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あおの告白9

一年が過ぎても弟の病状は変わらんかった。

休学期間が終わって、おれは大学に戻って就職活動を始めた。

サークルのみんなは卒業して社会人になってたわ。

忙しそうにしてるやつらを見ながら、かわいそうや、ああはなりたくないな、

そんなことを考えながら行うおれの就活の結果は悲惨やった。

どの面接でも好き勝手に話して、質問にも自由に答えてった。

おれは会社も面接官たちも、自分の付属品程度に考えてた。

でも、他の就活生たちはそうやなかった、相手に合わせて自分を抑えてる。

結局、そういったやつらが生き残って、採用されていった。


それまであった自信ってやつがわからんなった。

おれらしさって、何や?

何でこんなに自信があった? 

外見がよくてモテたからか? 

周りに友人がたくさんおったからか? 

なんや、それだけか。

ふと、彼女の言葉を思い出した。

これが、おれにとってのメイク、やったんや。


おれは就職活動を途中で切り上げて、地元に戻った。

いや正確には逃げ帰ってきた、それが正しいな。

「るいのことが心配で就活に集中できんわ」

と親には話したが、なんか他人と関わるのに疲れたんや。

単位もぜんぶ取ってたし、あとは論文さえ提出すればええ。

夏の暑苦しいスーツ姿から、警備員姿に変わった。

まだ蝉の声が聴こえる晩夏は、警備員の制服でも十分に暑かったんやけど、

今のおれに、警備員のアルバイトはしっくりきた。

時間の融通も効いたし、夜勤で入ることも多かった。

やから、るいの世話を手伝うこともできた。

何より、ここでは人と関わらんで済んだ。

大学を楽しんでた頃のおれでは信じれん発想や。

周りに注目されたり、ちやほやされたいとかぜんぜん思わん。

夜中、工事中の道路の端に立って、たまに通り過ぎる車を誘導しながら、

これじゃロボットやんと思って、笑ってしまった。


夜勤明けの早朝に駅前を歩いてたら、

楽しそうに話しながら大学に向かう学生たちを見つけた。

おれは大学時代、何を学んだんやろ、授業にも出んで、サークルに入り浸って、

カラオケに行って、飲みに行って、ときには男友達とナンパにいって、

もちろん、そのときは楽しかったんやけど、それで何が残ったんや?

目の前を歩く彼らに、

「君らも同じなん?」

と聞いてみたかったが、きっとそのときには気づけないんや、

なんてうだうだと考えてたら、

キキキッー、目の前で自転車が止まった。


「あおさん、お久しぶりですっ」

誰にも会わんと思って制服姿のまま帰ってたのを後悔した。

「おっと、かっこ悪いとこ見られたわ」

「え、どうしてですか?」

「いや、こんな姿、見られたくないやん」

「なんか、らしくないですよー。こっちに戻ったんですね」

「ああ」

「るいさんは、どうですか?」

「相変わらずやな、でも、元気だから大丈夫やって」

「あおさんがいるなら安心ですね」

と笑顔で言った後、

「その制服、よく似合ってますよ!」

言い残して学校に向かっていった。

よく似合ってますよ、か。

彼女に言われると、嘘でも嬉しく思ってまうな。

男ってほんま単純や。


その後も街中で、彼女の姿をときどき見かけた。

ときには、男性と二人きりのこともあって、

少しショックを受けたんやけど、それが現実ってもん。

むしろ、そうやって弟を忘れてくれることが、

あいつが眠りから戻ってくることに繋がるんや。

それに、あれだけ目立つ容姿を持ってるんやから、

周りが彼女をほうっておかんのはごく自然やて。

大学なんて勉強より、そういった出会い、つながりを求める場なんやし。

しかも、おれと違って中身までしっかりしてるんやから、そりゃ負けるって。


改めて思ったわ、

そんな彼女を振り向かせた、おまえってやっぱ凄いんよな。

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