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2nd Manuscript  作者: 十 円
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プロローグ

明けましておめでとうございます!

今年も《Galactic Coordinate 〜地球はどこでしょう?〜》共々よろしくお願いします!


※これは後で消します(人´∩`)スイマセン

たったひとりの妹が…

何も告げず忽然と姿を消して一ヶ月が過ぎた。


容姿端麗かつ品行方正、成績優秀でスポーツ万能な妹の〈双葉(ふたば)〉は俺とは違い、誰からも愛される自慢の妹だった。

でも本当は人見知りで気が弱く、寂しがり屋で泣き虫な妹。

そんな妹は高校一年の夏、両親の交通事故死をきっかけに、そのまま不登校になった。

それから半年。

妹は二人で暮らすこのアパートから一歩も外に出る事もなく、誰とも会おうとしなかった。


学校の担任やクラスメート、元々疎遠だった親戚とも葬儀の後は会っていない。

両親と暮らした賃貸マンションは引き払い、この安アパートで、俺と妹、二人きりの生活が始まった。

最初のうちはずっとふさぎ込んでいた妹も、次第に笑顔で会話が出来るようになり、元々得意だった料理などもしてくれるようになった。

大学生の俺は妹の反対もあり大学を中退する事はせず、僅かな遺産と俺のバイト代で貧乏だけど、それでも楽しい生活を送っていた。


つもりだった。


バイトが休みだったあの日、講義を終えた俺は買い物をすませ夕方にはアパートに戻ってきた。

そこにはいつも笑顔で出迎えてくれた妹の姿はなく、きれいに片付けられた部屋には携帯電話や財布など妹の荷物はそのまま。

近所のコンビニへさえ行けなかったのに…


俺は妹の帰りを待った。

夜になり、そして朝になった。

俺は妹の通っていた学校に連絡をし、クラスメートの友達にも話を聞いた。


でも…誰もあの日から会っていない。


警察にも捜索願を出した。

対応してくれた警察官もはっきりとは言わなかったが、俺の頭にも同じ考えが浮かんでいた。


自殺…いつも笑っていた妹は、そんな素振りは見せなかった。だから…妹にかぎって…


部屋に戻った俺は妹の手がかりを隅々まで探した。

押入れからタンス、机の引出しまで…

ロックが掛かっていなかった妹の携帯電話には、着信履歴は俺からのものだけで発信履歴はない。

パソコンの検索履歴からも自殺を連想するようなサイトはなかった。

ただ…オカルト関係のサイトを良く検索していたようだった。


それから俺はずっと大学を休み、妹を探し続けた。何日も何日も…


そして今日、そんな俺のもとに一つの荷物が配送されて来た。

差出人は〈水上 双葉〉

俺はすぐ送り状に書かれた差出人の電話番号に掛けてみたが…やっぱり繋がらない。

住所もおそらく適当だろう。


荷物の中には厚手の大きな封筒と一冊のノート、そして一通の手紙だけ。


妹の字で〈ヴォイニッチ手稿〉と書かれた封筒の中には印刷されたコピーの束。

内容は…妹が検索していたサイトで見た事があった。


《ヴォイニッチ手稿》

1912年、ウィルフリッド・ヴォイニッチによってイタリアで発見された古文書。

およそ240ページに及ぶ羊皮紙には謎の未解読文字と、多数の奇妙な挿絵が描かれている。

生物学や天文学、薬学を連想させるその古文書は、発見から一世紀を向かえた現代でも、その内容を解き明かした者は、未だ誰ひとりとしていない。


そしてこのノート。

それはヴォイニッチ手稿と同じような文字と挿絵の描かれた妹の手書きのノート。

らくがき…と言ってしまえばそれまでだが、でもとても丁寧に、時間をかけて書かれたノート。


コピーとノートを見比べると、どちらも良く似た文字だが多少の違いがあった。

筆跡の癖かも知れないが、ノートには明らかに違う文字があった。

カタカナ?

読める所と読めない所。

文脈から推測したが、やっぱり理解出来ない。


そして最後に残ったこの手紙。

もし遺書だったら…そう思うと手にする事さえ怖かった。でも…

不安と混乱で手が震え、なかなか封を開けられなかった。


ようやく封筒を開け、きれいに折りたたまれた便箋を取り出す。


窓の外からは夕焼け小焼けのメロディーと、帰宅を急ぐ子どもたちの声がする。

窓から差し込む外灯の明かりに照らされた便箋は、かすかに甘い妹の匂いがした。

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