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第六話:こっちんと呼び出し

第六話

「……はぁ」

 全く気分が冴えない。

 惚れ薬という非常識な代物を手に入れ、南山葵さんをメロメロにするはずが間違って陸上部の生徒に飲まれた挙句、キスまでされるなんて本当、ついてない。

「あれか、惚れ薬なんて使うんじゃないと言う神様の罰か」

 そうだとしてもやってられない。

「おーい、冬治」

「んー?」

 右手を振りながら追いかけてきたのは友人だった。

「何だ、友人かよ」

「つれないじゃないか。っと、そんな挨拶はいいんだよっ」

 にへらと笑って俺の肩へ腕を回してくる。暑くなってきたこの時期、プラスの機嫌の悪い時にされるとラリアットを喰らわせたくなるな。

 真剣にタイミングをうかがっていると友人が笑っていた。

「いやー、お前てっきり葵ちゃんを狙っていたのかと思ったら陸上部の東風平と付き合ってたんだな? キスをしてたそうじゃあないか」

 学園でよくやるよと言われて首をかしげる。

「こちんだ?」

「そう、東風平佳苗だよ。あれ? もしかして噂どおりじゃなくて実際はこう、マンガやアニメで良くあるシチュエーションの曲がり角でこんにちはっつーことか」

 いや、襲われたのだ。

 その点は曖昧にしておくとして……男同士でキスなんざよくやるとからかわれないのが不思議だった。

 そもそも、東風平佳苗ということは、男ではないと言う事か。

「な、なぁ」

「ん、どうした」

「東風平佳苗は……女なのか?」

 何を馬鹿な事をと笑われる。

「そらそうだぁ。東風平は女だよ。中世的な顔立ちだし、胸もほとんどないから制服以外だとたまに間違われる。あれ、お前もしかして事故ってキスしたときに慌てて逃げたのか? ははーん、それで男とキスしちまったって悩んでたんだな?」

 惜しい、非常に惜しかった。

「……殆ど正解だと言っていいぜ」

「何かくれるか」

「完全正解じゃないからやらん」

 まぁ、惚れ薬の事について知っているわけじゃないからこいつが正解を当てることはないだろう。

「あ、お、おーい」

「……」

 声をかけられた。俺は無視して歩き出す。

 理由は二つあった。

 俺に呼びかけたわけがないと言うのが一つ目、辺りには既にほかの生徒達の姿もちらほらある。

 二つ目、どこかで聞いた事があるような声だ。

「おい、冬治。噂をすればなんとやらだ」

「幻聴だ」

「無視は無いだろ、無視は。男のファーストキスなんざ糞喰らえだが女子生徒のファーストキスを奪った罪は重いぞ。たとえ、事故だとしてもだ」

 奪われたのは俺の方じゃい。

 しかし、この話は惚れ薬を抜きにしてしまうと信じてもらえないからな。

 俺と目があったらメロリンコでいきなりキスされたなんて説明を誰が信じるんだ。

 早歩きになった俺の前に一人の女子生徒が立ちはだかった。

「お、おはようっ」

 なるほど、確かに制服を着てみれば女子生徒だと認識できるな。昨日はちょっと動揺していたからそれどころじゃなかったんだ。

「おい、冬治ってば。さすがに無視するのは可哀想だろう?」

「あ? ああ、おはようさん」

「えっとさ、名前を教えて欲しいんだ」

 東風平佳苗がそう言ってこっちを見てくる。

「友人……ここはボケるところだぜ」

「ボケる?」

「そうだ。ここで親指を自身に向けて……俺の名前かぁ? こんな感じだ」

「で、名前は?」

「こいつは四ヵ所冬治君だ」

「四ヵ所君か。いい名前……」

 くそっ、スル―された上にあっさりばらされちまった。

 東風平は鞄から一枚の手紙を取り出して素早く何かを書き足すとそれを俺に渡してきた。

「これ、読んでほしいんだ」

「え?」

 反射的に受け取って、中身を確認しようとすると東風平佳苗が走り去った。

「何だったんだ……?」

「そりゃおめぇ、あれだろ。どう見てもラブレターじゃねぇか」

 目の前に俺がいるのに何でラブレターなんかもらうんだろう。手に持っている紙を開ければ全てが分かるわけで、開けてみると雑な字でこう書かれていた。



『今日の放課後、校舎裏で待っています。 東風平佳苗』


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