第三話 誘い
前回までのあらすじ
倒れた俺が入った病院で車椅子の女の子に宣戦布告された。そして、その女の子こそシオリだった。
シオリとの戦いを終え、2日後俺は退院した。
「やっと、家に帰れるーー。ここの飯は不味かった。」
独り言を言っていると、
「なら、私が作ってあげようか、メーグ。」
ノックもせずにシオリが俺の部屋に来た。とりあえず言いたい事はあるが、まずは置いておこう。
あの対決以来シオリは性格が変わった様に喋る様になった。
「とりあえず、シオリ。言いたいことがあるが。言っていいか‼︎」
すると彼女は
「いいや、ダメよ。あなたは考えてる事が分かるから別に言いたい事でもないでしょう。」
とりあえず、彼女に言われる前に言うがノックをしろと言いたかったのだが。
「とりあえず、ノックをしろでしょう。」
うん、こいつ俺が考えている事分かっていやがる。まあ、しかし家に帰れるのはいい事だ。すると、シオリが
「ねえ、メグ。私ともう一度パーティを組んでくれない?」
シオリからまさかの誘いであった。しかし、俺は
「嫌なこった。お前とやると絶対酷い目にあう。」
しかし、俺は忘れていたこの女の辞書には引き下がると言う文字が無いことを、
「メグ。もう一度言うわよー。パーティを組みなさい‼︎」
「はい…。喜んでやらせていただきます…」
と、彼女はオレの服の襟足を引っ張って怖い顔をしていた為、渋々了承してしまった。
それから数日…
俺はなぜか、ボス戦ばかりさせられていた。
「シオリの奴…‼︎次、頼まれでもぜって。組むか‼︎」
そう心で誓って何回になるのであろうか。だがしかし、今回こそは断ろうとアイツの部屋に行くと、
「まだ、こんなものをやっていたのか‼︎おまえは、治すことだけ専念しろと何回も言っただろう‼︎」
という怒鳴り声が、多分彼女の父親ですあろうか。しかし、言っていることが一つ一つムカつくな。ゲームをこんなものて、ゲームのなんたらかも知らなそうな人がゲームを語るんじゃねよと思いながら待つと。
「いいか‼︎今度そんなモノをやっていたら。没収するからな‼︎」
言い放って、俺が居ることにも気付かず素通りしていきやがった。なぜか、シオリよりあの父親に俺はどうやらムカついてしまったようだった。その為、
「おい‼︎なんだあの父親は‼︎ゲームのなんたるかも知らねのに、ゲームを馬鹿にしやがって‼︎どう思うお前は‼︎」
と、怒られていたシオリに対してまた叱ってしまった。それを聞いていたシオリは一旦は、びっくりしていたが、直ぐに笑い出した。
「メグ。貴方、盗み聞きしてたわね。別にいいだけど。それにしても恥ずかしいな…聞かれると。」
悲し顔をしていた。聞かれたからでは無いであろう。
「ねえ、私こう見えて後先が短くて、いつ止まってもおかしくないんだ…心臓。」
彼女は、苦笑いしながら自分の病名や病気で起こった出来事などを俺に話してくれた。
「だから、お父さん。私の為にああいうだよ。別にゲームが悪いとか思ってないと思う。けど、私が…私の中の爆弾がいつ破裂してもおかしくないからあんなに必死なんだよ。」
だが彼女はこうも言っていた。
「いつか、この病気が治ったら外を見てみたい。私、小学生の1年生からここに入れられててそれ以来外に出てないの。だから、外が見てみたい。」
俺は、ふと考えていた。どうすれば救えるか…いや、俺には救えない。天才でも無ければ俺はただのゲームの上手い子供でしかない。けど、
「いつか、外が歩けるさ。だから安心しろよ。」
希望的観測しか言う事が出来なかった。
・
「ペイン。お前何を考えている…。春間の二の舞いにしたいのか…恵夢を。」
俺は、ペインの意識の入ったリーゼデバイスに話をかけた。返事が返ってくることはなかった。
「お前は、何がしたい?お前自身がアイツを戦場に駆り立てようとしている様に見える。それほど、世界は平和じゃないのか。答えろ‼︎」
また、返っては来なかった。俺は諦め部屋を出た。
「ああ、平和じゃないさ…だから、アイツを守る為のチカラが必要なんだ。リーゼンの力がな。」
・
シオリの病室での一件から数日が経ち、やはりシオリはゲームにログインしていなかった。
「やはり、ダメだったか。それにどうすればいいだろうな…。」
俺は、シオリを思い出す度に直す方法ばかりを考えてしまう。医者ではない観点であれば色々とある。しかし、現在ではIPS細胞など色々な治療ができるため直ぐに治せそうにも思うが…
『私、手術が出来ないぐらいボロボロらしいだ…。だから無理らしいよ。』
俺はどうすればいいのか分からなかった。何も出来ない事がここまで歯痒いものだとは思わなかった。
「俺は、弱すぎるんだよ…。」
・
「どうにか。娘を救う手段はありませんか。蒼馬先生。」
スーツを着た男は俺にそう言った。
「分かっています。しかし、私たちの医療にも限界があります。」
そう、俺は彼に言った。そう、今俺はある特殊な患者の担当をしている。彼の娘である。その彼女はもうかれこれ十年以上担当している。
「それでも、私は娘の苦しむところを見たく無いのです。」
痛いほどわかる。俺にもそう言う経験があるからだ。俺の近くにいる人間が苦しむ姿を見ることを。それに、俺にも年の近い娘がいるだから治してあげたいとは思うがしかし、
