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18 山へ行こう④

凰紗莉紅様から誤字指摘いただきました。ありがとう御座いますm(_ _)m

 昼食の支度が整った。


 と、その前に私は腰に下げた小袋から先日作った丸薬を取り出す。


「あ、それはこの前作った……、確か嗅覚が良くなる薬でしたか?」

「よく覚えていたわね。ええ、そうよ、これは嗅拡丸。身体強化薬の一つよ。これを服用する短い時間だけだけど嗅覚がかなり良くなるの。その間に、臭いで探しものを見つけるのよ」

「キノコを探す犬みたいなもんですか?」

「ええそうね」


 アランもいるのであえてぼかしてある。

 よくある身体強化薬の中の一つに、嗅覚が良くなる薬がある。鼻が良くなるのではなくて、脳の臭いの情報を受け取る部位が敏感になるものだ。いっぱしの薬師なら誰でも作れるようなものだから、私が持っていてもそうおかしくはない。

 ただ私の作ったものは一般のそれとは比べ物にならない。数百倍も嗅覚が良くなる薬だ。普通なら脳に障害が残ってしまうレベルのものだが、そうはならない。


 ほとんどの薬師は師から弟子へレシピが受け継がれる。弟子はそのレシピを改良して、またその弟子へ受け継がせる。薬師によって多少は効果に差異は出るが、元のレシピが同じなのでそこまでの差は出ない。

 私の薬は、元のレシピが全く違う特別製なのだと教えてくれたのは、前の人生で世話になった薬問屋の若旦那だった。私は貴族令嬢だった過去と、そのレシピを守るために、その薬問屋と専任契約して私の情報は秘密にしてもらっていた。


 何故か赤髪の少年が目を輝かせ、丸薬を凝視して「身体強化薬」とぶつぶつと呟いている。ああそういえば身体強化薬って、若い低級の冒険者とか、冒険者に憧れている子供に人気だって聞いたわね。努力しなくてもスキルが使えるって。安定した収入がない若者が買えるような安い薬ではないのだけれど。


 丸薬を持つ手を右に振る。少年の首が右に向く。

 丸薬を持つ手を左に振る。少年の首が左に向く。


 うん、ちょうどいい。


「……使ってみる?」

「はい!」


 慣れていない物には刺激が強かろうと思い、一粒を半分に割って、少年の手のひらに載せる。


「いい?急に鼻が良くなると体や脳がびっくりするから、最初は鼻を手で塞いで口呼吸するのよ。慣れてきたら、少しづつ鼻で空気を吸ってみて」

「はい!」


 少年は何の躊躇もなく、丸薬を飲み込んでしまった。

 私に言われたように鼻の穴をしっかり塞ぎ、口で呼吸している。それでもわずかな匂いが口から鼻に届く。驚いたように目が大きく開いた。


「あ……、土の匂い、木の匂い。なんて複雑で鮮明な……。あっ!」


 少年はミーシャを見て顔を真っ赤にした。すぐに目の端をだらんと垂らし、鼻の下を伸ばした。少年が何の匂いを嗅いだのかは推して知るべしだ。


「だめよ!」

 

 私のとっさの停止も聞かず、あろうことか、少年は手を離しミーシャの方に向かって鼻の穴を広げて大きく息を吸った。


「きゅう」


 うわーーー「きゅう」と言って気を失う人、初めて見たー。

 私の薬は脳に障害は残さない。でも誤った使い方をすれば、気を失う位はする。

 ミーシャは「天罰よ」と怒り狂っていた。


 私は仕方なく、時間延長のために魔物よけの薬を追加で垂らした。もったいない。



アホの子は、やはりアホでしたΣ(´∀`;)

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