5 藍華
「おっやび〜ん」
「でたなアマゾネス!」
「アマゾネス言うなし!」
今日も今日とて軍バトのお時間。対戦相手が早々に挨拶にきたのだが、知り合いである。知り合いどころかこのゲームに招待した御本人藍華その人である。
藍華は自他共に認める生粋のヲタである。日記友達でもあった彼女は、ちょいちょいコスプレ画像なんかもアップしていた。銭○のとっつぁんコスには吹いたもんだが。
ゲーム内では花魁のアバターを使用して、自分の軍団を起ち上げている軍団長様だ。彼女の軍団は女性プレイヤーのみで構成された、その軍団名も【花魁道中】。
女性プレイヤーがそこまで多く無いのもあって、とてつもなく目立つ軍団ではある。
実力の方なんだが、これがしっかり強者。女性のみだからとナメて掛かれば瞬の殺。何しろ、藍華を筆頭に廃課金者が2、3人、残りも廃課金とはいかないものの、課金者で構成されているのだ。
「これをアマゾネスと言わずして何というか」
「おやびんのせいで、アマゾネス言う人が増えてるんだよ!」
「布教は任せろ」
「してねーし!」
「ケタケタケタw」
「笑い事じゃないよまったく。にしも、おやびんやらないかと思ってたのに、めっちゃハマッてるじゃん」
「ホントだよ…… お陰さまでコツコツ貯めてた老後の資金が……」
「ギャンブルで身を崩すタイプw」
「ガチャはダメだな、熱くなっちまう」
「わかる〜。次は絶対! みたいな」
「で、パンツ買う金もなくなるんだろ?」
「ぐ! 何処からその情報を!」
「ワテクシの情報網をあなどって貰っては困る」
「変態紳士おそるべし!」
「お前、変態はいいけど紳士はやめろよ」
「変態はいいんだwww」
「使用済パンツとならワテクシのデッキ全部とトレードしてやんよ?」
「や・め・てw ちょっと揺れ動くからw」
「揺れ動くんかいwww」
まぁ、知り合い同士もあって軽妙なアホコメ挨拶でワイワイとやらせて貰ってはいる。
「んで、軍バトどーするの? 白旗上げちゃう?」
「いーや上げない。おまいには上げない。コテコテのパーにしてやんよ」
「ほほぅ、いい度胸ですなおやびんくん。おやびんくんのデッキがつおいのは認めるが、うちら相手に太刀打ち出来るとでも?」
「勝ち負けぢゃねぇ! 男の……いや! 漢の尊厳の問題よ!」
「おお! なんか格好いいし!」
「つーわけだ、遠慮会釈なしでやり合おうぜ!」
「わかったー。じゃよろしくねー」
「おう!」
などとは言ってみたものの、正直勝ち目は無いだろう。それでも男にはやらねばならん時がある。勝てないまでもおやびん恐るべしの爪痕ぐらいは残してやんよ!
そんなこんなで始めたものの、想定通りの惨敗。兎角防御コスト割れが問題だと痛感する戦いだった。防御コストが対戦する度に削られ、最終的には防御デッキがマックスデッキにならなくなる為、余計に敗北を生むのだ。
これは早々に改善せねばならんな。暫くはレベル上げに励む必要がありそうだ。
「おやびん軍バトおつかれ〜」
「おうおつかれ。大惨敗だちくしょー」
「いやいや結構焦ったよ、想像以上にデッキ強化されてるし、何しろ何? あのポチポチの速度? 分身の術でも使えんのかってうちの娘らも焦ってたよ」
「お一人様軍団で鎬を削ってるからな、必要不可欠なスキルなんだよ。親指が吊るけどな」
「なるほど〜。おやびん凄いってみんな絶賛してたよ? うちの娘らとも仲良くしてあげてね」
「つまりパンツトレチャンスが増えたのですねわかります」
「ちょw それもういいからw それに、うちの娘らに変なちょっかい掛けたらわかってるよね?」
「ゔ!! へ、変なちょっかいは変態紳士としてのアイデンティティなのだが!?」
「お・や・び・ん?」
「横暴だぁ〜! 自由恋愛を〜!」