るいの告白3
目を開けても閉じても景色は変わらない。
少し経てば、目が慣れてくるかと期待したが、
視界は真っ黒に塗りつぶされたまま。
これじゃ、時間がわからない。
そもそも、周りに変化があって初めて時間は成り立つもの、
だとしたら、ここには時間自体が存在しない。
と考えると恐ろしくなって突然、闇のなかを走り始めた。
どこかになにかないかと。
どこかにだれかいないかと。
ひたすら走り続けた。
だが、どこまで行っても変わらず闇が続いた。
ゲームで逃げ込んだときと同じ漆黒の闇があった。
この無限の空間に、ひとりきり。
この状況を死と呼ぶのだろうか。
自分の記憶はまだ頭に残っている。
結局、ぼくは彼女に最後まで真実を話せなかった。
そのことを、謝ることができなかった。
ひたすら逃避した人生、その先にあったのが、これ。
きっと、自業自得。
ぼくは走るのをやめて、その場に仰向けになった。
あのゲームの生贄のように、横になったまま動かなくなった。
もし暗闇の向こうに学校があれば、
そこから無数の人影が現れて、ここに向かってきていれば、
ゲームなら逃げる場面だが、今はその人影に出逢いたかった。
無表情な姿でもいい、誰かに見つけて欲しかった。
目を閉じると、写真で見た彼女が浮かんできた。
きみの名前はいまも思い出せなかった。
ぼくと似ている名前、その名前を見てぼくは分身だと口にした。
何でそんな言葉を口にしたのかと思ったけど、今ならわかる。
ほんとはひとりでいるのが、辛かったんだ。
彼女と離れたくなかったから、彼女に真実を話せなかった。
ひとりには慣れたはずだったのに、その気持ちを彼女が揺すぶった。
そして、またひとりになった。
「違う、ひとりじゃないって」
目を開けると、闇は消えていた。
仰向けになって寝ているぼくの前に人影が見えた。
その手には彼女の写真が握られていた。
人影は写真を両手で、ビリビリと破いていった。
「彼女で最後、きみの敵はぜんぶ排除した。ここにいたら、もう何の心配もないさ」
そう話した人影は、ぼくだった。