第38話 狙われた彼女
炎が舞い上がり、茜色へと変わっていく街の中でたくさんの魔物が街を破壊していた。
逃げ遅れた若い夫婦がゴーレムに襲われ、巨大な腕が二人を襲おうとしていた。
「きゃああああああ」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
老夫婦の叫びに合わせるように拳が二人めがけて飛んできた。
すると突然、その拳からゴーレムの身体が2つに分かれて倒れた。
「ハァ、ハァ・・・なんとか、間に合った。二人共、早くあちらの道をに向かって走ってください。避難ルートを作ってあります。」
ゴーレムを倒して後ろから現れたリオは二人に対して、そう叫ぶと若い夫婦は避難をしていった。
そこへ向かっていこうとする狼型の魔物達に対して剣技使い排除をしていった。
「ふぅ・・・今見えるだけで、ゴーレム10体に小型系の魔物が50体か、きっつ!・・・でも、やるっきゃない!」
そう言いながら、目の前にいる魔物達に向かって攻撃をしていった。
何箇所かダメージを受け、身体中から出血をしながらも1体ずつ確実に倒していった。
キャロも、カード魔法で防御壁を作りながら街からバフラードへ避難誘導をしていた。
「早く!!こちらの道を使ってバフラードへ避難してください。近くまで行けばバフラードの方達が受け入れをしてくれます!!(はぁ・・・リオ姉、ルナ姉、無理をしないでね・・・)」
避難誘導をしている中で襲ってきた魔物に対してキャロも防御魔法を利用して撃退していた。
避難路を中心に火災を水属性魔法を使い、ルナは消火活動を行っていた。
火が回りが早く、全体を消化するのが難しく出来るだけ人の集まりやすい場所を中心に動いていた。
「あっちも、こっちも・・・きりがない!しかも魔物もちょこまかと・・・一体何が起こってるの!!」
消化をしながらも、襲ってくる魔物を出来るだけ火災に影響を与えないように水属性魔法を利用しながら攻撃をしていった。
2つの事を同時に行っていた最中、ふいをつかれ後ろからいきなり魔物が襲ってきた。
気づいた時にはギリギリの状態となっており、対応しきれず肩を魔物に噛まれた。
痛みを堪えつつも襲ってきた魔物を退治したが、出血が激しくその場に膝をついた。
「くっ・・・つっ・・・傷をなんとかしないつっ・・・」
そう言いながら力を弱めた炎魔法を使い傷口を焼いて出血を抑えた。
一息をついたが、いつの間にか周りには魔物が群がっていた。
「これは、キツイか。あ~~~!もうちょっとしっかりやっておけば良かったかな・・・でも、しょうがないよね・・・リオ、キャロ、バイバイだ・・・」
そう言い終わるか終わらないかのタイミングで魔物たちが一斉にルナに向かって襲いかかった。
ルナは、目を瞑り歯を食いしばって覚悟を決めた。
だが、そこからいつまで経っても何も起きなかったため、目をゆっくりと開けた。
すると1人の男が魔物を倒していた。
「え・・・どうして、アルフレア様・・・」
アルフレアは、襲ってきた大量の魔物を一瞬で殲滅していた。
彼は笑顔で再び集まってきた魔物に対し、魔法を使い複数体ずつまとめて倒していく。
ルナはそれを唖然と見ていた。
そしてわずか数分でその場にいた魔物達は全て倒されていた。
「この辺りの魔物は大丈夫そうですね。ルナ様、桶がは大丈夫ですか?」
「え、えぇ、少し肩を出血したくらいです。アルフレア様ありがとうございます。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。とりあえずここから早く避難いたしましょう。」
アルフレアは、そう言うとルナの手を掴み歩こうとしたが、向かおうとした先が避難先とは別の方向のため、彼に対しバフラードへ向かう様に伝えた。
「アルフレア様、そちらはまだ危険です。バフラードへ向かいましょう。」
「大丈夫ですよ。私に付いてきていただければ・・・」
「ですか!?グッ・・・!?」
話をしていた直後、ルナの腹部に強烈な衝撃が走った。
そこにはアルフレアがルナの腹部に対して拳を埋めていた。
「っが・・・!?・・・アルフ・・・レさ・・・?・・・ど・・・ぅ・・・し・・・」
言葉が終わる前に、アルフレアは睡眠魔法をを使いルナは意識を失った。
倒れそうになる彼女を抱きしめ持ち上げる。
「ルナ様・・・やっと私のもとに来ていただけましたね。」
そう微笑むと、彼女を抱いたまま先程の方向に向かってゆっくりと歩き始めた。
「ルナ!!」
歩いていく彼に、リオが息を切らしながら叫んだ。
身体中が傷だらけで血を流しながらも、彼に向かって更に叫んだ。
「お前はっ・・・一体誰だ!!ルナをどうする気だ!!」
その言葉を聞くと、アルフレアは不敵な笑みを浮かべながら怒号のような声で叫んできた。
「クッ・・・ククク・・・クファハハハ!!黙れ下民!!キサマのようなヤツはワタシと話すことすらおこがましいーーー!!だ・が・・・いいでしょう・・・ワタシはこのゼンメルを統べ、貴族至上主義の理想を掲げるも~の・・・アルフレア・クレアリス!!♪~~~~~~♪そして・・・・・・」
狂ったように発した言葉の後に、彼は鼻歌を歌いながら顔つきを変えた。
それは茜色に燃え盛る街並みを闇で染めるような邪悪なオーラを纏っているようであった。
「キングダム、オリハルアン殿下に仕える三甲魔が1人、魔心のアルフレア・・・どうぞお見知りおきを・・・」