40 2人の秘密
「あ〜たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!! もまいはもうタヒんでいる!」
「そりゃそりゃそりゃ」
「……むむむむ」
わざわざ飲みに来てまでゲームするのはいささか如何なものかとも思うが、これはあくまでオフ会である。そう、我らが【メデジン・カルテル】のオフ会な以上、軍バトは必須だ。
「おやびん大分差が付いたぞ」
「いや、油断するなよ? そろそろ御大将がやってくる頃合いだぞ。アイツの号令の下に組織的に動くと【花魁道中】の戦闘力はハネ上がるんだ」
「……あ、きたみたい」
「うげ! 本当だ! テレテレしてたら捲くられるぞこりゃ!」
「さぁこっからが本番だ。こっちも本気出していくぞ」
「え? まだ本気出して無かったのか?」
「あたぼうよ! このおやびん見くびっていただいては困る。ふるえるぞ親指! 燃え尽きるほどヒート! ポチィッ! ポーチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ!!」
「うあ〜、おやびんのポチポチ初めて生で見たけどこれは凄まじいな」
「……すたんど、ポチポチ阿修羅」
「もまいらもボケっとしてないでポチりなはれや!」
「ああそうか!」
「……ふぁいとー」
そして激しい軍バトが繰り広げられるも。
「よっしゃ勝った! 逃げきったな」
「やりぃ!」
「……ぶい」
「ハハハ、藍華さんめっちゃ悔しがってる。コメ来た」
「……私にもきた。くやしーって」
ワテクシにも来てるな。
「きぃ〜! うちがいない間にやってくれたわねぇ!」
ふふん。負け犬が。オモロイからからかってやるか。
「R.I.P」
「ム・カ・ツ・クwww」
「ヒャヒャヒャwww」
「な、なぁおやびんRIPてなんだ?」
「安らかに眠れだ。クールな煽り文句だろ?」
「ヒデぇなアンタ」
「……藍華さんも災難」
軍バトも無事に勝利をおさめると、店を後にして帰路へとつく。狭いながらも楽しい我が家だ。
「ほれさっさと入れ」
「お邪魔しまーす」
「……しまーす」
「思ったより片付いてるんだな」
「……うん。きちんとしてる」
「ゴミ屋敷とでも思ってたのか? 失礼な」
「ああそうじゃなくてさ、男の一人暮らしなんてなんかこう……な」
「……掃除とかしてなさそうなイメージ」
「それは個人差あんじゃねぇのか? 汚い家の方が少数派だぞ? よしじゃあ寝るか。さっきも言ったがもまいらはベッドで寝ろな」
もう特にする事も無いので寝る様に促すが、2人が何やらモゾモゾと言い合う。
「……ヒナちゃんはやく」
「わ、わかってるって」
「ん? なんだ? 早く寝ろよ? 寝不足は美容の大敵だぞ」
「お、おやびん! 話があるんだ! 大事な話が」
「あん? 大事な話?」
「あ、ああ。えと、その、あの……」
「どうした? はよ言わんかい」
「えっとだな、だからアレだよほら」
「わかるかそんなんで!」
「……おやびんは同性愛ってどう思う?」
煮えきらない日向に対し、小夜が言い放った。
「ん? 同性愛? なんだ急に? ん〜同性愛かぁ、どうって言われてもなぁ」
「いや、そんな難しく考えなくていいんだよ、ほら、気持ち悪いとか世間的にはさ、あるじゃん?」
「ふむ、気持ち悪いとは別に思わんな」
「本当にか!? 同性でなんだぞ?」
「ああゴメン。オッサン同士がくんずほぐれつしてるのは見たくねーな。それでもそりゃ当人同士の問題だろ? そういう人もいるだろ? 程度にしか思わんぞ」
「……ほら、言ったとーり」
「あ、ああ本当だ」
「なんだ? こんな質問が大事な話なのか?」
「いや違うんだ。もし、もしだよ? アタシ達が同性愛者だって言ったらどう思う?」
「日向と小夜がか? ん? マジでか? そうなのか?」
「……うん」
「おお、マジかぁ。身の回りでそういう人は初めてだなぁ」
「どうだおやびん、気持ち悪かったり無いのか?」
「なんでだ? さっきも言ったろ? 世の中にはそういう人もいんだろ? それがお前らだったってだけだ。お互いが好きあってるなら問題無いだろう?」
「……ね、ヒナちゃん。おやびんはこういう人」
「うん。カミングアウトして良かった」
「なんだ? 嫌われるとでも思ったのか?」
「最悪の場合軍団抜け無いとなぁとかさ」
「バカだなおまいは。前に言ったはずだ、もうおまいらはワテクシの家族だと。抜ける事は許さんと。てか、それならカミングアウトなんかしないで黙ってりゃ良かったろーよ?」
「それなんだけど実はさ、受け入れて貰えたら頼みたいお願いがあるんだよ」
お願い? なんだか悪い予感しか働かないな……