悲劇も不幸も必然的 (02)
「泣いてるのか?」
「あ...いえ。すいません。なんか家の前です、座ちゃって...。」
渋野さんは私の顔を見て心配した顔で私に駆け寄ってくれる。
私は目をごしごしと服の袖で拭く。だけど全然涙は止まってはくれない。
「どうかしたのか?いじめられたか?」
「ち、違うんです。あの...本当にな、なんでもなくて...。」
渋野さんが心配した顔で私をじっと見て聞いてくれる。
だけど私は涙が止まらないせいかまともに渋野さんの顔が見れない。
泣いた顔なんて見られたくない。
そんな私の頭を優しく撫でてくれるのは渋野さん。
「大丈夫。俺がいるから。」
「...ご、めんなさい。」
「いいよ。謝らなくていいから。」
泣いている私に渋野さんは優しくそっと優しい言葉をかけてくれる。
そんな渋野さんの言葉が私にとってはとても支えで心地よかった。
「本当に申し訳ありませんでした。」
「いいって。で、少しは落ち着いたか?」
「あ、はい。お陰様でありがとうございました。」
あの後私は散々泣きまくってしまった。
そんな私のそばに渋野さんはずっといてくれた。
そして涙が止まって、ずっと冷えた外にいたので私の体温は冷たい。
それを気遣ってくれた渋野さんは家に来いと強制的に連れられて今に至る。
温かいココアを淹れてくれた渋野さん。
「なんで泣いてたの?」
「あ...えっと...うーん、自分でもよくわからなくて。ただ手紙...。」
「手紙?」
そうだ。私はあの手紙を読まないと。
姉から来た手紙。あの姉から来た手紙だ。
私はかばんをあさって手紙を取り封筒の端を破っていき、中に入ってる手紙を出す。
―――明ちゃんへ
お久しぶりです。私は今フランスに居ます。
フランスにいるとなぜか懐かしい景色と懐かしい思い出を思い出してしまいました。
なので明ちゃんに手紙を出しました。
元気にしてる?ちゃんとごはん食べてる?
そうだ。命日もうすぐだったね。悪いんだけど今年も明ちゃん一人で行ってくれる?
お願いします。 姉。
「......。」
「羽和?」
「あ...す、すいません。姉からの手紙で...。」
「そうだったのか。なんか嫌な事でも書いてたか?」
「いえ...。えっと...あの...。」
「悪い。無理して言わなくていい。」
今の私の顔はものすごく落ち込んでいるだろう。
久々の手紙がこれ。しかも毎年のようにこの日になると送られてくる。
落ち込むしかなかった。なんで今フランスにいるの?
もうすぐで命日なのにまた私一人でいくの。
「羽和。本当に大丈夫か?」
「...え?...。」
「また、涙出てるぞ。」
「あ...。」
また涙が溢れてきていた。
あんな所に一人で行くなんて怖かった。
孤独感しか感じさせない。怖かった。怖いただそれだけ。
「本当にお前、大丈夫か?」
渋野さんは私にそっとハンカチを差し出してくれた。
「...はい。」
「嘘つくな。本当に何書いてた?」
渋野さんは私の顔を真剣に見つめてきた。
私はその顔を見てこの人に嘘はつけないそう感じたんだ。
「もうすぐで...親の命日でそれに一人で行かないといけなくて...。」
「うん。それで?」
「...5年前から一人で墓参りしてたんですけど、それと同時に孤独感に襲われてそれがとても怖くて...。」
「そうか。なら俺が一緒に行ってやろうか?」
「え?...い、いや!そ、そこまで渋野さんにお世話になる訳には!!」
「そんな泣いてる羽和ほっとけねぇーし。困ってたらお互い様だろ?」
「......あ、りがとうございます。」
渋野さんは優しく微笑んで私の頭を優しく撫でた。
渋野さんの手は大きくてとても優しくて心地がよかった。
そんな手にホッとしてしまった自分がいた。