第40話 天光の勇者
茜色に燃え盛る街の中、大量に存在していた魔物が日光、月光、彼らの援護によりものの1時間ほどで消えて行った。
日光はリオを抱えるとその足でバフラードへの避難道へ向かった。その道中、月光と目を合わせお互いが頷きながら無言で通り過ぎていった。
いくらかの距離を走っていると、目の前に街の人を避難させている彼女を見つけた。
「キャロ!!」
そう言って日光はキャロの元へ向かう。キャロはぐったりとしているリオを見ると驚いて駆け寄り、治癒魔法を唱えた。
表面の目立つ傷は少しずつ回復してゆき、リオ意識を少しずつ取り戻していった。
「んっ・・・!?こ・・・ここは・・・えっ!?に、日光師匠?なんでここに!?」
「何かあるといけないから、検問の外の近くの村で待機してたんだよ。まぁ、待ってて正解だったな。とりあえずは今度はルナを助けに行く、どの辺りにいるんだ?」
「あ!?日光師匠!!ルナが・・・ルナが・・・」
リオの言葉に被せるように日光が言うと、その言葉で我に返ったリオは日光に対して焦ったように伝えた。
日光はそれを細かく聞くと少し間をおいて拳を握りしめ地面に叩きつけた。
それをみたリオとキャロは驚きを隠せなかった。
「クソッ・・・クソッ・・・なんでガルゼン渓谷で動きがあるって分かった時に気づかなかったんだ!!これは俺達の失態だ!!リオ、キャロ!!お前達は一度休め。後は俺達がなんとかする。あと・・・隠れてねぇで出てこい。テメェの魔力がビンビン漂ってるんだよ、なぁエンランド!!」
日光がそう言うと、道沿いにある木々の中から1人の男が出てきた。
それはキングダムのエンランドであった。リオとキャロはそれを見て身構えたがその前に日光が割って入った。
「久しぶりだなぁ・・・日光さんよぉ~~~」
「相変わらずだなエンランド、脳天逝ってるくらい定まってねぇな。まぁ、それはともかく・・・俺の教え子の1人を返してもらおうか!」
「あ~?ざんねん。アイツは俺には関係ねぇからなぁ~、そんなことよりそろそろ俺と決着つけようぜ!なぁなぁ」
「ちっ、めんどくせぇ・・・なら、全てを照らし…光となりて闇を打ち消す!天光の勇者 日光!!さぁ、2代目剣聖のチカラ見せてやる・・・」
会話をした直後、二人の姿が消えた。だがそれは消えたのではなく普通の人間だと目視することもままならないほどの速度で攻防を繰り返していた。
リオとキャロの二人も目で追いつくのがやっとの状態でただ見ていることしかできなかった。
「凄い、エンランドは前に私達が戦った時より全然、強い・・・あの時は、本気じゃなかったの・・・?」
「こ、これが・・・前の大戦を戦い抜いたM'sKの勇者の実力・・・」
二人は剣と剣の鍔迫り合いながら、一定の距離を保ちながら更に激しい攻撃をしていた。
そしてそれを見ていたリオはあることに気づいて背筋が凍った。
「キャロ・・・エンランドが・・・笑ってる。」
キャロはその言葉を聞き、彼の顔をマジマジと見ていた。
そしてやはり笑いながら戦っている顔を見て彼女は恐怖を感じた。
「そろそろ息が切れてきたんじゃねぇか?日光!!」
「へっ、てめぇの方が虫の息だろうが!そんな生ぬるい剣技で俺を倒せると思うな!!!!」
そう言いながら再び剣を交えながら攻防が続いた。
いつの間にか街の火災は鎮火し、リオの隣に月光が合流してきた。
「月光師匠・・・日光師匠が・・・」
「大丈夫ですよ、リオ・・・見てなさい、M'sKの勇者の称号を持つものの実力を」
そして二人が一定の距離を保ったまま動かなくなる。
夜の闇が少しずつ明るくなり二人の姿がゆっくりと見えてくる。
二人は【その時】を待っていたのであろう。
「決まりましたね」
月光がそう言うと、一瞬の間にお互いのいた場所が逆になった。
そして1人の男の身体から大量の血が吹き荒れた。
「くそっ、もっとお前と楽しみたかったのによぉ・・・なぁ、日光!!」
「エンランド・・・確かにお前との戦い、悪くなかったよ・・・でもな、人が死んでる戦いの中で、楽しむ事はできねぇよ、今度はちゃんと・・・」
闇夜が過ぎ去り、朝陽が昇理始めた頃、エンランドは粒子状に分解され、そして天に向かって消えていった。
「今度はちゃんと、俺と楽しもうぜ」