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ところが、僕らが嗅ぎつけた事件は次の日にはもう公然の事実と化していた。全てオンライン化されデータ管理されている僕らがいなくなったら、それは当然噂になるというものだ。
「なんと…先を越されたか!なんたる不覚…」
「海斗、冗談は黙って。浩海、何か知ってるの?」
拓海も関心を示していた。海斗がフレデリクの課に見つかったかを聞きに行こうとしてた、と多少ぼやかして説明したら、拓海もいたく心配しついてくると言い張った。
が、フレデリクの先輩は
「心配なんだけど…行方不明なんだ…こちらで捜索はしてるから分かったら教えるよ。君たちは友達思いだね」
と辛そうな顔で語った。あっけなく収穫なし確定だ。
「そうですか…すごく心配です…教えてくださってありがとうございます。」
礼儀正しく例をする拓海は目を潤ませていて、すごく共感しているようだった。一方海斗は黙って少し難しい顔をしていた。
その後は、皆そんな噂なんてすぐ忘れていった。しかし、海斗は諦めていなかった。
「ねぇ…もう聞き込みしたって無駄だよ。いいじゃんフレデリクの先輩達に任せておけば、面倒なことになるかも…」
僕もいい加減呆れていた。
「おおっと~~そんなでは探偵は務まらんぞーワトソン君」
茶化すばかりで、そもそもなぜ最初に秘密扱いにしようとしたかも教えてくれない。
だがその努力は実った。「いなくなった日の夜に、教官<トレーナー>の人が東7ブロックの入り口に一人でいるフレデリクを見た」という情報を得たのだ。
「東7ブロック…拡張建設工事やってるところだよね、前に行った」
「そう…変だと思わないか?」
また海斗はもったいぶっている。別に業務時間外に散歩をしてはいけないという規則はない。
「何が…?」
「浩海はお人良しちゃんか!夜は用事もないのにそんなとこ行くの変だろ。この後いなくなってるんだぜ」
海斗はどうだ、と言わんばかりに机を指でコツコツ叩いている。
「ふむ、それで、大探偵の見解は」
「ん、分からん」
ニセ探偵だった。
しかし、いなくなる前の行動が分かったのならどこに行ったのかくらいはわかりそうだ。
「所内の記録カメラデータを洗いざらい調べたら分かるかなぁ」
「あっ!それだ!浩海あったまいい!」
またうっかり探偵のやる気を再燃させてしまった。早く止めないとこれは取返しがつかなくなりそうだ。