「彼女の体はどう言うわけか、手術が出来ないのです。しかも、誰かに邪魔されているようにとしか思えないのです。」
何を言っているか分からないかも知れないがそれ以上に俺が最も分からないのである。多分なのだが誰かではなく何かの力によってだが。しかし、そんな力は今や存在しないはずなのであるただ一人を残しては。
「今のところ、何も手がないのが現状です。けれど、どうにか出来るように尽くします。」
救える命を絶対に救いたい。それが俺がいや、俺たちがあいつを見送ってしまった後悔をまたしないように…
・
「ねえ、メグは学校に行っている?」
シオリは俺に突然聞いてきた。なんでだと聞くと、なんとくなくと言われてしまた。俺は、少し考え、
「行っていないな。大半をゲームに費やしているからな。」
彼女は、笑ってやっぱりと言われてしまった。
彼女の病室に通い始めてもう、一ヶ月が経とうとしていた。彼女の病気は悪化しているのか良くなっているのか分からないぐらいシオリは俺の前では笑顔を絶やさなかった。それが、俺にとっては眩しく見えた。
「なあ、お前はどうしてそんなに笑顔で居られるんだ?」
すると、彼女は分からないと答えたがまた、こうとも言っていた。
「分からないけど、それでも君がいる時は元気が出るからだから元気で居られる。」
俺は、その言葉を聞き無意識に
「そうか。なら、俺も笑わなくちゃな。」
と、微笑みかけた。それから、数分の沈黙が続いてしまった。それにたいかねた彼女は俺にある話をした。
「ねえ、メグはさ。このゲームの名前知ってる?ゲームオブワールドて名前。」
初めて聞くゲーム名であった。俺も余りいつものソードオブワールド以外やった事が…無いため知らなかった。
「そのゲームがね。世界で最初の拡張現実ゲームみたいなんだって。しかも、あらゆるジャンルのゲームを取り込んだゲームらしいからメグも出来るかもよ。」
なんだこのバカにされた感覚は、まあ気にしないで聞いていた。
「拡張現実て事は、スマートグラスを用いるゲームてことか。」
流石の俺でも拡張現実が分からないわけではない。今でこそ一、二年で主流になりつつあるスマートグラスであるがそれでもスマートフォンを使う人の方が少なからず多い。だが、スマホやグラスなんで実際はどうだっていいのだが、
「まあ、やるのは構わないけどなんでやりたいんだ?」
単純な疑問であった。やるにしても彼女には不向きにしか思えなかった。
「だって、ここは寂しいもん。」
なんとも単純な理由であった。まあ、予想しなかったわけではなかった。だだ、俺の考えが大凡合っていた。しかし、
「とりあえず聞くがどうやって、病院の外に出ようとしているんだ?」
するの彼女は目を逸らして、
「それは、メグに出してもらえば万事解…」
「しないぜ。そんな事は。」
「出してもらえ…」
「いや、だからしないからそんな事。」
なんとも考えていなかった事が見てとれた。俺は呆れそうになると、
「なら、この病院の敷地の中なら構わないでしょ‼︎」
なんと、諦めが悪いとしか言いようのない事を言い出したものだと俺は思った。だが、俺も俺で折れた方がいい時もあるため。
「わかった。その条件ならやってもいい。ただし、一回でも気分が悪くなったりしたら連れては行かない。わかったか?」
すると彼女は勝ち誇った顔をしながら
「いいわよ!やった。なら、明日から行こう。」
そう彼女に言われたが、俺はスマートグラスなんて持っていない為。何日間待ってもらうことに。そしてその日の夜
「親父、スマートグラス買ってくれない?」
そう、俺は言うと親父はお決まりのように
「理由は…理由はなんなんだ?」
俺は、一応理由らし理由を考えていたからそれを言ってみた。
「スマホとは違って目の前に映し出されるから電子部品の作業するのにはラクかなと思っただけで…。」
「なら買わん。本当の事を言え。本当の事を。」
と、言われてしまった。本音は言いたくないのである。女の子とゲームするためになんて。だが…
「本当は…本当は、ある女の子とゲームするために必要なんだ‼︎」
すると、親父は俺の頭を叩き
「最初からそう言え。バカやろ。」
そう言って俺を車に乗せメガネ屋に行く事となった。
「どのスマグラにするんだ?」
俺は、黒のスマートグラスにする事にした。そう言って次の日になった。
「ああ、眠い。設定がめんどくさかった…。」
昨日は徹夜でスマートグラスの設定をしていた。スマホとは変わらないところはあるが、画面が空中になったからか。反応が遅く感じてしまっていたため。その設定などから始め、全てが終わったのが夜の3時になっていた。その為、全く寝ていないのである。
「スマートグラスを付けてきたのはいいものの。余りにも慣れないな。とりあえず、病院に行くか。」
いつもの道なりも慣れない道に見えてしまう…気持ち悪いような感覚であった。
「気持ち悪すぎるわ…。」
いつもどうりにシオリの病室に入ると、彼女もスマートグラスを掛けていた。
「意外と早かったね。買うの。」
「で、なんなんだよ。そのゲームの名前は。」
すると、彼女はため息をつきながら
「ゲームオブワールドよ。ゲームオブワールド。」
俺は、これから後悔する後悔を止める事が出来なかった事を一生呪う事なった。