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65 宴もたけなわ

「エントリーナンバー4545、おやびん。歌います! 尻毛尻毛尻毛ぇ〜 尻毛にもんまりぃ〜 腹毛腹毛腹毛ぇ〜 腹毛にぬんがりぃ〜」


「いやだからおやびん、ちょいちょい歌うその歌なんなんだよ!」


「……もんまりとかぬんがりとか謎……」


「でも何か妙に頭の中に残るんですよね…… 気が付くと口ずさんでる時があるんです」


 ぬっふっふ。【使い魔はリヴァイアさん公式メインテーマ尻毛にもんまり】に小娘共が魅了されとるわい。


 さてさて満開の桜の下、日向と小夜がこさえたごちそうに舌鼓を打ちつつ、楽しい宴は続いている。


「どうだもまいら、楽しんでいるか? 楽しんでいるのか? 楽しんでいるならワテクシに感謝していいのだぞ?」


「……楽しい。おやびんありまと」


「確かにな、これはおやびんに感謝だな」


「僕もこんなにしっかりとしたお花見は初めてで、すっごい楽しいです!」


「そうだろうそうだろう。穴場中の穴場だからな。何しろ人が少ないからゆっくり楽しめるのよ。某有名公園なんざゴチャゴチャと人が溢れて花見の情緒も糞もあったもんじゃねぇからな。花を愛でねぇ! 酒飲みねぇ!」


「すっかり有頂天じゃねぇか。今日のドヤはいつもの三倍増しだな」


「……まぁ今日くらいはドヤらしてあげよ?」


「そうですね! おやびんさん、お酌しますよー」


 すっかり歓待を受けるワテクシ。小ハーレムさながらである。


「綺麗な桜。美味い飯。可愛いおなご…… わ、わしゃあ天国にでもおるんか!?」


「おいおいおやびん、死ぬにはまだ早い(はえー)ぞ。今際の際の爺さんみたいな事いうんじゃないよ」


「……おかしな人を亡くしました」


「小夜さん、だからまだおやびんさん死んでませんてば! 手を合わせないで下さい! それに惜しい人ですよそれ、まぁおかしな人で間違いと言う訳でも無いですけど」


 だいぶ優もこなれてきとるな。泣きそうなくらい辛辣な言いようだ。


「そういやおやびん、来る途中川が見えたけどこの近くも流れてるのか」


「おう、まだシーズンじゃないけどな、釣りも楽しめるぞ。ほれ、そっちに降り口があるだろ? 下ってきゃ川に着くぞ」


「な、なぁ、ちょっと行ってきていいか?」


「そりゃまぁ構わんが、くれぐれも足元気を付けろよ? 苔なんざヌルヌル滑るしな。流石に水遊びすには早すぎるからな、コケて水浸しとかなってくれるなよ?」


「大丈夫だって。アタシがそんなやらかしに見えるかよ?」


「見えるな」

「……見える」

「ごめんなさい、見えます」


「だぁ~っ!! なんだよどいつもこいつも! そんなにマヌケじゃないっての! ちょっと河原を散策するだけだよ! とにかく行ってくる!」


 プリプリしながら小夜、優を連れて川へと向ってしまった。川落下の壮大なフリになってしまった感があるのはワテクシだけでは無いだろう。無事を祈るのみだ。


 しかしそんな望みも舞い散る桜の如く散りゆく運命(さだめ) 

 ややもすれば案の定ずぶ濡れになって帰ってきた。


「……だからあれほど気を付けろと言ったんだよ。分かっているのか? 優!!」


「ごめんなさぁ〜い」


 そう、ずぶ濡れネズっちゅうになったのは日向ではなく優。流石にこの時期の川の水温はかなり低い。唇を紫にしてカタカタ震えている。


「まったくしょうがねぇな。ちっと早い気もするが風呂にするか」


「風呂? なんだおやびん風呂もあんのかよ?」


「あったりめぇでぇ! こちとら江戸っ子でぇ!」


「いや江戸っ子関係ないだろ」


「とにかくあるんだよ。着替え持ってついて来やがれべらんめぇ!」


「……まだ江戸っ子つづいてたんだ」

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