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閑話 君の名は…… ミーシャ視点

 孫の方のヨーゼフの略称に関するお話です。たくさんの方が略称をかんがえてくださり、本当にありがとうございました。

 本当は、彼が本編で再登場するときに発表する予定でしたが、みなさんのご意見が嬉しくてついエピソードを書いてしまいましたwww

 ご提案下さった略称(作中で(※)がついているものです)はできるだけ使わせていただいたのですが、いくつか漏れているものもあります。私自身は気に入ったのですが、うまく練り込めませんでした申し訳ありません。


 耐え難い苦痛の中、目が覚めた。

 カーテンの隙間からこぼれる温かな日の光のおかげで、もう午前の遅い時間だということが分かる。


「はっ、私ったらこんな時間まで寝るなんて!急いでお嬢様のところに行かなきゃ!」


 急いで掛け布団をはねのけようとして、代わりに悲鳴がこぼれた。いや、一旦はこぼれた悲鳴だが、すぐに収束する。悲鳴を上げるのでさえ、苦痛だからだ。



 なんとか身支度を整えて、お嬢様の居室へ向かう。すれ違う使用人仲間には、心配そうな顔をされるが、手出し無用と先を急いだ。

 お嬢様はご自分の居室で、優雅に紅茶を飲んでいらっしゃった。私を見て、目を丸くする。おどろいた顔のお嬢様も可愛らしいです。


「ミーシャ、あなた、今日はお休みして構わないのよ」

「いいえ、大丈夫です。私はお嬢様の近くにいたいんです。お嬢様の紅茶は誰が入れたんですか?私の仕事なのに」


 お嬢様は呆れたように小首を傾げられました。


「大丈夫よ、あなたの仕事は誰も奪ってやしないわ。これは私が自分で入れたの。でもあなたが入れてくれたものが一番おいしいわ」

「おかわりは、私がお入れします!」


 ティーセットに近づこうとして、ビターンという大きな音をさせて転んでしまいました。うーーーー、お尻がすーすーします。スカートが腰までめくれ上がってしまいました。


「ミーシャ、無理をしないで。今日はひどい筋肉痛で動けないはずよ。今日くらい、休んでちょうだい」

「嫌ですーー!お嬢様と離れたくないんですーーーー」


 お嬢様は苦笑いしながら、私のスカートの裾を直し、椅子に座らせてくれました。お嬢様の動きもだいぶぎこちないです。


「お嬢様も筋肉痛ですか?」

「そうね。でも、あなたのほうがひどそうだわ」


 昨日は、お嬢様が作るお薬の素材を採取しに山へ行きました。その最中、私たちは見たこともないようなスライムの大群に囲まれてしまいました。幸いにもお嬢様は無事に逃げおおせましたが、私は……、思い出したくもありません。ともかく護衛のアランさんのおかげで無事に帰ることができました。

 私も自分の身を守るために、死にものぐるいで枝を振り回していました。そのツケで、今朝からひどい筋肉痛になってしまったのです。


「昨日の夜に渡した入浴剤は使ったの?」

「その……いいえ。使用人のお風呂は、男女別ですが共同なんです。それで……」

「ああ、確かにひどい色と臭いだものね。ごめんなさいね考えが足りなかったわ」


 それだけでなく、お嬢様からもらった物をもったいなくて使えなかったというのもありますが。


「でも、これじゃ明日になっても使い物にならなそうね」

「私なら大丈夫です!っいてて」


 勢い込んで答えたら、体中から悲鳴が上がりました。


「そうだわ。お風呂に入りましょ。私の部屋の続きのお風呂なら、入浴剤を入れても問題ないわ」

「いいえ、とんでもない。私がお嬢様のお風呂に入るなんてめっそうもない」


 お嬢様は私の腕をぽんと叩いた。


「うぎゃ!」

「ね、入りましょ。お風呂の準備は私が魔法でするから、すぐに入れるわ」

「でも……」


 なおも断り続ける私に、お嬢様は残念そうに呟いきました。


「そう。残念だわ。私も、一緒に入りたかったのに……」

「入ります!ええ、もちろんご一緒いたします!」

「そう?」


 不思議そうに小首を傾げるお嬢様。

 くーーーー、この小悪魔め!



