13 初めての調合①
前話での調合室ができたのを採取後から採取前に変更いたしました。ご迷惑をおかけいたします。
誤字指摘していただきました。Tony Lewis様ありがとうございますm(_ _)m
薬とは、大きく分けて2種類ある。
一つは体内に摂取した時に効果を発揮するものだ。病気や怪我を治すため、または害するために、内服したり塗布したり、体内に直接送り込むものがある。ちょっとした体調不良や病気の予防といったどこの家庭でも備えている家庭薬から、医師が診断を下し処方する処方薬、また薬問屋などで売っている特殊薬などがある。
もう一つは化学変化を起こすものである。火薬、爆薬、消毒薬、虫よけ、農薬、陶器などのうわぐすりなどがある。厳密にいうと聖水もこのくくりに入る。また化学や魔法の実験等に使われる試薬もある。
私が最初に作ろうと思っているのは特殊薬だ。
特殊薬とは、治療以外を目的としたものである。一時的に身体能力を向上させるもの、消耗した魔力を補うものなどがある。伝説の薬であるエリクサーは、四肢欠損も治す回復薬だが特殊薬に当たるらしい。
私が作るのは伝説級のはずがなく、最も一般的な薬だ。
下処理は、採取したらすぐに行う方が効率的だ。まず全ての薬草を大きなテーブルに並べて、生で使うもの、乾燥させるもの、凍らせたり、焼いたり煮たりするものに別ける。
生で使うものには、保存魔法をかけてそのまま棚にしまう。
【時間凍結】
私の保存魔法は、できが悪いのでそう長い時間は止められない。時間を止める薬品もあるのだが、作るのはまだ先になりそうだ。
「お、お嬢様!?」
乾燥させるには、火魔法と風魔法を合わせて使う。
【乾燥】
ドラゴン級の強力な魔法を使いこなす人もいるけれど、私の魔法は威力が低い。それでも長年魔法を使ってきたお陰で、緻密に操作できるようになった。紅茶のように発酵乾燥させるものから、干すのを忘れた洗濯物のような生乾きまで自由自在に調整できる。
「おお、お嬢様!?」
凍らせるものは、氷魔法で。その後は、保存魔法をかける。
焼くものはロベルトに新設させた竈に網を乗せて火魔法で炙り、煮るものはその竈に鍋を乗せて、水魔法で鍋に水を張り、火魔法で温度を調節する。火にかけ終えたものは、粗熱をとるためにそのままにしておく。昔、風魔法で熱を冷まそうとして、材料が飛んだことがあるので、自然冷却させることにしている。
「おおおお、お嬢様!?」
私は下処理が終わった材料の中から、森で採取したコブモクレンの蕾と、温室で採取したオトヨロイ草を中心に幾種類かの素材を取り出した。オークアップルからは、昨日無事に孵化したオーク虫を捕らえることができた。先程、黒焼きにしたところだ。
それを乳鉢に入れた。
【加重】
微細な力加減を覚えるまでは、大変だった。何度すり鉢や乳鉢を壊したことか。その力加減を覚えるまでは手作業でやった。何回も篩にかけて薬剤の目を揃え、すり鉢で砕いてさらに細かくする。大変な作業だ。魔法でやったほうが細かくなるし、面倒くさくなくて断然いい。
「さてやりますか」
流石に配合は手作業だ。
一つ一つの薬剤を秤に乗せて、重さを計る。同じ薬草でも、季節や生育の状態などによって、わずかに使用量が違うから、よく観察して配合する。
ルイス様の資料の殆どは薬のレシピだった。それを私が読み解き、一つ一つ薬の作り方を覚えていった。
直接教えてくれる人がいなかったのは大変だった。しかし、わずかとはいえ魔法を使える私は、薬の制作時間を短縮することができ、短縮した時間で何度も何度も薬を作った。そうやって技術をあげ、さらにレシピを改良したり、全く新しい薬を作ったりもした。
もっともルイス様の資料の半分くらいは聞いたこともない素材が使われており、解読することもできなかったのは残念だ。
「おおおおお、お嬢様!?」
続きます。