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プロローグ
ガンと頭を下げる殴られたような激痛の後、ゼリーの中に足を突っ込んだかのような、おぼつかない感じ。素面なのに、ひどく酔ったような気持ち悪さにおそわれた。
「ユリア、大丈夫なの?あなた顔色が悪いわ」
声のかかった方向になんとか目を向けて、息を飲んだ。そこには亡くなったと風の噂に聞いて久しい母がいた。何十年もたったはずなのに、最後に顔を合わせた時のままの母だった。
「大丈夫か?ユリア、ソファに横になるといい」
腕をとられ、腰に手をまわされる。
誰?あ……
「エンデ……様!」
彼を見た途端に、天井が回りだす。ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐると。
「おえっ」という声が遠くから聞こえ、喉元を熱いものが通過する。喉だけが熱い。頭の芯から、指先まで氷を押し付けられたように冷たかった。