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第12話 放課後の魔王vs勇者

 放課後。

 ルミナに絡まれる前に教室から逃げ出そうと、いつもよりも手早く帰り支度をし、得意の放課後ダッシュによるボッチ帰りを敢行しようとした俺は、


「マオくん。よかったら、今日は一緒に帰りませんか?」


 しかし席を立ったところで、あえなくルミナに捕まってしまった。


 俺を誘うルミナの言葉に、


「やだぁ~! ルミナ大胆~~!」

「やーん、放課後デートのお誘いだよ~?」

「ルミナ、やっぱそうなんじゃん~!」

「エモーい!」


 クラス中がまたもや、あーだこーだとお祭り騒ぎになるが、俺はそれら全部をスルーして、


「一緒に? うん、帰る帰る! 予定とか全然ないから!」

 食いつくようにして、ルミナの提案にうなずいた。


 俺とルミナとは隣の席同士。

 何をしても目に入ってしまう距離なので、捕まってしまうのは仕方ない。


 隣の席のクラスメイトに気付かれずにこっそり出ていくことは、姿を隠す闇魔法でも使わなければ不可能だ。

(もちろん、そんなものを使った日には、即行で魔王認定されてその時点でジ・エンドなわけだが)


 そしてここで俺が安易にルミナの誘いを断ったら、俺が魔王である疑惑がより一層深まるんだろ?

 学校で一番人気と噂されるルミナの誘いを断るなんて、普通じゃありえないものな。


 これほどの恋愛ビッグチャンス、ちょっとくらいの予定なら無理してでもずらす。

 それが普通の男子高校生の反応だろう。


 そして俺は迷うことなく正しい選択を行った。

 つまりは全力でルミナの放課後デートのお誘いに食いついたのである。

(もちろん振りをしただけだ)


 ふふん。

 残念だが、午後の授業の間に放課後の対勇者シミュレーションは済ませてある。

 ルミナが、俺から失言を引き出すためのどんな計略を練っていようとも、俺がボロを出すことはない。


 かつて魔王と呼ばれ恐れられたこの俺を、あまり舐めてくれるなよ?


(ここまで0.5秒)


「では行きましょう」

「くぁwせdrftgyふじこlp;@!?」


 ルミナが俺の手をぎゅっと握ってきて、俺は思わず情けない声をあげてしまった。


 と、いうのも。


 今の俺は魔王ブラックフィールドの記憶や魔力を持っているものの、精神や感情の大部分は、童貞で女の子とロマンティックしたくてしたくてしょうがない男子高校生の黒野真央が占めていた。


 だからルミナみたいな超絶美少女に手を握られたら、過剰反応しちゃうんだよ!

 そりゃするだろ?

 女の子に興味津々な男子高校生の、純情ロマンティックハートを舐めんなよ!?


「急に変な声をあげてどうしたんですか? 変なマオくん。ふふっ♪」


 そんな俺を見て、俺の手を握ったまま反対の手を口もとにやりながら、クスクスと楽しそうに笑うルミナ。


「急に手を繋いできたからさ。そりゃ、びっくりするだろ?」


 俺は内心の動揺を決して悟られないように、平静を装いながら言葉を返す。


「手を繋ぐくらい普通ですよね? 私、友達とは結構するんですけど」


「女の子同士なら手くらい繋ぐかもしれないが、男女じゃ友達でも普通は繋がないと思うけどな」


 こいつ、もっともらしいことを言っているが、女子に免疫がない童貞男子(つまり俺だ)と手を繋ぐことで動揺させて、失言を引き出そうとしているな?


 自分の可愛さを徹底して利用し、俺に致命的なポロリをさせようとしているのだ。


 それが取り戻した魔王の明晰な頭脳では分かっているのに。

 分かっているのに。

 分かっているのに!


 なのに男子高校生な俺の純情ハートは、どうしてもルミナの可愛さに反応してしまうんだよぉっ!



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