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蒼天のむこうがわ  作者: 天野未晴
蒼天のむこうがわ
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婚約式5

 そして、こじんまりはしていても精一杯飾り付けられたであろう応接室でお茶をいただき、敬様の小さい頃のエピソードを伺い、笑顔のまま西橘邸を辞して謝罪行脚は終了した。

 そして邸へ帰りつくと帝への謁見の許可の連絡がお母様と私宛てに届いていた。明日行く事になっていた。

 なんだか最近は仕事でもないのに忙しい。

 まあ元内親王様の娘をやっているのなら様々な事に首を突っ込まざるを得ないのも必然よね。ごちゃごちゃ言わずにかれも義娘の務めとして受け入れるもが筋ってことよね。

 ということで疲れた私達母娘は明日の謁見に備えて早めに就寝した。


 翌朝は謁見に向けての仕度でせわしなかった。

 さすがに十二単までの衣装は用意しないまでも謁見にふさわしい衣装というものがあり、たとえ身内であってもそれなりの礼儀を示さないといけないのが皇家というもので、私達母娘も例外ではなく、朝から仕度に励んでやっと正午前に謁見に臨んだ。

 とは言ってもお母様にとっては住み慣れた皇居に帰るだけだが、これまで仕度を面倒くさがってほとんど里帰りをなさらなかったらしい。

 たしかに洋装に慣れてしまうと十二単もどきは堅苦しくて面倒なのは本当。和装に慣れている内親王様でもコルセットなしの洋装を、しかもワンピースを少しばかり肩パットや腰にパニエを入れる程度の大変さとの比較では十二単の窮屈さとは比べ物にならないだろう。自分でも経験済みだ。

 なので正式な和装を皆が面倒に感じてしまうのも分かってしまう。のだが、今日ばかりは自分からイソイソと母も私も着替えていた。

 そして先日お会いしたばかりの帝に再びお目にかからせていただいた。

 すでに帝にはやはり側近から概略は伝わっていたそうで、私はいなくてもいいのでは?と思うくらうにお母様が細かい点を補足なさって下さって、この場には急遽呼び出された東様も同席して下さったので話しはとても早かった。

 ようするに、これまでも彼女についてはどうするの?どうするべきなの?西の1位の家としてはどうあるべきなの?といった話しは何度か秘密裏に行われていたそうで、遂にこの皇宮の外にまで話しが出てしまってはこっそり内密に穏便にとはいかないかもしれない、ということになったそうだ。

 但し大っぴらに出来る出来事ではないし、西の1位という家柄に傷をつけるのを躊躇ってしまった為にここまで超難問事項として扱われていたようだ。

 そこで帝をはじめ、全員の視線が私に向いた。いわく、前の世界ではこういう場合はどのように対処していた?と聞きたい為に同席させられたと見た。まあ予測はついていたけれどもね。

 そこで考えていたことを申し上げてみた。それをどう料理するかはお歴々方の手腕に任せてしまおう。

 てことで、向こうでは簡単に離婚が出来る国と出来ない国があり、ここの都では出来ないのを理解しているので別居という手段があることを付け加えた。

 皆さん面白いくらいに食いついてくれて、その場合の子供の扱いはどうするのかとか、住む所はどうするのかとか、職業はどうするのか、収入は、身分は、と私ではうろ覚えなことまで根掘り葉掘り聞かれてしまって閉口した。

 何しろ離婚できないのを当然と思って、ただひたすら耐える以外の生活は考えられない都なのだ。別居だけでも想像の外だったのにストーカー接近禁止(離婚にはそんな人物も登場するのかととっても驚愕していた)なんて事まで考えないといけないとは、やはり離婚は難しそうだととりあえずの結論に達する可能性が高くなったようだ。

 でもそれって地獄だよね。顔も見たくない人と同じ家に住み続け、死ぬまでそれでも顔をつき合わせないといけないのは辛すぎる。

 とにかく2時間くらいは協議したけれど、結局結論は出ないままその日はお開きになった。あとは帝と東様と法律関係の偉い人とで議論をして結論を出すらしい。

 で、後日知らせが来た。

 簡潔にいえば、法律違反、ということになったそうだ。

 この都に途中参加の私ですら行っている就労の義務違反。つまり飛来さんと同じ罪。働きたくないなら働かずに済む立場になれ、という罰を受ける事になったのだとか。

 まず我々の儀式に使った木材の大半は使い道が決定していたのだが、それでも若干の余りが出る見通しがついたので、その木材を使用してある場所に一人暮らし用のこじんまりした家を建てる。そこへ今まで使用していた中でも華美でない衣服を厳選し、それと食器、台所用品、掃除用具だけを運び込む。これは西宮司邸から密かに運び込まれた。箪笥類も下働きが使用していた物を運び入れたらしい。

 下働きにはもう少し見目の良い物で使わなくなっていた東之条邸の家具を下賜したそうだ 。

 飛来様の食料は働かせる事の出来なかった罪で東之条家が担当したが、西宮司の奥方の分は同様に働かせる事の出来なかった罪で、西宮司家が担当することになった。

 彼女の名前は西宮司香莉。これからは西宮司家の部屋住みとして元西宮司家の妻女と呼ばれる事になった。

 逆揚華である飛来様と同等の扱いであれば充分だろうという配慮らしい。

 今現在この呼び方が定着しつつあるのは、元西宮司家の妻女の実家が彼女の引き取りを拒否したため、正式な席では香莉のみとなる。苗字のない人はこの都では飛来さんと香莉さんだけだ。

 このような経緯が皇宮から鷹司邸の当主宛に届いて、当家としては彼女と関わってはいけないという命令書が添付されていた。

 義母にあたる人物なわけで、私としては一度くらいはきちんと面と向かって話しをしてみたかったのだが、命令書が出る直前に会ってみたいなあ、という意思表示は出してみたのだが、鷹司はもちろん西宮司家も東之条家も全力で止めてきた。息子である鷹様まで止めるのだから、まあそういうことなのだろうとゴリ押しはしなかった。

 西宮司家への命令書には万が一にも逃亡する懸念も憂慮されることから、彼女の新居にはコフは備えてはいけないし、奪われないための対策をたてる事を義務付けたというのだから一体どんな人物なのだろうと変な想像だけが膨らむ内容だった。

 そして私がこの世界へ来て1年が経とうという頃には我々の結婚式の準備に都が沸いていて、香莉さんの事なんて誰の話題にも上らなくなっていた。

 で、その頃にもう一つ大きなイベントが起こった。

 なんと飛来さんがアトラスから移住する意思はないかと打診を受けたのだ。

 アトラスのテヅカさんから、昔語りをしませんかとのお誘いをいただいたらしく、それが何故か移住にまで話しが進んでしまったのだから当人の飛来さんにも不思議な出来事ではあったらしい。

 飛来さんの移住は我々の結婚式を見届けてから行きたい、と御本人の希望が通ったと聞いた。

 










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