表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

世界は変わる

作者: 蜜柑

夕日が落ちた部屋の中で、彼女はじっと考えていた。

明日のことを考えていた。


きっと明日も楽しいはずだって思うけれど。

暗さが増していく部屋にいて、なんだか心も沈んでいく気がしていた。

人の心は思い通りにならない。そして変わりやすい。

それは今までに何度も経験してきた。

分かっているよ、とひとり呟く。


何よりも虚しく思うのは、清くいようとすればこの世の人々とすれ違っていく。

自分がいつも正しいことを示したいわけではない。

何もしていなくても、おとなしくしていても、存在を疎まれることが辛かった。


だけれど、彼女は汚濁にまみれる強さも持たなかった。潔癖だったのだ。


他人を批判する烈しさは持たない彼女は、じっとこらえていた。

どんな時も、うまくいく方法を考えていた。そして実行に移していた。


人は変化を好まない。そして楽をしたがる存在だ。

彼女はよく疎まれた。きっと眩しくて、周りを刺激しすぎたのだ。目立たないようにしていても、なぜだか人目を引いた。目が離せなかった。

川辺に咲く名もない花のようで、キラキラとお日さまに照らされているような輝きがあった。


彼女は辛抱強かった。殻に閉じこもりながら、じっと耐え忍んでいた。

もう飛べなくなったと泣いた。無気力になる日もあった。周りの全てがまるで敵になったような。そういう日を超えて、ある日気づいた。

周りの意見は、儚い桜みたいに散りゆくもので、いつしか季節が移り変わっていくように。

もう新緑のさざなみが目の前に広がっている。全ては変わってしまった。

ああ幻想の中にいたのだと、彼女は理解した。


もうすっかり夜が来て、また明日のことを考えていた。

朝は来るから、世界は変わるから。

彼女はふさいだ心に手をあてて、新緑の鮮やかさとざあざあと揺れる音を思いだした。

怯えることはない。どんな命も、お日さまの光に包まれている。

大きな存在に愛されている。


明日は今日より優しくなれるような気がする、と彼女はつぶやき、かすかに微笑んでいた。


彼女の背中で、青白く美しい蝶がひらりと止まった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