159 王都屋敷へ
今回は短いです。申し訳ありませんm(__)m
馬車の中にいる私に、振動がガタガタと伝わってくる。王宮の馬車なのだ、造りが悪いはずがない。それなのにこんなに揺れる原因は、ただ一つ。
「スフィラさん。静にしてくれないかしら?」
「ひゃ、ひゃい!」
静にしてと頼んだにも関わらず、さらに振動が、つまりスフィラの揺れが大きくなった。スフィラが下唇を噛みがら、必死に床を見ている。
う~ん。
「ねえ、スフィラさん。なんでそこまで私のことを怖がるの?」
「な、何の事で……ござりまひょう」
あ、噛んだ。
「私も最初はスフィラさんが、そういう怯えやすい性格の人だと思ったわ。けど私よりもずっと地位の高いラーツェ様に対しては物おじしていないようだし。そういえばレバンツで逮捕されて、初めて会った時はここまでビクビクしていなかった気がするわ。いったい何が原因でこんなに私は恐れられてるの? 理由が分からないと、落ち着かないわ」
「そ……それは……」
スフィラは、私のスカートの裾に目を向けた。
スカート? もしかして……。
「スフィラさんは、触らなくても魔力が見えるの?」
スフィラはビクッと飛び上がった。
ああ……、そういうことか。
私も魔力の流れ道を見ることができる。ただし、触診しながらだ。
「スフィラさんは、貴族なの?」
「い、いいえ。違います! 私は平民でありながら、魔法が使えたので王立学園に入学できたんです」
「そう……」
平民で魔力を持っている人は魔力栓塞になりやすいのに、スフィラさんはそれを免れたのね。良かったわ。
「じゃあその【目】は生まれつき?」
「ひゃ、ひゃい!!」
「【鑑定】魔法を使えるのね。珍しい事……」
【鑑定】魔法を習得するのは極めて難しい。でも最初から比較的簡単に使える人がいるそうだ。それはスフィラさんのように生まれつきの【目】を持っている人だ。そういう目を持っている人は、離れていても魔力の流れが見えるらしい。いや魔力だけではなく、現在の能力値や、どの方面の才能があるかも分かるそうだ。
「スフィラさんの目では、私はなんて出ていたの?」
やり直しの事とか見えたのだろうか? それとも『にんしょうきー』の事とかも?
「そ、それは……」
「いいから教えて」
「何にも見えなかったんです!!」
「え?」
「ユリア嬢には巨大な魔力の塊があるのは分かっています。でもそれが邪魔して、それ以外は何も見えなかったんです! こんなの初めてです。だから怖くて……」
巨大な魔力の塊……。私自身は魔力が少ない。だから私自身の魔力ではないはずだ。
――ルー。出てきて。
するするっとスカートの裾から小指の先程の黒い体に赤い目のルーが出てきた。スフィラさんの目は、恐慌に陥りながらもルーを追っている。
「大丈夫。私の従魔よ」
「従魔……?」
スフィラは私を見て、ありえないという顔をした。確かに従魔は、主人と同等の能力値の場合が多い。アリーシア先輩のレフにせよ、クラリッサ様のレジーナにせよ。だけどルイス様が作り出した魔物であるルーは私の能力を遥かに上回っている。きっとスフィラさんが言う、巨大な魔力とはルーのことだろう。
「この子が私の従魔になったのは、ちょっと訳ありなの」
理由を説明できないため、こう言うしかない。
「あ……あの。で、では、紫の塔で魔法が使えたのは……? それと魔道具が使えなかったのは? ユリア嬢に魔道具を使おうとした時だけなんですよ、使えなかったのは!!」
さらに理由を説明できない事を聞かれた。
黙って目を背ける。
「中途半端にしないで下さ――い!!」
◇◇◇
程なく馬車は、オルシーニ伯爵家の王都屋敷に着いた。正面玄関前には、領地の屋敷よりもずっと多い人数の使用人がずらっと並んでいる。
馬車の扉が開いて、ステップに踏み出した。
「お嬢様、お手を」
私の手を取ったのは、王都屋敷の執事長セドリックだ。ヘンゼフのように妙に人目を引くほどではないが、ヨーゼフの甥だけあって赤毛だった。
「ありがとう」
セドリックは、かすかに瞼をピクリとさせた。何か驚いたみたいだけど……、何かしら?
「旦那様と奥様は、居間でお待ちになっております」
「分かったわ」
私は馬車の中にいるスフィラを振り返った。
「あ、あの。私は、このまま王宮に……。調査をしなければならならないので!! 詳細が分かりましたらご報告いたしますので、今日は……」
…………。なんか言い訳くさいけれど、まあいいわ。
「気を付けてね」
「ひゃ、ひゃい!!」
馬車は、土煙を上げてとっとと去って行った。それをなんとなく見送った。そして踵を返して、王都屋敷の扉をくぐる。
「お父様とお母様になんて説明したらいいかしら……」
-王都屋敷への馬車の中
-スフィラの鑑定魔法
-王都屋敷到着





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