18 イシターのベッドルーム
「こんにちは。お一人ですか?」
「あ、どーも、一人でボチボチやらせてもらってます」
話し掛けて来たのはイシターさんと言う女性ユーザーだった。【イシターのベッドルーム】と言う、何だか艶めかしい軍団名を誇る軍団の軍団長さんのようだ。
「もし良かったら私の軍団に入りませんか?」
ふむ、このおやびんを勧誘したい気持ちはわかるがな。
「あ、すんません、ちょっとのんびりやってますんで。折角のお誘い申し訳ないのですが」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ただ、もしお一人で何かお困りの事が有りましたら、何時でもお声掛け下さいね?」
「あ、はい。ありがとうございます」
……あれ? 何か引っかかる物言というか、ワテクシがボッチなのを本気で心配されてるよーな…… このおやびんの圧倒的戦力を引き入れる目的で接近したんちゃうんか?
最近本当に勧誘が多いんだわ、まぁワテクシをナカーマにしたら軍団に箔が付くのはわかるけどもドヤァ。
言っとくけどワテクシそんな簡単に寝屋を共にするほど、安い女じゃないんだからね! オネエ言葉になっちゃった。
いつまでもボッチでいるかはわからんが、少なくともまだいーかなって思っとる。結局自分のペースでやれるが一番だよな、ノルマが云々言ってる軍団もあるみたいだし。そんな義務感背負ってゲームやって楽しいのかね?
と、そんな折に先程のイシターさんがまたやってきた。
「さ、先程はすいませんでした! おやびんさんが物凄く強い有名プレイヤーとはいざ知らず、とんだ御無礼を!」
ああ…… やっぱり知らんかったんか。ワテクシもまだまだだのう。
「そんな謝る様なこっちゃ無いですよ。お気になさらず」
「軍メンが私のコメ欄見て、お頭! おやびんさんと知り合いなんですかー!? って言われて、どういう事か聞きいてみたらトッププレイヤー様だとか…… 私ったらそんな方相手になんて口の聞き方を……」
お頭てw
「本当に気にして無いのでだいじぶですよー。むしろイシターさんの姿勢は感心してるくらいですよ?」
「感心ですか?」
「はい、ボッチのプレイヤーの中には、混ーぜーてーの言えない内気な方も多数いらっしゃいます。初心者さん等は特に。そんな方々はイシターさんみたいな軍団長さんは有り難い存在だと思いますよ? ワテクシの勧誘にしても、ワテクシの戦力目当てでは無く、一人で困ったりしてないか? って感じみたいでしたし」
「それは、確かにそうなんですが。何だかちょっと持ち上げ過ぎでは有りませんか? 恥ずかしい」
「いえいえ、立派なお頭だと思いますよwww」
「あ! うっかりお頭って書いちゃってた! 実は軍団でなぜか私お頭って呼ばれてるんです…… 我が君とか呼ばれたかったのに…… 山賊みたいな……」
「仲良さげで結構じゃないですか。ワテクシもお頭って呼ばせてもらいますねw」
「やめて下さい〜」
「ケタケタケタw ん〜、見たとこベッドルームさんはまだ日が浅い軍団ぽいですね」
「はい、最初期からプレイ始めたわけではなくて、みんな初心者に毛が生えた程度です。右も左もわからない中、みんなと力を合わせて頑張ってます」
「それは重畳。そういう時間が実は1番楽しかったりするもんです」
「あは、そうなんですよ、弱いんですけど弱いなりにあーでもないこーでもないって」
「ええ、そのうち強くなりますよ、きっと。ではそろそろ失礼して」
「あ、あの! おやびんさん! 無理を承知でお願いします! さっきあんなに褒められた後でこんな事を言うのははばかられるのですが、私達の軍団に入って頂けないでしょうか! ご指導などを頂けないでしょうか!」
ん〜…… まぁ袖振り合うも多生の縁か…… 1イベくらいは付き合ってあげるか。
「そうですね、ずっとってわけにはいきませんが、次のイベントくらいで良ければ構いませんよ?」
「え!? いいんですか! はい! はい! 少しだけでも結構です! わぁ! みんな驚きますよ!」
なんだか真っ直ぐな人過ぎて、根っ子の腐ってるおやびんには少々眩しいですたい。