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第八話:孝乃先輩とガーディアン

第八話

 俺と、上級生の前に現れた一人の女子生徒はどうやら三年生のようだ。

 転校してきてまだ一カ月も経っていない俺が二年生に詳しくないのは当然で、それが三年生なら当然だ。何がいいたいのかというと、知らない人ですと、言いたい。

「何とかしなさいよ」

「ええっ?」

 事情が飲み込めない俺ににこにこしながらその女子生徒が歩いてきた。

 俺の目の前までやってくるとその笑顔が羅刹みたいに変化する。

「……君、孝乃の彼氏?」

「孝乃?」

「あたしよあたし、北村孝乃。孝乃先輩と呼ばせてあげるわ」

 偉そうな割に隠れている。

 不思議に思っていると今度は目の前の三年生が胸倉を掴んできた。

「うおっ」

「邪魔なんだけど? わたしと孝乃の恋路を邪魔するのなら蹴り殺すよ」

 何となく想像がついた。

「た、孝乃先輩? もしかしてこの人に……あれを使ったんですか。いくら、現実に成功しないから使うのはどうかと思いますけど」

「誤爆したのよ、誤爆っ」

 冗談だと思いたかった。でも、どう考えてもこの状況は冗談でも何でもない現実だ。

「あのっ、ここ二年生の教室です。来るなとは言いませんけど、騒ぐのなら三年の教室に戻ってくださいよ。霜崎亜美先輩、一体どうしたんですか」

 俺を助けるためか、それともクラスの秩序を守るためか……風紀委員の南山さんがちょっと怒った感じで目の前の女子生徒に告げた。

 いいぞ、もっと言ってやれと思う俺、いまだに胸倉掴まれたままです。

「わたしは別に、このクラスに用事があるんじゃないわ。孝乃とこの男子生徒が抱き合っているように見えたから身の程を教えてあげてるの」

 どう見ても殺気の状況は上級生にかつあげされている下級生の図だったと思う。今となんら変わりないよ。

「ほら、孝乃、いこっ?」

「嫌よっ。あたし、女だもん」

「恋に性別なんて関係ないよ。だって、わたし……孝乃を見るとぞくぞくして気持ちが高ぶっちゃうんだもん」

 それはそれで在りだなと呟いた男子生徒に孝乃先輩が投げたチョークが刺さった。

「あたしは……男の子が好きなのっ。ノーマルだからっ」

「……あの、霜崎亜美先輩ですか? 今回は大人しく帰ってくれませんか」

「さ、亜美こっちに来て」

 スル―された。

 仕方が無いので無理やり拘束を解いて孝乃先輩の前に仁王立ちになる。

「何、邪魔するの?」

「いえ、孝乃先輩を説得するので廊下に出てくれませんか? それならいいでしょう?」

 少しばかり逡巡してから頷いてくれる。

 亜美先輩が出て行ったところでようやくクラスは平穏を取り戻すのであった。

「それで、これは何の騒ぎなのかなぁ」

 南山さんの声音に舌を出す。

「そんなんじゃごまかされないよ」

「くそっ、可愛かったら何でも許されるんじゃないのかっ」

「わけわかんない事をやってないで、説明してほしいんだけど? 四ヵ所君知ってるよね」

 それは単なる確認のようだった。

 くだらない事を言っている場合でもなさそうだったので、かいつまんで(もちろん、南山さんに使う事は話していない)話す。

「呆れた……」

「いや、俺もそれが本物なのかどうかわからないし、使ってみればいいかなぁと思ってただけだから」

「この期に及んでいいわけなんて……」

 ああ、どんどん評価が、好感度が……未来がバッドエンドに向かっていく。

 それまで黙っていた孝乃先輩が俺に話しかけてくる。先ほどとは違って、結構落ちついていた。

「それで、四ヵ所はこの薬をどうにか出来ないのか」

「さぁ、どうですかね。俺が作ったわけじゃないんでくれた人に一応聞いておきます」

「それまであたしはあいつに狙われるのか……」

「主に貞操が狙われま……いてっ」

 南山さんに叩かれて俺は黙る。

「はぁ、四ヵ所君は北村先輩を助けてあげなよ。盗られたとはいえ、そんな危ないものをもっているのが悪いんだからね」

「……反省します」

 俺は孝乃先輩に右手を差し出す。

「これは?」

「惚れ薬をどうにかするまで奪ったことについては不問にします。わたくし、四ヵ所冬治はそれまで北村孝乃先輩に協力したいと思います」

 事件を解決すればそれなりの評価をもらえると踏んだのだ。もちろん、南山さんからの評価である。

「そっか、そんならよろしく」

 孝乃先輩と俺は一時休戦を締結させるのだった。


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