39 だから反社の人ではない
地元に着いた所でホテルを探したのだが。
「ここもダメだ。チェックイン出来るホテルが無ぇ」
東京とはいえ、所詮は郊外。田舎をナメていたな、こんな時間でももうダメらしい。
「もうおやびん家しかないな」
「しゃーないか…… シングルだから狭いけどベッドはおまいら2人で使え。ワテクシはソファーで寝る」
宿に関してはもううちに泊めるより無いだろう。さすがにネカフェ難民しろとは言えんしな。
で、2人の要望通りにダチの営むバーへとおもむく。繁盛とは程遠い、ちっぽけな店ではあるが。
「よう、来たぞマスター」
「おう」
カウンターで暇そうにグラスを磨いているのが、この店のマスターで、ワテクシの小学生の頃からのダチである。
「ん? おやびん、後ろのちんまい2人はなんだ? 拐ってきたのか?」
「お前なぁ、冴えねぇ店にせっかく2人も客を引いてきてやったんだぞ? もうちょいマシな言い方ねぇのか」
「冴えなくて悪かったな。俺の店は通好みなんだ」
マスターと談笑をしてると後ろから突かれる。
「な、なぁおやびん、やっぱり反社なのか? 兄弟ってなんだ?」
「……マスター傷だらけ」
「だからカタギだっつの! マスターとはふざけ合いでそう言ってたら馴染んじまっただけだ。後な、アイツの傷っ面はそんな大した話じゃ無い。原チャリの免許取った時、ハシャいでウイリーしてたらミスって有刺鉄線に突っ込んだ時の傷だ。バカだろw」
「バカは余計だ。名誉の勲章って言え」
「何が名誉だよ。バカの証じゃねぇか」
「うるせぇなまったく。で、嬢ちゃん達は何飲む? オレンジ、コーラ、お茶にミルク。コーヒー紅茶になんでもござれだ」
「ああいや、コイツ等はアルコールデヴューしたいらしいんだ。なんか適当に見繕ってやってくれ」
「おお、そういう事か。なら良い思い出にしてやらねぇとな! 上客になってくれるかも知れねぇし」
「通好みの店じゃなかったのかよ?」
「通を育てるのも俺の仕事よ」
カウンター席に並んで座ると、ワテクシの元には慣れ親しんだウィスキーが勝手に出てくる。
「おやびんのそれはなんだ?」
「普通のウィスキーだ。安もんだ」
「美味いのか?」
「舌バカのワテクシは何飲んでも一緒だな」
「本当にな。金にならねぇ客だよ。ホラ嬢ちゃん達、飲んでみな」
「有難うございます」
「……どーも」
2人共、渡されたグラスを恐る恐る口へと傾けると。
「あ!」
「……おいし」
「だろ? カクテルなら女の子でも飲みやすいからな。でも口当たりの良い酒は悪酔いし易いから気を付けろ、知らず知らずに飲み過ぎちまうからな」
「わかりました」
「……りょーかい」
どうやら初めてのの酒はすんなり受け入れられたようだ。交換して飲み比べたり、カクテルメニューを開いて次はどれにしようか等とハシャいでいる。
「時に2人共、初めての酒に興じるのは構わんが、そろそろおっ始めるぞ?」
「ん? あ! もうこんな時間か!」
「……軍バト軍バト」
3人揃って携帯を取り出す。今日の対戦相手は何処ですかねぇ〜と。
「うお! 藍華さんとこだ!」
「……むぅ強敵」
「いや、アイツ最近仕事が忙しくてインが遅いんだ。序盤で大差付ければ逃げ切れるかも知れないぞ」
「よし! いっちょやってやるか!」
「……せんとーかいし」
「ちょっと待てお前ら! ゲームやんなら奥のボックス席に移動しろ! ジャージ娘とゴスロリ娘とオッサンが携帯いぢってる絵面を客が見たら帰っちまわぁ!」
反論のしようも無い苦言であった。




