第三十一話:本入道と迷惑
第三十一話
最近七色と一緒に居る事が多いのは特別に仲がいいわけではない。単純に俺の友達が片手で事足りる程度しかいないからだ。
「ぼくたち良く一緒に居るよね」
「そりゃあ、七色が友達少ないからだろ」
「確かに苦手だけれど、冬治君は友達作るのが苦手なんだね」
「だよなぁ。おれと七色ぐらいしか友達いないんじゃないのか?」
だからといって、友達からそう指摘されたら反論したくなる。
「何言ってるんだよ。南山さん、紗生……ほら、これにお前らを入れると四人いるぜ?」
「すくねぇ」
「あれだよ、転校生だからだよ」
「転校してきて既に一学期過ぎてるじゃん」
ぐぬぬ……。
「い、いや、ほら惚れ薬……じゃねぇ、紗生のことで色々あったから友達作る暇がなかっただけだよ。二学期から本気出したら友達百人、彼女も五十人くらい作れるって」
ここまで言ってしまうと二人の視線が優しいものになってしまう。
「あれだよな。深い仲になればいいんだよな」
「そうだね、ぼくたち……親友だよ」
「おい、そんな目で俺を見るんじゃねぇよ」
そこで首をかしげて辺りを見渡す。
「ん? どうしたよ」
「いや……視線を感じたんだよ」
「被害妄想の激しい奴め」
「ううん、ぼくも感じたよ」
俺だけではなく七色もそう言ったのでさすがの友人も辺りを見渡し始める。
「誰もいないぞ」
「もう居なくなったんだよ」
居なくなった相手のことをあれこれ話していても仕方がないのでさっさと帰り始める。
「うーん、もしかして冬治が女の子に恨まれて追いかけられているとか?」
「友達自体が少ない冬治君に冗談を……そうかも」
七色がそんな事を言うので場が凍りついた。
「え、マジかよ。冬治、お前何したんだ」
「な、何もしてねぇ……あ、もしかしてあれか」
思い当ったので友人が目を剥いてこっちを見ている。
俺の頭の中、そして七色の頭の中には同じものが浮かんでいるはずだ。
紗生のファーストキスを奪ったのだ。それでも、紗生は俺のことを許してくれたと思うんだけれどな。
「でもな、紗生みたいな女の子が……」
「あのさ、冬治君。あれから……紗生ちゃんに会った?」
「え? 会ってないけど?」
「……フォローぐらいしてあげたほうがいいんじゃないの?」
紗生が犯人であると確信したような言い方だった。
いまいち友人が状況を把握していない状態で俺たちは別れた。女子に知られるならともかく、男友達に知られたら裁判ものである。おそらく、私刑が執行される事だろう。
「ふぅ……ん?」
家についてある事に気がついた。何の事は無い単なる手紙のようだ。消印がおされちゃいないけどさ。
開けるべきか、開けないべきか悩んだ末に俺はその手紙を開けることにした。
『冬治先輩へ、わたしがここまでドキドキしているのにいつもどおりしているなんてずるいです。あまつさえ他の女の子と一緒に居るなんて信じられません。惚れ薬のことについては一生けん命どうにかしてくれようとした姿は尊敬するに値しました。だから、先に言っておきます。これから冬治先輩に迷惑をかけます。警察に行くのなら行ってください。わたしは徹底的に争います』
一言で感想を言わせてもらうなら……女の子って怖いね。
前回のようにくしゃくしゃにしようとして辞めた。
見られていることを前提に動いたほうがよさそうだ。
「しかし、迷惑をかけるって一体どういう事だ」
俺に一服毒を盛るとか?
うーん、これだと今一現実的じゃないよな。真面目に考えてみたところで内向的と思われる後輩の女子から迷惑をかけられるなんてなかったしなぁ。
いつものように玄関から廊下を歩いてリビングへ。鞄をソファーに放り投げてからお茶を飲む。
「……毒は入ってないよな」
喉を押さえて倒れる事なんて当然ない。首をかしげて何となくケータイを開いてみた。
「うおっ」
そこには何故か本をもった少女の待ち受け画像が……。
「一体どうやったんだ」
急いでデフォルトの待ち受け画面にしようとするも、何故だか操作を一切受け付けなかった。
ま、まぁ、特に待ち受けが紗生でも困らないからな。
自室の扉を開けて驚いた。
「な、なんじゃこりゃあああっ」
部屋一面には紗生のポスターがびっしり貼られていたのだった。
ブレザー、体操服(ブルマローアングル、胸を強調したハイアングル)、スクール水着、少し思いきった水着、ほほ笑んだ表情など色々である。
「こりゃあ……警察が俺の部屋にやってきたらストーカー扱いされてアウトだな。いや、写真撮ったやつの腕前は結構よさそうだからただのアイドル好きって思われるか? しかし、今度はそうなると被写体が今一ぱっとしないな」
帯に短したすきに長しを実体験している間に結論を思いつく。
「ああ、はがせばいいのか」
それはそれで勿体ないかもしれない。それでも、結局はがしてまとめておいた。
次の日、はがしたものよりきわどいものが貼られていたので俺はもうはがすのをやめるのだった。




