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第二十五話:アオインと不幸の手招き

第二十五話

 停学中にやれることは何だろう。

 期末テストもそのままスル―なので補習決定である。いやいや、きっと心優しい先生達の事だから追試のチャンスを与えてくれるはずだ。

 停学二日目、俺の保護者達は停学になった息子に対して『何事も勉強だ』とだけ言ったのだ。

 そこだけは感謝しておきたいと思う。

 友達も失って、先生からの信頼を失い、進級のチャンスすら逃しているんじゃないかと思う今日この頃。

『冬治、元気?』

「何だ、友人か」

 それでもまぁ、こんな俺を心配してくれる友達もいるんだよな。

 少しだけすまなさそうな口調で友人は続ける。

「いや、悪かったよ。まさか冬治が素直に女子更衣室に入ったなんて言うとはさ」

「気にすんな。俺は運がなかっただけだ」

「巻き込めばよかっただろ」

「何言ってんだ。俺は運がなかっただけだよ。俺は成績そんなにやばくないけど、友人はそれなりに悪い成績なんだからこの期末で頑張っておけよ」

 ぐすっという声が聞こえた気がした。

「冬治ぃ……お前が女だったら押し倒したいぜ」

「気持ち悪い」

「ううっ、男の友情を感じるぜ」

「それも気持ち悪いからやめてくれ。ともかく、こっちは有給もらったようなもんだよ」

 うおおおお冬治ぃという声が聞こえてきたので切っておいた。

「やれやれ」

 ため息をひとつ、逃げた幸せ分だけ水分で補っておいた。

「っと、また電話か」

 言い足りない事でもあったのかとディスプレイを確認すると南山さんからの着信だった。さて、何を言われる事やら。

『……もしもし?』

「もしもし。どうしたのさ」

 出来るだけ暗くならないような声を出す。本当は南山さんの声を聞くとあの時の事が思い出されるから出来るだけ聞きたくなかった。



 ああ、どの道停学になるのならあの時視界にちゃんと捕らえておくべきだった。



 後悔したところで意味などない。見えていなかったのだから仕方がない。

 いかんいかん、こんな事を考えていたらすぐに声音に反映されてしまう。

『ご、ごめん。やっぱりあの時私がちゃんと……』

「あのね、南山さん。俺は別に後悔しちゃいないよ」

 嘘です。実際はこのまま学園生活続けられるのかとかなり不安です。

 それでも、好きな子の前ではたとえ電話越しであろうと強がるのが男の子ってやつですよ。

「だからさ、夏休みの約束忘れてくれないかな」

『約束?』

「そうそう、補習に出る奴ね。そうしてくれたらちゃらにするってどうかな」

『四ヵ所君……』

「それと、出来れば名前で呼んでほしい。友達だからお願いだ」

『う、うん。わかった。冬治君……これでいい?』

「いいよ、葵」

 相手の気持ちに付け込んで名前を呼び捨てるぐらいいいだろう。

「葵は気にしすぎだよ。期末が終われば夏休みになるし何とかなるなる」

『あ、あのね、私がどれだけ言っても冬治君のことを信用してなくて』

 その先は言われなくてもわかっている事だ。

「わかってるって。どうせみんな俺のことを覗き魔だとか言ってるんでしょ」

『うん』

 本当、面倒な事になっちまったもんだな。

 ため息なんて履けるわけもないのでまた強がって笑っておいた。

「夏休み開ければみんな忘れるさ」

『そう、なのかな』

「そうそう、そうだよ」

 俺はある考えが頭に浮かんでいた。それは出来るだけやりたくない事だ。


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