斯くして物語は始まりを迎える。
初投稿です。クトゥルフの二次です。はい。
本当にいつからこうなったのだろうか...
上司の責任を押し付けられて仕事を辞めさせられたときからか?もっと昔だったか?もしかすると人格が形成され始めるときからかも知れない。いつから顔から笑顔が消えていったんだっけか。でもまぁ
「無事で良かっ...」
ポツリと男の口から出た言葉は周囲の人の耳にも届く事無く、けたたましいトラックのブレーキ音に掻き消されていくのであった。助けられた女はただ呆然と男が轢かれていく様を見つめ、言葉を失いその場に座り込むのだった。
その数日後、彼の葬式が行われた。享年31歳であった。
「と言うのが貴方の最後です。」
そう目の前に、佇む女性は言った。貴方は人生最後の瞬間を思い出せないようだ。彼女は続けてこう言う。
「貴方の様に最後の瞬間を思い出せない人って多いん です。」
そう言うものなのか。と貴方は思う。
「何故、この様な場所に貴方はいるのか。そう思われ ますよね?」
彼女はそう貴方に問い掛ける。貴方はそれは確かにと答えた。
「実は私こう言う仕事をしてまして...」
そう言うと彼女は何処からか名刺を取り出し、貴方に渡してくる。そこには『人材派遣会社*☆$~ 人事部 主任 アル』とだけ書かれたものがあった。貴方は戸惑った。それを見た目の前の彼女アルは更に説明を続けた。
「私どもの会社では若くして亡くなられた方々を対象 に異世界への転生、即ち別世界への人材派遣をして おります。」
貴方は顔をしかめながら困惑していた。彼女の話はそのまま続けられた。
「しかし、貴方は魔力も超能力のない世界の方。その ため、転生にひとつ特典を差し上げます。」
貴方は彼女がそう言うと一言、転生するつもりはありませんと告げた。彼女は驚いた顔をしたが、その後こう言った。
「困りましたね...貴方の場合ですと生前に為された 罪も善も完全に五分五分で、天国とも地獄とも決定 のしようが無いのです...」
貴方はそうなんですか...と内心、天国にも地獄にも行けないことを悔やみながらそう言った。しかし、行けないものと分かれば話は変わる。貴方はそう考え、彼女に特典について質問した。
「特典としては貴方がお好きなものをひとつだけ何な りと。そして、オプションとして魔力のある新しい 体それにともない異世界の言語を理解して頂くため に知識を少々脳に刻みます。更に基本的な肉体の能 力値の底上げとなります。」
そう彼女は言って特典の説明を終えた。貴方は好きなものと言われると回答に時間を要さなかった。貴方は即答した。クトゥルフ神話。その魔術を習得したいと。彼女は目を見開きながら言った。
「それでよろしいのですね?」
と貴方は首を縦に振る。彼女は更に話を続けた。
「分かりました。それでは特典はクトゥルフ神話その 魔術の習得。では、それについては貴方の頭の中に 総ての魔術の呪文及び陣を刻むことで特典の受け渡 しを完了致します。また、必要な魔術書については 貴方が異世界に到着された際、貴方にこれからお渡 しするものの中に全て入れておきます。」
そう言って彼女は貴方に指輪をひとつ渡してくる。
「それは貴方が魔術書が必要だと思われた際に効力を 発揮し、貴方の手元に魔術書を呼び出すものになり ます。ですが、異世界には物を入れておく事の出来 る魔法も御座いますので、それを覚えるまでの間使 われるものになるかと思います。」
成る程と貴方は思う。
「それでは最後に貴方の今後の人生が幸多からん事を 願っております。」
彼女は笑顔でそう言った。有り難う御座いますと貴方が一言、お礼を言うと異世界へと転生した。
後程、2話目の後書き位で主人公のステは公開します。