りんの告白2
ただただ、スマホを眺める時間だけで1日が終わっていく。
外にも出ないで、ずっと部屋の中、机の上にはスマホ。
スマホが揺れるたびに確認しては、期待と違う通知を目にして落ち込む。
今日も返事はなかった。
大学合格のメッセージを送って、これで三日目。
はぁ、ってため息ももう出ない。
それまでは知り合ってから毎日メッセージでやり取りしてた。
一日に何十回、いや多い日には百を越えたこともあったかな。
電話でもたくさん話した。
このスマホだけが二人のつながりだった。
なのにいきなり返信がなくなった。
電話をかけても留守電につながるだけ。
連絡がなくなったとき、わたしはすぐに飛んでいきたかった。
わたしはもう自由なんだよ。
最初、あなたの名前を見かけて、自分と似てると思った。
それで嬉しくて声をかけたら、すぐに拒否された。
単純に腹がたった。
受験生だったし、ゲームもそろそろ辞めなくちゃと思ってたから、
ルール無視して、電話番号を教えた。
もし電話してきたら、文句を言ってやろうと思った。
数日待って、ワンコールで切られたのにイラついて、そっこーで電話をかけた。
わたしは嫌味ばかり言ってやった。
でも、彼の口調は常にフラット。
ただ、その答えは的確だった。
まるでロボットの答えのように客観的。
「ごめん」
と謝ってばかりでわたしと話すのが嫌なのかと思ったけど、彼の言葉は続いた。
たぶん、嫌われてるわけじゃない。不思議な感覚だった。
彼の口から「分身」という言葉が出たときは驚いた。
2つのアルファベットの綴りを眺めながら、ロボットらしい思考で考えたんだろうな。
ただ、しんどい受験生活を送っているとき、あの言葉は心に沁みた。
わたしは、彼に勉強を教えてほしい、と頼んだ。
ほんとはもっと話したかった。
でも、彼は言われたとおりまじめに勉強を教えてくれた。
短い言葉で淡々と話していく、でも、その声色には温かみを感じた。
うまく説明できないけど、ちゃんと相手のことを考えて返事をしながら、
その声のトーンは大げさでなく、嘘っぽくなく、いい感じに耳に響いた。
人って10代後半を過ぎたら声はほぼ変わらないと聞いたことがある。
身長や体重、顔つきはいつだって簡単に変わるのに、声だけはそのまま。
そう考えたら、声って、その人の一番の個性なんだと思う。
「ロボット口調は、もうそろそろやめません?」
と言ったら、
「ロボットにはなれないって。なれたらいいんだけど」
「はぁ、普通に皮肉なんですけど」
「ごめん、気づかなかった」
「知識だけですか、それじゃ社会に出れませんって」
「じゃ、りんちゃんと話しながら治していくよ」
何気ない会話がわたしを笑顔にしてくれた。
心が喜びで満たされてく。
二人はほんとに他人?
そう思い始めたとき、
「神様がこんなに離れたあなたに会わせてくれたのかな?」
って聞いたら、
「そうだね、やっぱり二人は分身なのかもしれないね」
と、否定せずにわたしの意見を受け入れてくれた。
わたしは決めた、この人に会いたい。
あなたはわたしの分身。
二人が出会って初めてひとつになれるんだって。