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月を見に
この作品は「劇伴企画」参加作品へのアンサーストーリーです。
劇伴はこちら
エンメルライヒ 紡ぎ歌
肌寒くなった季節に、レースのカーディガンを羽織り月夜に飛び出す。今宵は空に銀の光が、冗談みたいに丸く浮かんでいる。
こんな夜にはきっと居る。浜辺で歌うあの人が。遠い異国の不思議な歌を、波を背にして歌うのだ。
「喉が潰れるのではありませんか」
一度だけ聞いてみた。その人は静かに笑って、なんとも答えず少し黙った。それからまたちょっぴり歪んだ陽気な声で、糸紡ぎ娘の初恋を歌う。
スニーカーを砂だらけにしながら駆け寄れば、歌は海へと消えてゆく。
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原作はこちら。
掌編集
白銀の朝はときめき
作者:香月よう子
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