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歪んだ思い

作者: 奈々志野

自分と結婚相手に似た子供は育てたく無かった。

そんな理由で、子供を生んだ産院ですり替えた。


結婚したくなった。だが、世間はそれを許してくれなかった。仕方なく、なんとなく付き合っていた相手の子供を妊娠して、結婚を迫った。

相手は簡単に二つ返事で、結婚を承諾した。


両親は幸せそうに暮らしてるが、私には理解できない。

相手も、幸せそうに暮らしている。

でも、私は不満ばかりだ。

なぜ、結婚したら、子供を生んで、育て無ければならないのか!!

仕事は好きだった。でも、結婚をしたら、辞めなければならない、不文律が会社にはあった。

誰もが、私のことを、家庭と仕事を両立出来ないと決めた。

子供を産んだら、どうして育てなければならないのだろう!!誰が決めるのだろうか?


だから、自分の子供とすり替えたのだ。


自分の子供では無いから、子育ては楽しかった。

自分に似ていないから、すべてが許せた。

相手が「俺に似て可愛い」と言うと、”バカね、そう思っていれば良いわ!”と歪んだ満足感に満たされた。

両親が「孫は可愛い」といえば、”血の繋がりが無い事を知れば、さぞや面白いだろう”と思うと、心の底から両親に対しての侮蔑の感が沸き起こり、私は満たされていくのが分かった。


子供はすくすくと大きくなり、周りから愛される子になった。

私は満足感に満たされた。

子供が褒められるたび、”私の子供ではないけど、立派に育てる事が出来るのだ!”と、自己陶酔に似た感情が満たす。

子供が私に「お母さん、大好き!」と言う度、”私と血の繋がりが無いけど、好きなんだ!可哀想に、アンタのお母さんは違う人なんだよ。でも、私が面倒見てあげているから、大丈夫!もっと私を大好きになるんだよ”と、愛情にも似た歪んだ思いが私の身体を駆け抜ける。


”私はなんて良い人なんだ。”

悪い事をしたけど、良い事もしている。

みんなを騙して、私は歪んでいる。

この思いこそが、私の思いを満たしてくれる。

私の人生は”嘘”で満たされている。

なんて、素晴らしいんだろう!!


こんな思いが出来るなら、もう一人子供を産んでもいい。

私は、また、子供を産んだ。

また、同じように子供をすり替えた。


子供が可愛くて仕方が無かった。


そして、人生の末路に待っていたのは、虚の中にいる満足した自分だった。


「お母さん、幸せそうだったね。」

「ああ、騙されているとも知らず。」

「どうして、騙したの?」

「母さんは、いつも不満だったのさ。自分が優れていると思いたかった。だから、騙したのさ。」

「それって、つまり、お父さんの方が賢いって事?」

「そんな事はないさ。騙して、騙されて、結構楽しかったから、どっちもバカって事じゃないかな?」

「バカって、分かっている事は大事なんだね。」

「そうだね。自分を理解していると思っている人ほど、自分の事が分かっていないものさ。」

「そうか、じゃあ、結婚って、騙しあいの事を言うんだ。」

「そうだね。そうかもしれないね。」

こんな事が起きたら、大変だろうと思いますが、自分の子供じゃなかったらどうなんだろうと考えて書きました。感想お待ちしています。

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