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挿話 レオンとの思い出③ 〜ヨーゼフ視点

2018.1.28

話の順番を入れ替えております。

↓↓↓ は反省の意味を込めて当時の後書きのまま掲載しています。



 本編と挿話のバランスが悪いとのご指摘がありました。

 実のところ、私自身もやっちまったな感が半端ないです。

 ヨーゼフについては、外伝を立ち上げればよかったなあと反省している次第です。


 ヨーゼフパートはこの話をいれてあと4話です。申し訳ありませんが、どうかそれまでお付き合いください。それ以降は、本編を進めていくつもりです。 




 すっかり歳を取ったレオンだが、まだまだ頑健であると思われていた。そのレオンが急に倒れた。

 医師の見立てだと、ガンが全身にまわったということだ。今までにも相当な激痛を感じていたはずだと医師は言う。しかし、レオンはそれを誰にも気取らすことがなかった。ヨーゼフ以外には。


「お目覚めですか、旦那様」

「ああ」

「つい先程までは、アドリアーナ様もベアトリーチェ様もいらっしゃったのですが、今は別室で休んでおられます」

「そうか」

「ご病気のことを、みなさんに知られてしまいました」

「そうか」

「旦那様の余命はあと半年。治療の余地がないそうです」

「そうか」


 レオンの反応は、あまりにも静かだった。すでに全てを知って、受け入れていたようだった。


 ヨーゼフは、おもむろに胸ポケットから3本のポーション瓶を取り出した。


「何だ?」

「悪魔が作った薬でございます」

「悪魔が作った……。それを聞くのは三度目か」

「はい。一度目は先の戦争で。二度目は私が見合いのために老化したとき。そして今回で三度目でございます」

「ふむ……。確かあの悪魔の名はルイスとか言ったな」

「その名は口にしないでください。彼は他人に自分の事を知られるのを極端に嫌いますので」

「そうであったな」

「彼はきまぐれで、おもしろいと思ったことにしか力を貸してくれません。前回の老化したいという希望は、彼のお眼鏡にかなった依頼でした。その時にお会いした時に、ついでにこちらのポーションをいただいたのです。戦時中に、どの司令官も欲しがったこの薬を、まるでただのおまけのように分けてくれました」

「それはお前だからだろう。悪魔と死神で、あの戦いの中、たいそう気があっておったではないか」

「彼のような本物の悪魔と一緒にしないで下さい。なにせ彼は、先の戦争どころかそのずっと前から同じ姿のままだというのですから。きっと今も同じ姿でしょう」

「ふむ。しかし、その悪魔のおかげであの戦いは勝てたのだがな」


 二人共、遠い日を思い出してしばし沈黙した。


「して、その悪魔の薬の効果は?」

「これは旦那様のお体を治す薬ではありません。その反対ともいえます。

 こちらの水色の2本は体力を限界まで回復させるポーション。紫の1本は魔力を人生の中での最大値に回復させるポーションでございます。

 これを飲めは、旦那様でもわずかな時間だけ、若かった頃の様に動けるそうです」

「ほう……」


 レオンの瞳は輝きを取り戻した。


「ただし、効果に比例して副作用もあります。効果が切れた後、体力、そして魔力の消耗が著しく、今の旦那様がお飲みになったら命を奪われるかもしれません」

「構わん」

「死んでも……よろしいのですね」

「お前だって、自分で飲むつもりだからこそ2本も用意したのだろうが。お前にできる覚悟を、わしができぬとでも?」

「私は死にはしませんよ」

「お前はあの悪魔が作った薬を飲むのは2回目だ。前回は思い通りに老化しただけで済んだが、今回はどんな副作用が出るか分からんのだぞ」

「私は死にませんよ。旦那様を、看取るのは私の役目ですから」

「そうか。がはははは」


 レオンの笑い声は軽く、まるで何も悩みがなかった頃のようだった。


「では、行くか」

「はい。参りましょう」


 レオンは力の入らない体をなんとか奮い立たせ、ベッド脇に立てかけてあった愛用の大剣を杖代わりにして歩きだした。

 



 二人は屋敷からそう離れていない、領兵の鍛錬所に来た。昼間は兵士たちが剣を振り、槍を突くその場所には今は誰もいない。空には満月と輝く星空だ。おかげで夜であっても、よく見える。



「さて、ポーションを貰おうか」

「はい。まずは体力を回復させるポーションからです」


 レオンはガラス瓶に口をつけると、一気に飲み干す。続いて、魔力を持っているレオンは続いて魔力のポーションも涼し気な様子で飲んだ。

 レオンは一瞬身震いして、その後、ガラス瓶を地面に投げつけた。ガラスが小さな欠片になって飛び散る。

 ヨーゼフは鳥肌が立つのを抑えられない。恐怖からか、喜びからか。

 ぶるりと大気が揺れた。


「おお、体に力がみなぎってくる」


 レオンの体は一回りも大きくなったようだ。貴族らしく後ろで結んでいた髪も、結び紐がほどけてライオンのたてがみのように膨らんでいる。


 続いて、ヨーゼフも飲み干す。

 腹の中から爆発が起こり、次々に手足に、頭に引火していくような激しい衝撃を受けた。体の密度が急に増え、万力に締め付けられているような苦痛が襲う。

 それをヨーゼフは、涼しい顔で耐えた。


「では旦那様、もうそろそろ……」

「うむ。では殺りあう(・・・・)とするか!」


 レオンは大剣を鞘からすらりと抜いた。そして、ヨーゼフもどこかから取り出した短剣をすっと横一文字に構えた。


「かしこまりました。旦那様」


 ヨーゼフはにたりと笑った。



おや、妙なところでルイスさんのお知り合い発見♪

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