第三十七話:アオインと告白の当て逃げ準備
第三十七話
明日は八月三十一日。
全国の生徒の夏休み終わりの日だと思われる……地域とかによっちゃ違うんだけどな。とりあえず、俺の通っている学園は明日が最終日だ。
七色の電話によってファミレスに集まった俺はパフェを突いていた。男だからと言ってスイーツを頼むのに抵抗なんざこれっぽっちもない。
『そう、あの四ヵ所冬治にはわたしの隠れ蓑になってもらったのよ。最近ミスが続いていて怒られていたから……ふふ、答えてあげたんだからキス、してくれるんでしょう?』
「ふむ」
ボイスレコーダーから流れてくる女性の声に俺は満足だった。
「歳の離れた恋人が出来た感想は?」
「……別れましたとも」
どこか達観したような表情で友人がそんな事を言う。
「ぼくに解毒薬をもたせていたからね。飲ませるのに手こずっちゃって大変な事になったよ」
「何かあったのか?」
「う、うーん、ちょっと真昼間のここじゃ言えないかな」
「恋する乙女……とは言えない歳だけれど、女子トイレに引きずり込まれてパンツ脱がされて大変な目にあった」
個室の中に連れ込まれたら解毒薬を飲ませるの大変になるだろうなぁ。
まぁ、とりあえず自白したのなら作戦自体は成功したと言っていい。
「それでこれを学園の放送室から流すんだね」
「女子トイレで襲われかけたおれに恐れる事等、何もない」
二人の友達に首を振る。
「そこまでする必要はないだろ」
「え? で、でも、そうすればもう転校する必要は無くなるんじゃないの?」
「そうだよ。お前ちょっとおかしいよ」
「いいんだよ。あの先生もイライラが溜まってたんだろ? このデータはコピーして先生に渡しておいてくれ。二度とこんなことしないだろうし、けん制にもなるだろうからな」
俺の言葉に二人は顔を見合わせて混乱しているようだった。
「冬治じゃあお前なんでこんな事をしたんだよ」
「転校する前に思い出が欲しかったんだ」
「はぁ?」
「ま、これまでお前たちと一緒に入れて楽しかったぜ。二学期からは違うところだけれどたまには連絡してくれよ。じゃあな」
「お、おい冬治っ」
代金だけおいてさっさとファミレスから姿を消す。
何度か着信がなったけど無視して歩く。
「お、葵か」
何かあれから進展でもあったのだろうか。
「もしもし?」
『と、冬治君? あのね、バスケ部の顧問がいきなり職員室にやってきて期末テストの解答のことと、噂について色々と話を始めたんだけど……』
「そうかい」
『よかったね、これで冬治君は……二学期から普通の学園生活がおくれるよ』
まるで自分のことを祝うような口調だ。
『これから学園に来られるかな? 先生も何だか話したい事があるんだって。よくはわからないけど、取り消せるかもって言っているよ?』
既に転校についての書類等はきっちり終わらせている。
「葵」
『え? 何?』
「……風紀委員として二学期からも頑張れよ」
『よくわからないけど、頑張るよ。冬治君みたいな一般生徒が面倒に巻き込まれるのを見るのは嫌だからね』
「そうか。なぁ、俺のことどう思ってる?」
『それってどういう事?』
鈍い人だ。
心臓に左手を当てて俺は呼吸を整える。
「……俺、葵の事が好きだ」
『えっと……嘘?』
「冗談でも何でもない。本当だよ。元はなんとなく、好きだったけれど俺が一人になっても話しかけてくれていたからな。そんな葵が、好きだ」
別に付き合ってくれとも何とも言っちゃいない一方的な好意の宣言だ。
『え、ええっと……』
混乱しているような葵に俺はさっさと言葉を続ける。
「感謝と一緒に好きだって言いたかった。ただそれだけだよ」
『ちょ、ちょっとだけ時間くれない? ふ、二日。九月一日に返事するから。今は混乱しちゃって……』
「返事は……気にするな。じゃあな、葵」
『あ、とう……』
そこで俺は通話を切ってついでに電源も切っておいた。
「……さてと、ケータイの解約でもしてくるかな」
心機一転するにはちょうどいいだろう。
発つ鳥は後を濁さない、というのはちょっと違うか。




