14 初めての調合②
なにやら雑音も聞こえますが、薬作りを続けましょう。
粉薬のままでもいいのだけれど、粉薬では飛び散りやすいし、味も苦く飲みにくい。なので水分を飛ばした蜂蜜と合わせて練る。
それを秤にかけながら均等の大きさに丸める。
コネコネコネ。
もちろん手作業だ。
これで丸薬の完成だ。これを昔は宝石箱として使っていた小さな区切りのたくさんある箱にしまう。そして箱ごと保存魔法をかけた。
「おおおおおお、お嬢様!?」
あ、ついでに頭痛や腹痛といった常備薬も作りましょう。苦労ばかりしているお父様には、きっと必要だわ。送ってさしあげないと。
「おおおおおおお、お嬢様!?」
「……何よ、さっきから。まったく、うるさいわね」
久しぶりの調合を、気持ちよくやっているのに!と文句の気持ちを込めて振り返れば、ミーシャの目はこぼれんばかりに大きく見開き、「お」の形のまま口が開いていてよだれがこぼれそうだった。体も小刻みに震えている。
何?気味悪いわ。
「あら?体調不良?あいにく今は嗅覚を良くする薬しかないわよ」
「ち、違います!そんなんじゃありません!」
「じゃあなんなの?」
「な、何なんですか、さっきのは?」
「え?さっきのって?」
「魔法を使ったり、薬を作ったりしたことです」
「あなた、私が薬を作るからって、薬草を集めてたのを知っているくせに」
「ええ、知っていますとも。私がカゴを背負ったんですから!
お嬢様が嬉しそうにお花摘みしたり、枯れた草花を悲しそうに手にとっている姿は子供らしくて可愛らしかったですぅ。
お嬢様とならお医者さんごっこをしてもいいって思ってました!」
お医者さんごっこ……って。今の私12歳よ。ミーシャったら私のことをどんなふうに思っているのかしら。
思わず、冷たい視線を送ると、ミーシャの目が泳いだ。
「それは私の欲望、いえ希望で……特にお嬢様が何だといっているわけでは……。
ってのはどうでもいいんです!
それに何ですか、あの魔法は!いつの間に魔法を使えるようになったんですか!」
そう言われてハタと気付く。
一般的に魔法の訓練が始まるのは、13歳からだ。魔法の才があるかどうかはもっと早い時期に分かる。
私にもフランチェシカにも11歳で魔法の才があるのは分かった。それで半年後の13歳の春から両親も通った学園に入学し、魔法の使い方を学ぶことになる。
13歳以下の子供では魔力を使う体力も、精神力も未熟だとされている。魔法を発現することはできても、暴走させて自分も周りも傷つけてしまうからだ。
もちろん例外というのはどこにでもいる。確か同じ学年になる王子や、魔法省長官の子息などは10歳にして魔法を使いこなせるようになったなったと聞く。でも私はそうした「例外」ではなかった。魔法の才が少しあるだけの普通の子供だ。
なのに私はミーシャの前で、大した威力はないとは言え、緻密な魔法を、ほいほいと事も無げに使ってしまったのだ。
「分かったわ。ミーシャにはすべて話すわ。信じられないかもしれないけれど、本当のことよ」
私はミーシャに前の人生と、何故かやり直していることを話した。今まで秘密にしていたわけではない。ただ、なんと言って説明すればいいのか分からなかったのだ。
ミーシャは私の話を聞いて、驚いたような、納得したような顔をした。
そしてニコリと笑って、ニキビ薬をねだった。
最初に作った薬は「嗅覚が良くなる薬」でした。さてさて、それをどう使うのかは次話以降になります(_ _;)
領地編が終わったら、学園編が始まる……かもΣ(´∀`;)あくまで『かも』ですからねーー





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