104 訪れた平和
変更のお知らせ。
◇◇◇より下の部分を削除しました。
削除した部分は、次話からの展開を先取りしたものになります。
そのため、とても短い話となってしまいました。
申し訳ありません。
ギンッという重い金属音がしてアランの剣を、ダンが跳ね上げる。
「ダン――! 素敵よ――!」
ガウスの黄色い声が飛ぶ。
アランは、すぐさま体勢を整える。剣が跳ね上げられた回転を活かして、自分から腕を回して加速を付け、再びダンに剣を向けた。そしてアランは、苦々しい目で、自分の剣をはじいた男を睨む。
「ここまでは、あの時と同じか……ダン!」
「「「キャアアア、アラン様――、こっち向いてええええ!」」」
女達に、嬌声が広がる。
ダンは肩よりも広く開けた足の前に体重をかけ、腕を交差させて、剣を顔の真横に両手で持つ、雄牛の構えをとっている。アランに比べて、ダンの方が表情に余裕がある。
「「「キャアアア、やっぱり、ダン様もすてきいいいい!」」」
「ちょっと、そこのブス共! 勝手に私のダンを応援しないでちょうだい! いいこと!」
ダンとアランはいたって真剣なのだが、いちいち間に入る歓声のせいで、いまひとつ迫力が足らない。むしろ、ガウスと修道女や下働きの者達に勃発しそうな戦いの方が、よほど恐ろしい。
「まあまあ、そんなちっちゃな事で争わないで、これでも飲めや」
千鳥足のクラリッサ様が、ガウスの口にリンドウラ・エリクシルを瓶ごと突っ込んだ。
げほげほと、溺れそうになっているガウスに、焦ったアリーシア先輩が治癒魔法をかける。
その後ろでは、院長が優しく微笑みながら、やはりグラスいっぱいの緑色の酒を傾け、頬をピンク色に染めていた。
一方、任務のために酒が飲めない護衛隊は、食べ頃になったワイルドバイソンの肉を薄く切り、屋外で起こした火の上に敷いた網の上に、ミーシャが並べる。そして、焼けた肉を、片っ端からヘンゼフが食べている。護衛隊の世話を買って出たのは、男性不信、男性恐怖症だといわれていた女達だ。あの看病で、男性不信を克服したわけではなくても、世話になった護衛隊の役に立ちたいと思ったのだろう。
…………平和だわあ。あの騒動がたった二日前の事とは思えないわ。
確かに、壁と外門に閉ざされた、この修道院から外に出ることは出来ない。でも、中には敵もおらず、みんな健康で、時間もある。やはり平和としか言いようがなかった。
思わず、ぼけええっと、空を見れば、鳥が一羽、まっすぐこちらに向かってくるのが見えた。
◇◇◇
まったり~