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第11話 教室はお祭り騒ぎ

 ルミナと一緒に教室に戻ると、途端に中にいたクラスメイトたちが盛大にざわついた。


「え、ルミナ? どしたん? なんで2人一緒?」

「えー、なになに!? なんかすっごく仲良さげなんですけどぉ!?」

「ご飯食べた後、用があるってどっか行っちゃったけど、まさか逢い引きしてたの!?」

「逢い引きっていつの言葉よ? あんた江戸時代に生きてるんかーい!」

「やーん、あたしの可愛いルミナが、クラスの男子に寝取られちゃったよ~!」

「エモーい!」


 クラスの女の子たちが一斉にルミナを取り囲むと、やいのやいのルミナを質問攻めにする。


 まさにお祭り騒ぎ。


 もちろん、頭脳明晰な俺はある程度こうなるであろうことは予想していたが、ここまで盛り上がるのはさすがに想定外だった。


 さすがルミナ。

 すぐ隣の席なのに、友だちがいなくて取り囲まれることもなく、すんなりと自分の席に座れた俺とは大違いだ。


「別になんでもないですから」

 とか言いながらルミナがチラリと俺を見た。


 釣られてルミナを取り巻く女子たちの視線も、俺に全集中する。


「とか言って、助けを求める熱い視線を送ってるみたいですけどー?」

「ちょお思わせ振りだし~!」

「エモーい!」

「おらおら~、どういう関係か吐いちまえって~」

「応援するから、素直になりなよ~♪」


 直に問い詰められているルミナだけでなく、俺までもが盛り上がる女子たちの好奇の視線に晒されるが、俺は鋼の心で知らんぷりをした。


 周りの反応を窺ってばかりの根暗ボッチくんだった以前の俺とは違い、魔王の記憶を取り戻した俺にとって、クラスメイトの好奇の視線をシャットアウトすることくらい、赤子の手をひねるよりも容易い。


 しかしルミナもルミナだな。


 さも何かありました、みたいな思わせ振りな態度をイチイチとるのは、やめた方がいいぞ。

 でないと変な噂が立っちゃうだろ。

 ルミナはいいのか、俺と噂になっても?


 いや、これもまた俺にプレッシャーを与える計略なのかもしれなかった。

 周りを巻き込むことで、監視の目が増えるとでも思っているわけだ。


「だからマオくんくんとはそんなんじゃないですからっ! ほんとですからねっ!」


 顔の前で両手をワチャワチャと大袈裟なまでに左右に振り、やたらと早口で答えるルミナ。

 言い訳するルミナは、めちゃくちゃ焦っているように見えてしまう。


 俺でさえそう思うんだから、かしましガールズたちはなおさらいっそうそう感じているに違いない。


 当然、盛り上がりの火に油を注ぐだけになってしまう。


 ま、ルミナも元勇者。

 他人に囲まれてピーチクパーチク好き放題言われるのには慣れているはず。


 しかし、演技にしてはやけにリアルだな。

 俺の目には、本当に焦っているように見えてしまう。


 もちろんルミナは魔王を倒すために転生し、この世界まで俺を追ってきた筋金入りのストーカーだ。

 俺の気を緩ませるために本気で道化を演じるくらい、しても全然おかしくはないのだが……。


 とは言え、俺は思考に走るノイズ――妙な違和感を消し去ることができなかった。

 出したはずの結論に、なんともしっくり来ないものを感じてしまうのだ。


 もしかしたら俺は、何か重要なことを見落としているのかもしれない。


 なんだ?

 俺はいったい何を見落としている?


 下手をすると、その見落としが命取りになるかもしれない──。


 しかしそれが何かは、この俺の明晰な頭脳を持ってしても分かりえなかった。

(ここまで0.5秒)


 そして一人、自席に座ってまじめに状況を考察をする俺とは対照的に、


「やーん、名前呼びだぁ♪」

「やだもう、これガチでラブな感じじゃ~ん♪」

「エモーい!」

「ル~ミ~ナ~? ど~ゆ~こと~?」

「これはじっくり話を聞かせてもらわないとだよね~?」


「だから違うんですよぉ!(>_<)」


 こうしてルミナたち女子グループは、5時間目の先生がやって来るまでルミナのコイバナで盛り上がりに盛り上がったのだった。


 俺はルミナの隣の席なので、彼女たちのガールズトークは全部するっと丸聞こえだったのだが、俺は知らぬ存ぜずを突き通した。


 悪いがすべてお見通した。

 周りを巻き込んでプレッシャーをかける作戦は、俺には通じん!

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