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第四十一話:当て逃げされたアオイン

第四十一話

 電車の到着を待つ俺は旅行鞄の中からマンガを取り出して読んでいる。

「ふむ、今頃全校集会でもあってるかな」

 引っ越し先の手違いで一日延びてしまった。みやっちゃんの家に泊めてもらって何とかしのげたものの二学期初日からサボってしまう形になったのは心苦しい。

 ついケータイを取り出してしまいそうになるのは現代人の悲しい運命か、あっちについてから契約しようと考えていたからなぁ。

 また二つ折りにしようと考える。

 そろそろ電車が来るかなと思ったら向かい側のプラットホームに見知った顔があった。

「はぁ……はぁ……嘘、反対側だ」

「葵……」

 葵が何かを言おうとしたところで到着音と電車自体の音にかき消されてしまった。それに乗って窓を開けるけど、すでに葵は同じ場所におらず階段を下りて行った。

 多分、こっちに来るのだろう。

「まぁ、当て逃げみたいなもんだよな」

 ちょっとだけ後ろめたい気持ちがあるので早く発車しないかな―と願っていると階段を誰かがのぼってくる音が聞こえてきた。それだけ激しく昇ってきていると言っていいのか、それとも俺の耳がこの展開を期待していたのか……。

『駆け込み乗車は~』

 そんな放送が流れて扉が閉まる。そして、葵がついて走ってきた時点で発車していた。

『……!』

 窓の向こうで葵が走りながら何かを言っている。駅員さんがそれに気づいて何とか葵を止めようとしていた。

 俺も窓をあけて葵に言葉をかける。

「風紀委員が学園をサボるなよ~」

「ばかーっ、何で、何でっ、こんなことっ」

「好きな子には意地悪したくなるんだ。男ってそんなもんなのよ」

「冬治君のあほーっ」

 駅員二人に取り押さえられて俺は苦笑するしかなかった。あっという間に葵が小さくなって、俺も窓から顔を引っ込める。

「ふぅ、嫌われちまったな。ま、いずれ忘れるだろ」

 学園での思い出を振り返ってみてもあまりいい事は……なかったのかな。惚れ薬も結局、葵に使う事は出来なかった。

「まーあれだ、人生長いから惚れ薬を使う相手もまた出てくるだろ」

 気になる子が出来たのなら今度は努力してみたい

 気になる女の子に対してどれだけ努力できるかって言うのも一つの才能かもしれない。

 たとえば、体を鍛えてみるとか。

 たとえば、勉強をして成績を良くするとか。

 たとえば、オシャレに気を使うとか。

 方法は色々とあるかもしれないなぁ。

 その中には女の子を……忘れると言う選択肢もあるのだ。

 嫌な事を思い出すのもセットだしな、今はあの学園のことは忘れたかった。


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