瀬野碧(せのあお)の告白1
連絡があった日、おれは大学のサークル仲間たちと居酒屋で盛り上がってた。
「今日は朝まで飲むぞー、みんな覚悟できてるよな?」
「つか、もうでき上がってるじゃん、早くない?」
隣の女が突っ込むと、周りのみんなが笑う。
「やったら、ダウンしたときは介抱よろしく」
「あ、それ、こいつのいつものパターンやし、無視しなよ」
友人がすぐに、ツッコミをいれてくる。
「なんで、バラすかなぁ。今日、おれの誕生日。おれ、主役な」
自分で言いながら、周りもわかってる。
この中じゃいつもおれが主役ってことを。
女たちにはモテるし、男友達もノリが良く、いいやつばっか。
いつでも、どこでも笑いが取り囲んでくれる。
そのとき、スマホが鳴った。
母親からやった。
電話に出ようとすると、
「ねえ、だれだれ?」
「母親やて」
「あやしー」
誕生日に親からの連絡はいつもメッセージくらいだったが、
悪い気はせず、その場で電話に出た。
「もしもし、わざわざ誕生日やからってええのに」
「るいが……」
母親の声は震えていた。
「るい? るいがどしたん?」
大きな声で周りが一瞬で静まった。
「るいが、起きないの」
「起きない? どういうこと? わからんって」
「るいが、起きないの」
母親は同じことを繰り返す。
「父さんは?」
「病院」
その言葉を聞いて、事態は深刻やとすぐ理解した。
「わかった」
誕生日だってのに、タイミング悪いわ。
周りが心配そうな目で見ているのが伝わってきたし、あかん、と思って、
「あー、悪いけど続きはまたお願いするわ、近いうちに第二弾よろしくな!」
と深刻さを伝えないよう謝って、そのまま実家に向かった。
夜の新幹線は空いとった。
今から約二時間か、って考えたらしんどって正直、思ったわ。
移動中に何度か、メッセージを送ったが、母親から返事なし。
仕方なく、父親に送ってみたら、
ーーもうすぐ家に戻る
ーーるいは?
ーー横にいる
るいも一緒なんやとわかって、ひとまず安心した。
急いで帰る必要なかったやん、ま、久しく実家にも帰ってないしな。
あと、るいとは気まずいままやったし、という思いもあって、
そのまま実家に向かった。