46 それぞれの考え方
新イベントは順調に粛々と進めている。一応勢力報酬もあるのだが、そこまで躍起になる報酬でもないかなって感じである。1000勝到達したらワテクシはスルーしようかな。
「おやびんイシターって女軍団長知ってるか?」
「ああ、通称お頭さんだな。以前ベッドルームの世話になったぞ」
「そうなんだ。なんかその人に説教された」
「ん? 説教?」
日向をして曰く、どうやらイベントバトルで3凹したら食って掛かって来たらしい。
「挨拶くらいしろとか、弱者相手に3凹すんなとか、そういう行動はおやびんの恥になるとか」
「マジか……」
「つーか、なんかもうだれかれ構わず食って掛かってるみたいだな。藍華さんとも揉めてたぞ」
「ふむ、あの人は変に真面目だからなぁ、こういうイベントと割り切って柔軟に対応出来んのかもなぁ」
それなりにに力を付けて来ているとはいえ、ベッドルームのメンバーはそこまで強い訳では無い。1番の稼ぎ頭であるしゅうへーさんでも500勝狙いぐらいではなかろうか?
とりわけベッドルームは、仲間内でカバーし合いながら楽しむ、アットホームなプレイスタイルだ。それだけにこの手のイベントはかなりツラいのだろう。それこそイベント開始以降、毎日クソミソに凹られ続けているはずだ。このイベントの仕様だと、普段の様に一々対戦挨拶もほぼほぼのユーザーはしないし、3凹も当たり前だ。
まずまずのユーザーはそれを受け入れてはいるのだが、やはり一定数のユーザーは受け入れられないみたいだな。
イシターさんもその1人のようだ。気持ちはわからんでも無いが、さすがに挨拶の強要とかはちょっと違う気がするな、少し話してみるか。
と、イシターさんのマイページに来てみれば、結構揉め事の真っ最中だったりする。
「3凹してきて挨拶も無いのですか!」
「しませんね。昨日も言いましたがイベントの仕様を考えたらいちいちやってられませんから。明日もしません」
相手は藍華だ。寄りにも寄って厄介な奴に噛み付いてるな。あのコメントの感じだと相当カリカリしてんぞ、【花魁道中】敵に回したらベッドルームなんかもみくちゃにされんだろうに。
「藍華さんすいません! ちょっとうちのお頭毎日ボコボコにされてて気が立ってて! お頭にはきちんと説明しますから勘弁して下さい」
おっと、しゅうへーさんが仲裁に入っているな。実質この人がベッドルームの要だからな。気苦労も絶えんだろ。
「まぁ、しゅうへーさんがそこまで言うなら引くけど、ほんとにちゃんと説明してね? 毎日突っかかれるの鬱陶しいから」
「すいません、そこはちゃんと言っときますんで!」
「やあしゅうへーさん。お頭さんがプリプリしてるらしいね」
「あ、おやびんさん。そうなんですよ、イベントだから仕方が無いって何度も言ってるけど、納得いかないって……」
「良ければワテクシも説得に力を貸そうか?」
「それは有り難いです! と、言いたいところですけど、とりあえずもう少し自分達で頑張ってみます。ベッドルームの今後を考えたら、これくらいの揉め事は自分達で対処出来る様にしないといけませんから」
「うん。それは良い心掛けだね。仲間と一緒にきちんと説明すればお頭さんもきっとわかってくれるよ」
「はい、有り難うございます!」
うん、しゅうへーさんがこれならワテクシが口を挟む必要は無かろう。ベッドルームは強くなりそうだな。