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第9話



この村に住んで3日が過ぎた。この生活にも大分慣れてきたし、村の仕事も順調にこなしている。周り人達とは早くも打ち解けられ今ではお裾分けと題した頂き物が大量にあり、食料保管庫として大きめの倉庫を新しく作ったり、さらに念願の冷蔵庫も完成した。これで生ものを長期保存できるし、いちいち燻製や干し物にしなくて済む。


レベルとスキル上げの為に毎日のように狩りに解体に畑仕事に家畜の世話に家事に追われながら幅広く村の仕事をしていた。ルーナフェシナちゃんの体の弱点といえば間違いなく体力の無さだ。少しでも体力を付ける為に動いて筋肉をつける必要があった。


村の皆からは「ルナちゃん、働きすぎだよ!」と気を遣わされたり心配されたりしたが、その度に私は「大丈夫です!」「平気です!」「まだまだ頑張れます!」「娘の為なら頑張れる!」と何度か押し切り説得して仕事をしてきたが、とうとう「休みなさい!」と皆から怒られ、お説教までされてしまった。


畑仕事仲間のルドじぃから「娘の為に一生懸命働くのは良いけど、2人の事を思うならたまには遊んであげなさい」と言われた。ルドじぃの言う通りこの頃アーシャとミーシャに構ってあげてない!と痛感した。


私は皆からの気遣いに甘えてお休みを頂き「村の近くに花畑があるからそこで思いっきり遊んでおいで!」と村の皆から聞いた私はアーシャとミーシャを連れて村の近くにある花畑を目指してお出掛ける事にした。


「るぅ~♪おでかけ♪おでかけ♪ママとおでかけ~♪」


「えへへ♪お母さん、今日はいっぱい遊びましょうね!」


「ミーシャも!ママといっぱい遊ぶ!」


終始楽しそうに笑いながら私と手を繋ぐアーシャとミーシャに自然と私も笑顔になる。ウチの娘たちマジ天使!かわええなぁ…♪


「もちろんよ!お弁当も沢山作ったから楽しみにしててね♪」


「「わ~い!」」


大喜びするアーシャとミーシャの姿に私は2人の可愛さに顔がニヤけご満悦だった。


仕事と手伝いと家事で毎日が忙しく2人に構ってあげれなくて寂しい思いをさせてしまった分、今日はアーシャとミーシャが満足するまで遊んであげようと思った。


(休みをくれた皆に感謝しないとね!明日お礼に感謝を込めたお菓子を送ろう!)


私は村の皆に改めて感謝した。でなければアーシャとミーシャがここまで大喜びするはずがない。またには息抜きも大事だと改めて実感した。


「本当に絶好のお出掛け日和ねぇ♪ね、アルカ!」


「そうですね。サナリアお嬢様」


家族団らんの楽しい雰囲気を壊すかのように私達の後ろをさも当たり前のように笑顔で付いて来るサナちゃんに私はジト目を向けた。


「なんで当然のように私達のあとを付いて来てるの?」


「ふっふっふ、そんなの決まってるじゃん。友達だからだよ!」


親指を立ててドヤ顔をするサナちゃんに私は頭が痛くなった。サナちゃんと友達になった事をちょっとだけ後悔したかも…。


「私はお嬢様の付き添いですから…」


「じゃぁ、アルカさんだけお弁当とデザートは無しで良いのね?」


「申し訳ごさいません!ルナ様のお弁当とデザート目当てに付いて来ました!」


シュバッと地面に頭を擦り付けて土下座するアルカさんに私は主人も主人なら侍女も侍女だなぁ…と深いため息を吐きながら思った。


「ていうか、サナちゃんはソフィアさんとカナちゃんの2人と一緒に商会へ行かなくてもいいの?」


「うん。だって私は一切関わってないし、仮に商談に参加しても話を聞く程度しかできないもん。本当なら私よりルナちゃんが参加しなくちゃいけないんじゃないの?」


「別に興味ないわね。生活が楽になればそれで満足だし、利益とか別に要らないもん。その代わり欲しい素材等があった場合は譲って下さいとは言ったけどね」


「ルナちゃんは一人で何でも出来るからねぇ…。そのおかげでお父様とお兄様はルナちゃんが作った冷凍庫とお風呂で一儲けするし、お母様とお姉様は衣服と下着に感動して新たな事業を始めちゃうし…、こっちもこっちで色々とバタバタしてるよ」


サナちゃんは遠い目をしながらあの時の事を思い返していた。私も「無理もないね…」と呟きサナちゃんに同情した。


この頃、生活している中で思ったことがある。それは下着の不便さだ!通気性は最悪で汗をかけば肌にピッチリくっついて気持ち悪いし、布ずれのせいで汗疹はしょっちゅうできるし、そして何よりダサい!


