ありだ! 足を挟まれてるが、呼吸は正常!」
倒壊したビルの瓦礫の中で、消防士・三浦健太は必死に負傷者を救助していた。壁が崩れ、鉄骨が無残に折れ曲がった廃墟のような空間。床には血が広がり、呻き声があちこちから聞こえる。
「応援はどうなってる!? 後続の救助車両が全然来ないぞ!」
三浦に言われ、茂木隊員は無線機を掴み、通信ボタンを押す。
「中央消防、こちら第一救助隊、応答願います! 本部、聞こえるか?」
……返答はない。
「……おい、無線が……?」
隣にいた救急隊員も、眉をひそめながら別の周波数を試す。
「指令室! 応答願います! ……駄目だ、どこにも繋がらない……」
無線の異常に気を取られる間にも、目の前の救助活動は続く。三浦は意識のある負傷者に声をかける。
「大丈夫だ、すぐに助ける!」
「う……足が……」
「おい、患者をどこに運べばいいんだ」
「怒鳴るなよ、こっちも連絡が不通なんだよ!」
救助の声と怒声が混じり合う。その中でも、瓦礫に埋もれた男性が痛みに顔を歪める。三浦は手元の救助器具で鉄骨を持ち上げようとするが、簡単には動かない。
「くそっ、応援が必要だ……!」
そのとき、瓦礫の奥から一人の警察官が駆け寄ってきた。
「隊長! 中央管区から緊急報告があるらしい!」
三浦は振り向く。
「繋がったのか!?」
警察官は苦い表情を浮かべながら首を振る。
「……いいえ。本庁も繋がらず、先ほどすれ違った救急隊から伝言を受けたんですが……」
「伝言? 無線で話せばいいだろ!」
「それが、無線と電話回線が全滅しているそうです……」
三浦の背筋が冷たくなった。通信障害は局所的なものではなく、広範囲に及んでいる……?
崩壊したビルの中、ただ煙と負傷者の呻き声だけが響いていた。
「救助は時間との勝負なのに……これでは……!」
ただ残酷にも時間だけが経過していく。何もわからないままに──。