第五話:アオインと毒殺の話
第五話
前回は南山さんにしてやられたからな。
「まさか惚れ薬を飲まされるとは思わなかったぜ」
だからと言って諦めるわけにはいかない。自身で薬の効果のほどを体験するとか思いもしなかったよ。
惚れ薬の効果はみやっちゃんの謎の儀式により(一回二十分の呪文を唱えられた)解除してもらっている。
あれが効果を発揮している間は何をするかわからないとのことだ……もしかして結構やばい薬だったりするんじゃないのか?
みやっちゃんの話によるとこのような展開を予想していたようで俺には惚れ薬があまりきかないようにしているようだ。
二回目は身体に変調をきたすそうだけどな……。
「ま、まぁ、大丈夫だよな」
ここは楽観主義で行こうと思う。でも、またこの前みたいに飲まされたらわからないので、今度は慎重な行動を心がけなければいけない。
「なぁ、友人」
「ん?」
友達である只野友人に声をかける。
成績優秀、品行方正、爽やかな気配りが出来る好青年……だったらこいつの株はウナギ登りだ。
「ここに毒があります」
「はいはい、それで?」
「周りの人には気付かれたくありません。友人はどうやってこの薬を対象者に飲んでもらいますか?」
俺の言葉にしばらく考えた末、手をあげる。
「どのくらいの毒なんだい?」
「そうだな、飲んだらひっくり返るレベル。ぐあ、ごほごほ、い……一服盛られぐはっ……こんな感じ」
「ふーん……」
首を何度かかしげ、てを叩いた。
「あれだ、毒よりスナイパー雇って狙撃してもらった方がいい」
「……参考になったよ。ありがとう」
「いやいや、おれとお前の中じゃないか。礼なんて要らないよ」
友人に聞いた俺が馬鹿だった。
「七色―」
「んー?」
頼りになりそうな友達と言えば七色虹のほうである。女子生徒ながら男子生徒と一緒に居る事が多く、女子と思っていない。失礼な事だろうとはおもう……思うけど体育のときとか普通にパンツ一丁になってる男子生徒がいるくらいだ。
何気に男子生徒からも結構な支持を集めている女子生徒である。
「ここに毒があります」
「テトロドトキシン? サキシトキシン?」
「……すっごく良く効く毒だと思ってくださいな」
話が進まないから。
「うんうん、わかったよ」
「これを対象者に飲ませるにはどうしたらいいでしょうか」
「そう言ったお題かぁ」
七色は顎に手を置いて考え始めた。
「冬治さんや、おれのアドバイスはいらなかったのですかな」
「黙っていてくれ。七色の考えが邪魔される」
「すんません」
外野を黙らせたおかげか、七色は軽く頷いた。
「わかった、簡単な事だよ。まずはその相手の信頼を得るんだよ」
「うんうん」
成るほど。
「そして、二人っきりになる時間をつくるでしょ? それからアリバイ工作をして相手のここぞと言う隙を突くんだ」
「どのくらいの信頼がいると思う?」
「そうだね、ぼくとしては阿吽の呼吸が出来るぐらいは必要と思うよ。相手の気持ちを理解できるぐらいの親密さはほしい」
ここで友人が手を挙げた。
「はい、相手の気持ちがわかるのなら毒で仕留めようって事がばれると思いますっ」
「……そっかぁ」
ついでに俺からの意見を言わせてもらえば……多分、そこまで親密になるのなら毒は、惚れ薬は必要なくなってしまうんじゃなかろうか。
「あれ? 三人ともどうしたの?」
「アオイン、毒を飲ませるなら何かいい方法ある?」
ここでまさかの飲ませたい相手が首を突っ込んできた。
「毒?」
「そ、そうだよ。俺の知り合いが小説家になりたいって言っていてね、ミステリー物を書くそうなんだよ。その方法を聞いて周って役に立とうかと」
「成るほど……」
南山さんが真面目に考え始めたのを見て複雑な気持ちになる。
「毒で殺したいって事はどういう事だろう?」
「はい?」
「いや、ほら、もうどうしようもなく相手の事が嫌いならさ、多分衝動的にやっちゃうと思うんだ」
「可愛い顔してやっちゃうとか大胆発言過ぎる」
「友人が言うとやらしく聞こえるのは何でだろうな」
「話がずれてるよ。私は……やっぱりこっそり殺したいから使うんだと思う。だから、ばれないよう入れるかなぁ」
これ以上話が飛躍しすぎても面倒なので適当に切りあげておいた。
「……参考になるのかね」
微妙なところではあるなぁ。
スナイパーでも雇うか。