67 ヒナちゃんカレーばんざーい
「よーし、ほしたらキャンプ場に戻るぞー」
大の大人達がさんざん湯船ではしゃぎ、温泉の情緒も糞もあったもんじゃなかったが、まぁ身体は温まったので旅館を後にする。
外に出ればやや日も傾き始め、少々早い気もするが夕飯の準備に取り掛かる事にした。
「さてさて日向。昼飯があんなに美味かったし、晩飯も期待しちゃうよ? ワテクシは」
「まかせとけって。あまりの美味さに涙ちょちょぎれさせてやるから」
「そいつ重畳。ただ、なんつーかその、完全にカレーだな。カレールウ手に持ってるもんな」
「まぁな。キャンプつったらカレーっしょ! もちろんおやびんの言いたい事はわかる。市販のルウじゃんて言いたいんだろ? でもなおやびん、市販のルウを甘くみたもんじゃないんだぜ? まぁ期待してくれって」
日向がこんだけ自信まんちくりんなのだから本当に期待して良いのだろう。しかしアレだな、こうなるとワテクシと優のチーム漢はただ食らうだけのゴクツブシだな。ここは1つやれるって所を見せねばなるまい。
「よし、ではご飯はワテクシと優に任せて貰おう」
「ん? そりゃ良いけどおやびんハンゴウなんて使えるのか?」
「それこそ任せろ。マスターにキッチリ仕込まれた」
「そっか、なら頼んだ」
「ああ任された。優隊員! 米と水をこれに!」
「ハイ隊長! ただいま!」
いよいよ男女に分かれ、クッキングのお時間である。
「優は料理は出来るのか?」
「ハイ! カップラーメンつくれますよ……って、なんでそんな残念そうな顔してるんですか!」
た、たまにいるよな、カップラーメンを料理と言ってはばからない人。ここはひとつ生暖かい目で見守ってやろう……
「それはさておきだな」
「さておかれた!!」
「ご飯を上手に炊くコツを教えてやろう。いいかよく聞け、はじめチョロチョロなかパッパ、赤子泣いたら絞め殺せ、だ。」
「殺しちゃうんですか!?」
「ああ、悲しくも残酷な話しだがな、たとえ赤子であろうとも弱肉強食のくびきからは逃れられん」
「厳しい世の中なのですね……」
「ああ、生きるってのはそういうことさ……」
「……ヒナちゃん、優とおやびんが何か物騒な話ししてるけど……」
「小夜、アタシ達は何も聞いていないし、見ていないわかるな?」
「……え?」
「何も聞いていないし見ていない。他人だ。アイツ等は他人なんだよ。周りをよく見てみろ」
「……あ! うん。他人他人」
ワテクシ達の不穏当な会話を聞いた他のキャンパー達の眼差しに、いち早く気付いた日向は誰よりも大人な対応を示したのであった。
「さぁ! 出来たぞ!」
「待ってました!」
アホな事をやりつつも、どうにか料理は出来上がった。
「おお…… おお! なんだコレ!? 本当に市販のルウでつくったんか!? めっちゃ美味いぞ!」
「だろ? 市販のルウバカにしちゃダメだぜ。コイツはその道のプロが日本人の舌に合わせて作ったもんだ、そりゃ美味くて当然なんだよ。まぁチラッとアタシが手心を加えちゃいるが」
いやチラッとレベルでここまで昇華するとも思えんが、これはあっぱれな出来である。
「……ヒナちゃん特製ヒナちゃんカレー。心して食べるべし」
「そうだな! これは日向に感謝せんとな! よし優! 日向を讃えるぞ!」
「ヒナちゃんカレーばんざーい」
「わっかりました! ヒナちゃんカレーばんざーい」
「……わたしもばんざーい」
「ちょっ! バカやめろって! また周りの人達に見られてるって! ほら! スゲー笑われてる!」
顔を真っ赤にしながらも、まんざらでも無い笑顔の我らがヒナちゃんでした。