その結果、さすがの私も我慢の限界だった。女の子にとって必須品の下着がこんなザマじゃ目も当てられない!そう思った私は善は急げと言わんばかりに前世の記憶を頼りにしながら上げに上げまくった裁縫スキルの力を使って下着を作った!作りまくった!意外とサイズを測らなくてもピッタリと合ったのにはちょっとビックリした。


私、アーシャ、ミーシャ、そしてサナちゃんとアルカさんの分の下着を作ってあげた結果、ソフィアさんとカナちゃんとその他の女性陣が私の家に殺到。私が作った下着にひどく感動した女性陣は外に干してたアーシャのパンツを手に取り天高く掲げると「私達…、女性にとって革命的な下着よぉぉぉ!」と大興奮して叫び崇め称える姿はかなりドン引きだった。ちなみにアーシャは自分のパンツが崇められてる様子に恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして悶えてた姿はすごく可愛かった。


それからソフィアさんとカナちゃんを中心とした村の女性陣は下着革命が起こそうと躍起になり独自の事業を立ち上げた。私は数着ほど下着をソフィアさん達に譲るとそれを見本として製作に取り掛かった。失敗を何度も繰り返し私からの助言を貰いながら試行錯誤した結果、独自で私が作った下着とまったく同じ物の下着を完成させた。恐るべし女の意地!


そして「ソフィアランジェリー」という名でお店を開き村の女性陣が意地と情熱で作った下着を販売したところ爆発的に売れ売れまくった。下着の機能性はもちろんの事、見た目の美しさに心を奪われた女性たちは波のようにお店に押し寄せると販売してものの数分で即完売した。いまでは開店前のお店の前に長座の列が出来るほど人気で女性の間では「ソフィアランジェリーを持たぬ者は田舎者!」と言われるほどソフィアランジェリーの名は世間に大きく知れ渡るほど有名店へとなっている。(現在進行形)


「さぞかしベルド男爵とソフィアさんはウハウハでしょうね」


「うん、お父様もお母様も毎日忙しいみたいで家にほとんど居ないよ。それと「ルナ様、ありがとう!」って物凄く喜んでたし、あと「また何かあれば呼んでね!」だってさ」


「あ、そぅ…」


2人が満面の笑顔で親指を立ててる光景が目に浮んだ。だけど、今のところは何も作る物がない。また生活する上で何か必要になるものがあった場合は作るけど、当分の間は娘たちと平穏に過ごせると思う。…マジで思いたい。


「あ!お母さん、見えてきましたよ!」


アーシャが指を差した方に視線を向けると色彩りの豊かな花が咲き誇りまるで絨毯のように辺り一面に咲いていた。あまりに綺麗な景色に私は目を奪われ言葉が出なかった。


「………きれい」


「ふふふ。この場所は村では有名な絶景ポイントなんですよ!」


「なんで教えてくれなかったの?」


「うっ…、だ、だってぇ…、ルナちゃん毎日忙しそうにしてるから教えるタイミングが無かったから。……ごめんなさい」


サナちゃんにジト目を向けるとサナちゃんは申し訳なさそうな顔をした。サナちゃんの言う通り毎日多忙の私に教えるタイミングなんて無かったも当然か。


私はサナちゃんの頭にポンと手を置いて「冗談よ。こっちこそごめんね」と謝った。すると、「ルナちゃん好き!」とサナちゃんがいきなり私に抱きつき頬擦りまでしてきた。その様子を見ていたアーシャとミーシャから僅かに殺気のようなものを感じたけど……。き、気のせいよね…?



