12 妨害
「よし、これで第一の関門はクリアっと」
そう呟きながら小野が駄菓子屋を出ると、駄菓子屋の横の路地から、何やら子どもの騒がしい声が聞こえた。
小野がその声の方へ行ってみると、小さな公園があり、子ども達が喧嘩をしていた。先程のガキ大将っぽい男の子と貝原だ。喧嘩と言うよりは、貝原が一方的にやられている。
小野は公園に走って行って大きな声で言った。
「こら、喧嘩はダメじゃないか!」
中高生くらいの姿の小野を見て、ガキ大将っぽい男の子が言った。
「こいつ、万引きしたんや! チョコを盗んだんやで」
「違う!」
貝原が地面にうずくまって、泣きながら叫んだ。
小野は、公園でうずくまる貝原を助け起こし、ガキ大将っぽい男の子に言った。
「さっき、駄菓子屋で君がしたことを見てたよ。わざと貝原君のポケットにお菓子を入れたでしょ。そんな悪いことしてると、閻魔様に地獄に落とされるよ!」
「そんなん、おらへんわ!」
ガキ大将っぽい男の子は、捨て台詞を吐いて、周りの子どもと一緒に走って逃げて行った。
彼が将来閻魔様の法廷に引き出されないことを祈るのみだ。
小野は、貝原に声を掛けた。
「貝原君、大丈夫?」
「うん、ありがとう……」
貝原は、Tシャツの裾をめくりあげて涙を拭くと、お礼を言った。
「あれ? さっきのお菓子は?」
「取られた……お前、お菓子を盗んだやろって言われて。僕、盗んでないのに」
「知ってるよ。さっきお店で見てたし。君はちゃんと買ってたよ。ほら、これをあげるから元気を出して」
小野は、さっき駄菓子屋で買った10円のチョコを貝原にあげた。
「ありがとう、お兄ちゃん。でも、何で僕の名前を知ってるん?」
貝原に聞かれて小野は慌てた。さっき、思わず貝原の名前を呼んでしまったのだ。
「あ、あのね、お兄ちゃんは貝原君の遠い親戚なんだよ。たまたま今日ここに来たんだ」
「そうなんや。それで関東弁なんか」
小野の苦し紛れの説明に、幸い貝原は納得してくれた。
「1人で帰れる?」
「うん。ありがとう、親戚のお兄ちゃん!」
「どういたしまして」
貝原は歩いて帰って行った。
1人公園に残った小野は、リュックから資料を取り出して見た。
資料には、駄菓子屋前後の貝原の行動が書かれているが、公園でガキ大将と喧嘩になって万引き犯呼ばわりされることは書かれていなかった。これが復原力とやらの妨害だろうか。
小野は心配になった。もし、夏休み明けに、あのガキ大将が「貝原が万引きをした」などと学校で言うと、ややこしくなるのではないか。貝原の学校での立ち位置によっては、貝原が万引き犯と間違われてしまうような気がした。
とりあえず、やれることはやろうと考え、小野は先程の駄菓子屋に向かった。
駄菓子屋に入ると、小野は、オバチャンに、さっきのガキ大将っぽい男の子が貝原を万引き犯に仕立て上げようとしたことを伝え、貝原君が万引き犯に間違われないよう配慮して欲しい旨伝えた。
オバチャンは、ガキ大将っぽい男の子のことを知っていたようで、その話を聞いて激怒していた。
オバチャン曰く、そんな卑怯なことするなんて許されへん、今度見かけたらしばいたる、とのことだった。やり過ぎないか、ちょっと心配だ。
その後、小野は、資料に記載されていた貝原の小学校へ赴き、宿直で在校していた先生に状況を伝えることにした。
どこの学生かも分からない小野は最初不審がられたが、夏休みにたまたまこの街に来たなどと説明して何とか話を聞いてもらえた。
対応してくれた先生は、貝原もガキ大将っぽい男の子も知っていたようで、状況は分かった、ちゃんと対応するので安心して欲しいと言ってくれた。
安心した小野は、小学校の正門脇で人目がないことを確認すると、深呼吸をして、タイムリモコンのチャプターボタンを押した。




