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10 守護者




 叔父様の威圧が勢いを増した。空気が押し寄せて来るようだ。

 あら叔父様は魔法の才は無かったはずだけど、何かしらね、この圧迫感?ああこれは威圧じゃなくて殺気ね。

 私の後ろで控えているミーシャは「ひいっ」と悲鳴を上げて、ガクガク震えている。

 おしっこ漏れてなければいいけれど。


 怒気を隠しようのない低い声が、空気を振動させる。


「それを聞く意味が分かりませんな。

 私は分家筆頭です。王都と領地の半分半分で生活をしている伯爵家とは違って、すべてをこの領地と領民に捧げております。

 聞きたい事というのは、それだけでしょうか?」


 刃のような視線を投げつけられる。


「ええ、これだけですわ」

「では失礼!」


 今度こそ叔父様は扉の向こうに消えていった。入ってきたときとは違って荒々しく。見送る暇もなかった。

 扉の外で控えていたロベルトが走って追いかけている。


 私は叔父様の言葉を噛みしめる。

 私の知っている限り、叔父様ほど領地と領民のことを考えている人はいないだろう。たとえそのやり方が伯爵家に都合が良いとは言えなくても。


 叔父様が言った伯爵家の「半分半分」とは居住のことだけを言っているのではない。

 伯爵家は王家に任命された貴族だ。王が税を増やせといえば増やし、王が戦えと言えば領民から徴兵しなくてはいけない。その税が民を苦しめることになろうとも。徴兵された男が親や妻、子供を領地に残して戦地に向かわなくてはならなくとも。

 前の人生でも、私の知っている限り王が重税を課したり、戦争を仕掛けることもなかった。ありがたいことに。でも貴族はいつだって、王の言葉に従う心の準備はできている。

 実のところ「半分半分」でもまだ甘い表現だ。貴族は「半分」以上を王と国に捧げているのだから。

 叔父様だって税を払えない人をかばいはしない。賦役を放り出す人を隠しだてもしない。むしろ自警を負う人として、積極的に取り締まる。それをしないことによって領地や領民が不利益を被ることがないためだった。

 今までだって叔父様は、渋るお父様を説き伏せたり脅しつけたりし、伯爵家の財産を吐き出させ、大規模な公共事業を行った。それに大した罪をおかしていないと思われた人を強引に処罰することもあった。もっともその人は法に触れない範囲で若い子女に悪行を働いていたのだが。そうした法を超えた取締の尻拭いはお父様の仕事だった。

 叔父様は叔母様がお父様になさる嫌がらせ程度の邪魔を黙認なさるけれど、領地のためにならない邪魔はけっしてさせなかった。

 お父様は叔父様を好きとはとうてい言えないが、誰よりも信頼はしている。そんな叔父様を領民は敬愛して「守護者」と呼んでいるそうだ。



 私は前の人生で疑問だったことがあった。フランチェシカが領主になった時代、このオルシーニ伯爵領では不正が横行し、無辜の民は窮乏していた。ブルーノ叔父上がそんなことを許すだろうか?さっきの答えからしても、それは絶対にない。となると、叔父様はその時何をしていたんだろうか?いや、何をできなかったんだろうか?





次話からまったり薬師展開しま〜す♪

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