花畑で私達は思いっきり遊んでいたのだが、やはりルーナフェシナちゃんの体ではすぐに限界を迎えた。かくれんぼとおいかけっこだけでこのザマとは…。ちょっとは体力に自信がついたと思ったのに情けない。


私以外の皆はまだ元気よく走り回って遊んでいる。私はというと休憩がてら1人で花飾りを作っていた。昔はよく作ってお母さんにプレゼントしたなぁ…。


黙々と花飾りを作っていると先ほどまで走り回って遊んでいたアーシャが「お母さん、何作ってるのですか?」と聞いてきた。良く見ると皆私のそばにやって来ては私が作るものに興味津々の様子だった。


「花飾りだよ。はい、完成っと!」


私はアーシャを手招きして膝の上に座らせると髪を編んで白と青の花で作った花のかんざしを留め具代わりに刺した。


「はい、出来上がり!」


「うわぁ~♪ありがとうお母さん!」


「うぅ…、ママ、ミーシャのは!?」


「ちゃんとあるよ♪」


私はミーシャに白と赤の花のかんむりを頭の上に乗せ、腕に黄色もピンクの花のブレスレットを付けてあげた。


「はい、お姫様の出来上がり~!」


「るぅ~♪ママ、ありがとう!」


「ふふ、どういたしまして」


「ルナちゃん!私の分は!?」


目をキラキラと輝かせながら迫るサナちゃんに私は「……ない」と答えるとガーン…!と肩を落として落ち込むサナちゃん。私はクスクスと笑いながらサナちゃんの頭に青と紫の花のカチューシャを付けてあげた。


「似合ってるよ、サナちゃん♪」


「る、ルナちゃぁん…、ありがーーぶへぇ!?」


抱きつこうとしたサナちゃんをアーシャとミーシャが「ダメぇ~!」と言ってサナちゃんを叩き落とした。我が娘ながら容赦ない…。


アーシャとミーシャから「作り方を教えて!」とお願いされた私は花のかんむりの作り方を教えてあげた。皆で花のかんむりを作ってる間にお昼を迎えたので、「そろそろご飯にしよっか!」と提案すると皆大喜びで賛成した。


一本の大きな木の所で布を広げお弁当やデザートが入ったバスケットとコンソメスープが入った水筒。そしてオレンジジュースと紅茶とコーヒーがそれぞれ入った水筒をポーチから取り出した。


今日のお弁当はサンドイッチ、唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダだ。お弁当の蓋を開けた瞬間、アーシャとミーシャは目をキラキラさせながら「唐揚げさんだ~!」と尻尾をブンブンと凄い勢い振り大興奮している。


「ママ、食べていい!?」


「ふふ、どうぞ。慌てずゆっくり食べてね?」


「はーい!いただきます!」


アーシャとミーシャは真っ先に唐揚げを手に取りパクっと一口で食べると幸せに満ちた顔でご満悦の様子だ。2人の美味しそうに食べてる様子に私は自然と笑みが溢れ幸せでいっぱいになった。


水筒に入ったコンソメスープをコップに注ぎ皆に配っているとサナちゃんが「あ、そうだ」と話を切り出した。


(お米に関しては商人の人達に頼るしかないし、私も出来るだけ猟師の仕事をしながら稲を探そうっと)


「ルナちゃん、二週間後に学園の二学期が始まるけど、どうするの?」


「どうって…、私は行かないわよ。村での仕事もあるし、家事や育児とやる事がいっぱいあるもん。それによくよくは家の改築をやる予定もあるし」


学園へ行って無事に卒業を迎えれば将来安定した役職に就く事が出来るらしいが、意外と自給自足でも十分な生活ができてるから今のまま満足だ。


「今後のことを考えるなら学園へ行ったほうが良いと私は思うけど…。まぁ、ルナちゃんが決めることだし、私からルナちゃんに対して何か言うことはないよ」


「悪いわね、サナちゃん…」


私に気を遣ってくれるサナちゃんに私はお礼を言った。


サナちゃんたち家族の事情は大体知っている。こんな辺境の片隅で農業を行ってるベルド男爵たちは他の貴族たちから「農業貴族」とバカにされてる事。サナちゃんも学園や社交界などで「田舎令嬢」と呼ばれては辛い日々を送り友達が誰一人おらず孤独だった。


そんなサナちゃんの力になってあげたいのは山々だが、アーシャとミーシャ…幼い2人を家に残して学園へ行く訳にはいかない。どうにかしてあげたいけど、こればっかりはどうにもならない…。


「ルナちゃんが気にすることなんてないよ!帰りたくなったらすぐにでも帰ってくるよ。その時はうんっ…と!私を慰めてね♪」


明るく笑うサナちゃんに私は「ええ、もちろんよ!」と同じく明るい笑顔で返した。サナちゃんが強がってる事はすぐに分かった。私は胸の奥がズキッと痛むのを感じながらサンドイッチを一口噛み締めるように食べた。ホント…、こうゆうときの私って無力で嫌になる…。

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