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22 山へ行こう⑧

「山へ行こう」最後です。


魔物の名前「鴆」は「ちん」と読みます。

ルビの振り方をやっと覚えましたので、前話からルビ追加いたしました。




 カゴいっぱいに素材が取れてほくほくだった。ついでに庭師がいっていた薬草も道すがらに採取することができた。


「さて、こんなところね。ミーシャたちと合流しましょうか。スライムも退治し終わっている頃よね。スラ玉も何個手に入ったかしら、楽しみだわ」

「……本当の悪魔がここにいる」


 二人で山を降りる。

 その間ずっと、鬼悪魔と少年に罵られていた。この少年、私が雇い主だって覚えているのかしら?


 すぐ近くからガサッと草を踏む音がした。


「これはこれは、いいところのお嬢ちゃんと、そのお付きの小僧ってところか」


 舌で汚れた唇をベロリと舐めながら、二人の男が現れた。何日も風呂に入っていないような汚れが固まった男たちだった。

 二人共ニヤニヤしながら近寄ってくる。


「おいおい、迷子になったのか?おじちゃんたちが、ふもとまで案内してやろう」

「いいえ、結構ですわ」


 油断した。嗅拡丸で辺りを確認した時に、確かに人間の臭いがした。でも、距離も離れていたし地元の狩人かと思って注意を払っていなかった。明らかに堅気ではない男たちだ。まだ嗅覚が麻痺しているのも痛い。そうでなければ、悪臭がただよいそうなこの男たちにとっくに気付いていてもよさそうなものだった。


「そう言わずに、こっち来な」

「そこで止まりなさい。近づいてはなりません」


 私は採取用のナイフを片手に持ち、まっすぐ男たちに向けた。


「娘っ子が、危なっかしいものをもってるじゃねえか。自分の手を切るのがオチだぜ、お嬢ちゃん」


 私のような子供がナイフを持っていたところで、大の男は脅威に感じないのだろう。侮ったような態度とニヤニヤ笑いは変わらない。男は対して警戒した様子もなく、大股で距離を詰めてきた。


「お、お嬢様に近づくな!!!」


 ヒュン、と音がして男の方に物が飛ぶ。少年がカゴの中身を投げて応戦したのだ。

 あ、あれはさっき採取したウニに似た、オオナマミの実!下手に扱うと爆発するわ!

 あ、今度は鴆の獲物だったサーペントの尾!それもダメ、貴重なの!


 私の心の悲鳴はともかく、少年のお陰で男の足は止まった。見当外れの方向に飛んで行ったが、ぶつかったらただでは済まないものだということが分かったのだろう。


「このクソガキ。甘い顔をしてやればつけ上がりやがって!お前、痛い目を見せてやるぜ。お嬢ちゃんの方は、優しくしてやるぜ。売り物は傷が無い方がいいからな。だが、暴れるなら容赦しねえぜ」


 おや?っと気になることがあった。私は少年を制して、怯えている風を装って尋ねた。


「わ、私は売られるのですか?」

「ああ、そうさ。非合法に子供でも売り物にしちまう娼館も、子供好きな貴族様もいくらでもいるからな」

「あなた方がそこへ連れて行くのですか?」

「そうだなとりあえずアジトへ連れて行ってから、奴隷商人を呼ぶのさ」

「我が国に奴隷制度なんて無いはずです!」

「いちいちうるせえなあ。『非合法』だ、つってんだろ。俺らみたいな盗賊団は闇のルートをいくらでももってんだよ!さあ、諦めてこっちへ来い。なあに、俺らが丁寧に身体検査してやるから金目のもんは隠しても無駄だからな」


 ひゃっひゃっひゃと、下品な笑い声をあげる。


 いくつも見逃せない言葉が出てきた。こいつらが叔父様のいっていた盗賊団の一味か。盗みだけじゃなく、人拐いも人殺しも人身売買もなんでも行う輩の集まりなのだろう。

 様子からして下っ端だろうけれど、見逃すわけにはいかない。


 私は腰の小袋に手を入れた。

 ぱっと、少年の顔が明るくなる。


「お嬢様!次は筋肉がもりもりになる薬ですか?それとも逃げ足が速くなる薬ですか?」

「残念ながら、強化系の薬は嗅覚が良くなる薬しか作っていないの」

「じゃあ、他の薬が?」

「他は、魔物よけの薬、虫よけ薬、傷薬位よ」

「それじゃあいつらをやっつけられないじゃないですか!」

「そんなことないわ」


 私は小袋から、紙包を出して広げた。


「息を止めていなさい!」


【風操作】


「ぶはっ!なんだ!」


 一つまみの粉薬は私の魔法によって確実に男達に届いた。


「なんだ!くせえ、ぐお、ぐああああああ」


 バッたと男たちは倒れた。気を失ってもよだれをたらし苦悶の表情は消えない。

 嗅覚がよくなる薬を調合する時、私は「粉薬のままでもいいのだけれど、粉薬は飛び散りやすい」と言った。こんな強力な薬が飛び散ったら、吸い込んだ人はおかしくなってしまう。そう、この男達のように。これが薬師としても私の戦い方の一つだった。

 ちなみに粉薬は「散」という。これは嗅拡散だ。


 少年と素早く、男たちの手足を採取用に持ってきたロープで縛り上げた。目印となるような木の根本に転がしておく。魔物よけと虫除けも少し置いておく。盗賊のアジトや奴隷商人、その他もろもろ後ろ暗いことについて証言してもらうまでは、死なれては困るからだ。


 叔父様に、ご報告することが増えましたわ。







 ところで、どうでもいいことだが、少年の名前はヨーゼフというそうだ。祖父である執事長ヨーゼフと同じ赤髪だったので、同じ名前がつけられたそうだ。名前のことよりも、つるつる頭のヨーゼフが、昔は赤髪だったって方が驚きだわ。



次、閑話入ります。


少年「お嬢様、ごく一部からミーシャさんのお仕置きが生ぬるいという声が出ているようですが……」

ユリア「そうかしら?好きな男の前で、スライム×美少女×お仕置きよ。十分かと思うけれど」

少年「( ゜д゜)ポカーン  はっ、鬼畜だ!正に鬼畜がいる」

ユリア「……」

少年「もしや次の閑話では、そこらへんを詳しくですか?(゜A゜;)ゴクリ」

ユリア「それはないわね」

少年「作者がノクターン(18禁)に移りたくないからですか?」

ユリア「作者にそのスキルがないからよ」

少年「あ…………Σ(´∀`;)」

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