第三十五話:本入道と決戦前
第三十五話
迷惑をかけてしまった相手から迷惑をかけられると言う自業自得な結末。毎晩お経を流されるとか、トイレに入って居たら抜き打ちでお尻に水流が襲いかかると言った事は無く……それより頭の悪い奴が思いつきそうなことばっかりされている。
「うわ、何故か通学バックの中にパンツが……」
「うわ、何故か着替えがきぐるみに……」
「うわ、お弁当が女子の手作り弁当になってる……」
こんな感じだった。
迷惑をかけられている……部類に入っているのだろうか?
その都度一緒に居るのは七色と友人だ。友人からは羨ましそうな目で見られ、七色からは苦笑されるしかない。
「これ、あれだよね。ぼくのことを意識してるよ」
「何でお前が意識されるんだよ」
「そうだそうだ」
友人の意見に俺も同意せざる負えない。
「てめぇ、僕っ娘だからといって女子にもてもてなのかよ」
「いや、そうじゃないよ」
苦笑いする七色に男二人は首をかしげる。頼れる相棒はそういう経験がないから役に立ちそうになかった。
「本当にわかってないの?」
「ああ、わからないな」
「ヒントは……男の子と女の子の間に友情は存在するか」
「するだろ」
友人がすかさず突っ込んできた。
「いいか? いまここに男と女が二人いる。男は片方と付きあいたいがもう片方に協力を仰がざるを得ない……そうなったら男は女と仲良くなり協力してもらうしかないだろ」
「地道に頑張ったほうがいいんじゃないか?」
「後方支援は必要だろ」
彼女なんて出来た事のない男二人でそんな話をし始める。七色の話はそっちのけだ。
「なぁ、七色はどう思う」
「だからね、片方と仲良くなりすぎちゃう事ってあると思うんだ」
「仲良くなり過ぎちゃってもいいだろう。より親身になって助けてくれるに違いない」
そう信じてやまない友人は心底わからなそうな顔になった。
「ううん、そうならないと思うよ」
「何でだ」
「最初に仲良くした子が男の子のことを好きになっちゃうよ。」
「よくあるドラマのパターンだな」
三角関係か。そして気付けば泥沼になって刺されると……。
「三角関係って男の浪漫な感じする。だよな、冬治」
「ああ、そうだな。友人はきっと三角関係が似合うぜ」
「よせやい。そこまでもてやしない」
「刺されちまえ」
固まった友人は放っておくとして話を戻そうと思う。
「それで、紗生は一体何がしたいんだ」
「つまり、ぼくのことが邪魔なんじゃないのかと」
「七色が邪魔?」
「うん、きっとぼくが冬治君のことを好きだと思っているんだよ。今朝、冬治君のバックの中から女性用のパンツが出てきたよね? 女子たちは全員引いていたけど、ぼくはどうだった?」
「サイズを検証してたな」
冷静すぎて怖かったぜ。
「あと、こいつは未使用だと断言してた。あれがなかったら俺は危うく下着泥棒になってた。ありがとな」
「お礼なんていいよ……ともかく、ぼくが近くに居る限り紗生ちゃんはちょっかいを出し続けるよ」
それが本当の解決策かは不明ではある。でも、他に試す方法がなければためすしかないのではなかろうか。
「七色ちょっとの間冬治から離れてやれよ」
友人も俺と同じ事を考えていたらしい。そんな提案をしてくれた。
「やだよ、ぼく冬治君の事が好きだもん」
「なっ……」
「マジか」
固まる俺たち二人に最高の笑顔で頷いてくれた。
「友人も冬治君の事が好きだよね?」
「ヴぇっ?」
話を振られた友人は俺のことをちらっとみた。背筋が凍る思いで俺は戦慄を覚える。
「そのー……なんだ、友達としては好きだぞ」
「よかった。ここでお前が『俺も実は……』とかいいだしたら嫌な三角関係になってたな」
きっと七色も友達として、俺の事が好きなのだろう。
これ以上余計な事を聞いてしまわないように解決策を模索してみることにした。
「で、俺はどうすればいいんだろうか」
「会ってみるしかないよ。本人に」
「紗生ちゃんって子にか? あった瞬間にナイフを持って追いかけられたらどうするんだ」
冗談みたいに笑って言う友人にはわかるまい。実際に追いかけられたらたまに夢に出てくるようになるんだぞ。
「だね、会うしかないよ」
「え……と、当然俺が会うんだよな。会ってなんて話をすればいいんだ」
「迷惑だからやめてくれって言えばいいだろ。悩むより行動したほうがいい」
友人にそう言われてため息をひとつ。
まぁ、こうなると何となくわかっていたけれどナイフで追いかけ回された手前、どこか弱腰になってしまうのも赦してほしい。




