出会いは突然に (05)
「...そろそろ行くか。」
俺は先ほどスーパーで買ってきた料理の材料を片手に持ち、隣の家の羽和の部屋に行く。
外は相変わらず寒い。ため息をすると白い息が出る。
羽和の家に行くのはお礼に晩飯を作るという俺が一方的にした約束だが、まあそれでもお礼になるならまーいいか。
俺は羽和の家の前に来る。そしてインターホンを鳴らす。
少ししてバタバタと中から聞こえてガチャという音がした。
そして相手が開ける前に俺が開けた。
そしたら部屋にいた羽和はなぜかぽかんとした顔と共になぜか涙目になっていた。
「...え?し、渋野さん?」
羽和も俺を見てポカンとした顔で俺の顔をじっと見ていた。
てか、玄関からして見ると部屋が暗い。
電気つけないで何してたんだこいつ。
「部屋暗くしてどうかしたのか?それに何?泣いてたの?」
「え?..あ...いや、泣いてないですよ。ちょっと足を打ってしまって...。」
慌てて羽和は俺に弁解をする。
その必死さがなぜか笑えた俺は声を抑えて笑ってしまった。
羽和は顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。
まじでこいつこんな顔をすると絶対そこらへんの男はほっとかないだろう。
「あ、そ、それで渋野さん、何か用だったんですか?」
「お前な、晩飯作るって約束したろ?」
「......あ。」
「忘れてたな。」
羽和はあからさま忘れてた顔をしていた。
そんな羽和に俺はおでこにデコピンをする。
デコピンをすると羽和はおでこに手を当てる。
痛かったのか。意外と弱くしたんだけどな。まあしょうがない。
「上がるぞ?いいか?」
「あ...どうぞ。」
まあ、俺も男だ。しかも女の子の部屋に入るのも少し遠慮がある。
少し緊張するが、まあ平常心を装う。
てか、なんでこんなに部屋暗くしてるのかが気になる。
そんな事を思っていると羽和が部屋の電気をつける。
部屋は女の子らしくなくとてもシンプルでしかも片付いている。
それに家具も案外少なかった。
「案外片付いてるんだな。」
「日頃から、家にはあんまりいないんで。」
「そうなのか?んじゃ、台所借りるぞ?」
「はい。」
俺は右手にスーパーの袋を持って台所に向かう。
台所も案外片付いている。てか使われてないような気もする。
そして俺は料理をはじめると同時に羽和はテレビを付ける。
そういえば、羽和って嫌いな物とかあるのだろうか?
「羽和。嫌いな物とかあるか?」
「いえ、特にないですよ。バリバリなんでも食べれますよ。」
「そうか。それならよかった。」
俺は羽和の言葉を聞いて、黙々と料理を作る。
今日の晩飯は一応鍋だ。寒いし丁度温まるだろうしな。
そんな事を考えてると、なぜか視線を感じた。
俺は羽和の方をチラッと見た。なぜか羽和はこっちを見ていた。
「ん?どうかしたか?」
「あ、い、いや、別に!な、なんでもないですよ!」
羽和は慌てて俺から目をそらす。
しかも部屋で二人で沈黙。テレビの音が響き渡る部屋。
そんな事を思っていると鍋料理が丁度出来たとこだった。
「羽和。できたけど、取り皿とかどこ?」
「あ、すいません。私やります。」
羽和は慌てて台所に来る。そして棚を開けて取り皿や茶碗を取る。
その間に俺は鍋を台所前にある机に運ぶ。
それで用意ができて羽和と二人で椅子に座る。
羽和は丁寧にいただきますと言って一口食べる。
「美味しい!!美味しいです!!」
羽和は目を輝かせて足をバタバタしていた。
すごくうまかったのだろうか。
だが、その顔を見るたびなぜかドキっとしてしまった。
「そんなに美味しいか?」
「はい!もう私渋野さんの作る料理好きになっちゃいました。」
は?...え?...何こいつ。可愛すぎるだろ。
俺じゃなかったらもう襲ってるレベルだろ。
何こいつ、天然?いや、まあうまいならそれでいいけど。
「まあ、うまいならそれで良かったよ。」
「本当にありがとうございます。」
羽和は嬉しそうに俺の作った料理を食べ続けていた。