☆☆☆


 猫脚のバスタブに、向かい合わせに入りました。残念ながら深緑に濁った水面の下を見ることは出来ませんが、足を伸ばすとお嬢様が足を絡ませてきました。


 はっ鼻血がーーー!


「大丈夫?入ったばかりだけど、もうのぼせちゃった?血行が良くなる入浴剤を使っているけれど、効きすぎかしら?もう上がる?」

「だ、大丈夫です。まだまだ行けます!」

「そう?無理はしないでね」


 お嬢様の高いところでゆるく束ねた髪の毛から、何筋かこぼれて首から肩に流れています。そして肩からまだ平らな胸の方に……。

 ごくり。


「ミーシャ?」

「ひゃいっ!」


 あーー、びっくりしました。このままでは、怪しまれます何か話題を……。そうだ!


「あ、あのお嬢様。山でのことなんですが……もしかして怒ってらっしゃいましたか?」


 にっこりと笑顔になるお嬢様。あれ?笑顔なのに怖い。


「申し訳ありませんでした!」


 水面ギリギリまで頭を下げる。その頭の上で、ため息が聞こえた。


「まあ、ちょっと浮かれすぎていたあなたを見るのは辛かったわね。でも、あなたは自分で立ち返ったじゃない。さすがよ」

「はい……」


 私もあの時の自分の言動を振り返った時に、穴があったら入りたくなった。


「それにしても、よくあんなにスラ玉を集められたわね。大変だったでしょ」

「はい。でも、その時の詳細は思い出したくないので……」

「そう???」

「あの日は散々でした。スライム以外でも、あのバカ(※)のこともあるし」

「『あのバカ』って、孫の方のヨーゼフの事?」

「はい。あのバカでポンコツ(※)の孫ゼフ(※)です」

「孫ゼフって。普通に呼ぶならジュニア(※)とかじゃないの?」

「あんなの、バカヨーゼフで十分です!」

「そんなストレート過ぎるわよ」


 お嬢様は私をたしなめながらも、くすくす笑っている。


「『バカヨーゼフ』がストレート過ぎるなら、略してバカフ(※)とかバカゼフ(※)とかバーカフ(※)とかどうですか?」

「全然丸くなってないわ。そうね……バーゼフ(※)とかバゼフ(※)とかバフ(※)とかはどうかしら?文字を入れ替えてカバフ(※)とか、イニシャルでB・J(※)なんていうのも悪くないわね?」

「うーん、それだと何が何だか。こうもっと気持ちが入らないと」

「気持ち?」

「はい、『ヨーゼフ(笑)』(※)とかみたいな」

「そう、案外難しいものね」



 すっかり長湯になってしまった。お嬢様のほっぺも真っ赤になっている。私の筋肉痛はかなり良くなってきた。さすがお嬢様が作ってくれた入浴剤です。


 まだ暑かったのでお嬢様と二人、服を着ずにバスタオルを体に巻いたまま居室に戻りました。


「冷たいお水でもお持ちしますね」

「まだ無理をしないで」

「「あ!」」


 私はまた転んでしまいました。うーーーお尻がすーすーします。今度はタオルがお尻までめくれ上がってしまいました。


「しっつれーしまーす!」


 返事も待たずに扉が開かれました。


「……………………」

「……………………」

「……………………」


 真っ赤な髪がそこにいました。

 目があったまま、体も視線も動かすことができません。何秒、いえ何分過ぎたでしょうか?固まったまま何も出来ずにいた私の代わりに、お嬢様がそっと扉を締めてくださいました。

 やっと自由を取り戻した私は、屋敷を震わせるような大声で叫びました


「へ……ヘンターーーーーイ!!!!!」



 その日から、彼の名は「ヘンタイヨーゼフ」略して「ヘンゼフ」と屋敷中で呼ばれるようになりました。


これから「ヘンゼフ」君を、よろしくお願いしますm(_ _)m


それにしても、いつもの倍くらいの文量になってしまいました。やればできるもんですね〜(笑)

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