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第30話『魔会』設立のために華麗にプレゼンする魔王さま

 前世で側近として仕えていたロゼッタと出会い、脳みそ全力フル回転でルミナの疑いの眼差しを乗り切った激動の日の翌日。


 俺は朝一で生徒会室に向かうと、

「1年1組の黒野真央です。新しい同好会の設立申請書を提出に来ました」


 室内にいた生徒会役員の女子先輩に、同好会『魔王と異世界ファンタジーについて考える会』――通称『魔会』の設立申請書を提出した。


「昨日、学内ネットで事前申請があった同好会だね」

 笑顔でほほ笑みながらうなずく女子先輩。


 昨日のうちに学内ネットで新しい同好会の申請要望を出していたのもあって、ツーカーで理解してくれたようだ。


 学校に提出する同好会設立申請書もネットでダウンロードできるし、何をするにしても便利な時代になったものだ。


 そして、今目の前にいるこの女子先輩はたしか、生徒会副会長だったはず。

(生徒会役員の顔と名前は当然、頭に入れている)


 濡れ羽色のサラサラショートヘアーな黒髪がすごく綺麗な美人さんで、目は切れ長で、スラっとしたモデル体型で、人好きのするカッコいい笑顔。


 まるでタカラヅカから抜け出してきたような先輩は、さぞやモテることだろう(それも男女問わず。というかむしろ女子から)。


 副会長が美人なのはさておき。


 うちの学校は生徒の自治を方針に掲げているのもあって、生徒会もそれなりの権力を持っている。

 同好会の設立の許可も、基本的には生徒会が出し、学校が追認する形だ。


 つまりこの副会長さんは、大きな権力を持った人だ。

 今後のためにも仲良くしておいて損はない。


 もちろん設立申請書には同好会の目的やら意義、活動方針などを詳細に記載しているので、ぶっちゃけ提出して終わりでもいいんだが、受け取ったのが権力者となると話は別だ。


 俺たちの成果物がゴミでも、お目こぼしを得られるかもしれないからな。


 ここは少し、副会長さんに取り入っておくとするか。


(ここまで0.5秒)


「はい。だいぶ高校生活にも慣れてきたので、いい頃合いかなと思いまして」


 ふふん、いかにもそれっぽい理由だろ?


「なるほどね。アタシも入学して1か月くらいで、緊張感がすっかり薄れちゃったのを覚えてるなぁ」


「ですよね~! それで、具体的には申請書と添付の資料を見てもらうとして、おおまかには――」


 かくかくしかじかこしたんたん。

 魔会と既存の文学部との違いなどを、俺は明るい笑顔とともにハキハキと軽妙にプレゼンした。


「いいねいいね、すごく楽しそうじゃん。『魔王と異世界ファンタジーについて考える会』――通称『魔会』だっけ? 応援してるよ」

 

「ありがとうございます、

それでどうでしょうか? できればもう今日から活動できれば、と思っているんですけど」


「やる気あるねぇ。ちょうど部活棟の4階、今年度から休部中の天文部の部室が空いているから、そこを使っていいよ。鍵は職員室で管理しているから、ちゃんと手続きを踏んで借りるように」


「ありがとうございます。助かります」


「帰る際には必ず鍵を閉めて、職員室に鍵を返却すようにね。忘れると割と大事になっちゃうから」


「興味本位なんですが、どうなるのか聞いてみてもいいですか? 差支えがあるようでしたら全然、構いませんので」


「そうだね。知っておいた方が返却ミスも減るだろうから、説明しておこうか」


「ありがとうございます」


「具体的には鍵を見つけるために、先生方が学校中を探し回る。防犯の関係上、見つかるまでは帰れない。ついでに責任者――文化部の部室は2年の学年主任の溝口先生の管轄だから、溝口先生が始末書を書く羽目になるね。新婚早々大変だ」


「それはたしかに大事ですね。気を付けます」

「うん。新婚で早く帰りたくてしょうがない先生のためにも、ぜひとも気を付けてあげて欲しい」


 副会長はアハハと楽しそうに笑った。

 その笑顔になんだか見覚えがあるような気が、しなくもなかった。


 とまぁ、こんな感じで好印象を持ってもらえれば、早く仕事を済ませてもらえる。

 世の道理である。


「最後に、秋の文化祭で成果物を提出することと、最低3人の活動者がいないと同好会は存続できないから、そこだけ気を付けるように」


「分かりました」

 俺はにこやかにうなずくと、生徒会室を後にした。


 というわけで無事に同好会を作った俺は、放課後。


「魔王さま~」


 当たり前のように俺に会いに来たロゼッタを連れて、俺は部活棟の4階、旧・天文部の部室へと向かった。

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