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88 君が代

「早く食おうぜおやびん!」


「待て日向。こんなにお高いしゃぶしゃぶ様だぞ? 食べる前に感謝を捧げる必要がある。それはしゃぶしゃぶマナーだ」


「マジか!? そんなマナーあるんだ!!」


「ああ、上流階級では当たり前に行われているな」


「じゃあさっさとその感謝を捧げようぜ」


 しゃぶしゃぶを前に焦らされる日向。食い気は限界突破して生でいきそうなレベルだ。


「では、こほん。国歌斉唱!! ご来場の皆様はご起立をお願い致します!」


「え? それマナーなのか?」

「……なぜ国家?」

「とりあえず立ちますけど」


 まさかの国歌斉唱。三人ともわけも分からず立ち上がる。


「きぃ〜みぃ〜がぁ~よぉ~お〜はぁ〜♪」


「……」

「……」

「……」


 ワテクシが歌い出したのを、ポカンと口を開けて眺めてる三人。


「続けて歌えやバカちんどもっ!!」


「アタシ達も歌うのかよっ!!」


「当たり前田のキャプチュード!! 国家だぞ! 今歌わずして何時歌うんだこの非国民! 売国奴!!」


「ムチャクチャだなまったく」

「……しゃぶしゃぶとどんな関係が……」

「売国奴は嫌ですぅ」


 さすがのムチャ振りに三人共に面食らっているが、ただでこんな高価な肉食わしてやるもんか! ワテクシのオモチャとなるがいいフハハハハッ!!


「そしたらいくぞ、きぃ〜みぃ〜がぁ~よぉ~お〜はぁ〜♪」


「「「きぃ〜みぃ〜がぁ~よぉ~お〜はぁ〜♪」」」


「お、女将さん、あの座敷のお客様達がいきなり君が代を歌い始めたのですが……」


「いいのよ水城さん。世の中には頭が残念な人も一定数いるの。見なかった事にしてあげなさい」


 こうして、お店の人達にはフンコロガシを見るような視線で見られ続けるのだった。


「おーし、それじゃ食うぞ〜! いっただっきま〜す!」


「うわぁ! 美味〜い!」

「……トロける」

「これが最高級なんですね!」


 フッフッフッ。小娘ども、高級肉の前にイチコロじゃないのさ。ガツガツ食いおってからに。


「柚子ポン酢サッパリしてていいな!」

「……胡麻ダレもおいしーよ」

「僕も胡麻ダレ派かなぁ」


「おいおいもまいら、肉ばっか食ってねーで野菜も食え野菜も! コレクトコールが溜まるから」


「おやびんそりゃコレステロールだ」


「……ヒナちゃんがおやびんに突っ込んでる隙にお肉を……」


「ああ!? ズルいぞ小夜! 最初のは高級肉なんだから等分だろ!」


 なんというかさもしい争いだな。もくもくと食ってる優が一番ちゃっかりしてるけど。


 そしてワテクシ達は食いに食いまくった。普段その辺で食べてる焼き肉あたりとは一線を画す美味さに、普段少食な小夜も結構いってるな。


「ふぃ〜、食ったぁ~」

「……よはまんぞくじゃ」

「もう入りませ〜ん」


 食いも食ったりだなおい。みんなこんな細っこい体の何処に入ったんだか。


「デザートをお持ちしました」


「待ってました!」

「……バニラアイス」

「甘い物欲しい口になってました」


「まだ食うんかい!」


「「「甘い物は別腹!!」」」


 ああさいですか。ほんにおなごはよくそれ言うよな。おぢさんにはわからん世界ばい。


 無事デザートも平らげて、さぁいざお会計。


 お…… おお…… じ、人生の辛酸と苦渋を交互に舐めるようぢゃあ……

 経済的な打撃は、当面塩ご飯生活を余儀なくされるものだったとさ。

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