37 反社の人
ふむ。定刻より15分前だ。社会人たる者、15分前行動は厳守だ。
オフ会当日である。待ち合わせ場所にしっかりと15分前には到着して、日向と小夜の両名を待つ。さっぷいからさっさと来て貰いたいもんなんだが。
「おやびん着いたか?」
日向からのメールだ。
「おう、着いてるぞ」
「ん〜、それっぽい人が見当たらないんだけど……」
「ワテクシの視界にも見当たらんな」
「南口か?」
「北だな」
「あれ程南口って言っただろ! なんで北口に行ってんだよ!」
「な!? あ、あれは北口へ行けって振りじゃなかったのか!?」
「このオヤジwww もうさっさと来てくれよ」
「あいわかった」
なんだよ、丁寧な振りじゃなかったのかよ。二度手間だよまったく。なんて思って移動を始めたのだが、
「おやびん急いで来てくれ! しつこいナンパ野郎共にからまれてる!」
中々にヤバ目なメールが送られて来た。これは急がねば。
北口へと移動すると辺りを見回す。ん〜と、ああ、アレだな。女の子が2人、野郎2人に絡まれいる。アレに間違い無かろう。早速助けてやらねば。
「おい、嫌がってるだろ。やめろ」
男の肩に手を掛けてやめる様に促すと、
「あ? なんでテメェは! 関係な…… す、すいません。勘弁して下さい」
ワテクシに振り返るなり謝り出す。別にそこまで謝らんでもいいんだがな。
「これは俺の連れだ。ナンパなら他所を当たれ」
「はい! すんませんした! 失礼します!」
ペコペコ頭を下げて走り去るナンパ野郎共。素直な青年じゃ無いか。
で、振り返れば女の子2人が青ざめた顔でワテクシを眺めている。良く日に焼けたショートカットでジャージ姿の娘と、真っ白い肌に漆黒のツインテール、ゴスロリファッションの娘。うん、間違いなくこの2人だろう。アバター通り過ぎて何の迷いも無いわ。
「あ、あの、た、助かりました。有難う御座いました。い、行こう」
「……うん」
が、日向と思われる娘が小夜と思われる娘の手を引き、立ち去ろうとする。
あれ? ワテクシの勘違いか? 他に絡まれてそうな2人組みなんているのか? キョロキョロと見回すも、やはりそんな都合の良い存在はいない。そこへ、
「ちょっとおやびん早く来てくれ、ナンパ野郎からは助けて貰ったんだけど、今度はヤクザのオッサンがこっちをジロジロ見てんだよ!」
何! それはヤバイではないか!
「つーか、ワテクシもう南口なんだよ。ほんでもまいらかと思った女性2人をナンパ野郎から救ったんだが、何か違う人だったみたいでな」
「は? そんな偶然あるかよ!」
「言われてもな……」
「ま、まさかと思うがおやびん右手上げてくれ」
ヒョイッとな。
「ピョンピョン跳ねてみてくれ」
あそーれピョンピョン。
すると先程の2人が戻ってきた。
「あ、あの、本当におやびんか?」
「おお! やっぱりもまいらだったか! その見てくれで間違うわけ無いと思ったんだ!」
「うわあぁぁぁ!!」
「おわっ! どーしたいきなり!」
「こっちはまったくの想像外の見てくれだったよ! どっからどう見てもヤクザじゃねーか!」
「し、失礼な! チョイ悪オヤジファッションと言ってくれ!」
「何処がだよ! 黒いコート、白いマフラー、皮の手袋、薄いサングラスにオールバック。イカツイ顔! めちゃくちゃ怖かったぞ!」
「怖い事あるかよ! ナイスガイだろうが」
「反社だ反社!」
「ひでー! あ、もう帰りたくなった。助けてあげたのに反社扱いとはねー」
「……ごめんねおやびん。かっこいい」
「だろう? 小夜は可愛いなぁ。なでくりなでくり。それに比べて日向ときたら……」
「わかったよわかったよ、格好いいよ! 中身は間違い無くおやびんだなー、あーびっくりした」
かくして、ジャージ娘、ゴスロリ娘、反社のオッサンのヘイト爆上りパーティが誕生した。